SSブログ

粒子線施設は原発のおまけ [社会]

 適応患者は少ない。施設建設費も巨顎になる。ならば、何故これほど多くの粒子線治療施設が建設されてきたのか。改めて9ページのマップを見ると、粒子線治療施設は北海道、福島、茨城、福井、静岡、佐賀、鹿児島と原発立地県に多く作られていることに気づく。
 国会議員で唯一の原子力の専門家として原発事故問題を追求し、12年11月の衆議院解散をもって隠退した吉井英勝氏が指摘する。
「原発立地県に多いのは、電力会社をはじめとする日本の財界中枢が構成する”原発利益共同体”が「核の医療利用」「地元の科学技術発展」などを口実に、原発新設や再稼働を狙っているからです。
~中略~
 佐賀県に誘致の話が最初に持ちあがったのは、06年3月。九州電力が玄海原発3号機への導入を目指していたプルサーマル計画に対し、古川康知事が事前了解を出した時のことである。
~中略~ 宮崎泰茂県議が説明する。
「プルサーマル受け入れの見返りとして、知事らの地域振興策の求めに対して二階さん(住人注;当時の経済産業大臣だった二階俊博・衆議院議員)が『陽子線はどうですか?』と言ったのが発端だった。当初は、陽子線治療施設を予定していたんです。しかし、後に鹿児島で陽子線治療の計画が先行していることがわかり、重粒子線に切り換えていったのです」
~中略~

サガハイマットの設置費用は150億円とし、佐賀県の補助筋20億円と民間からの寄付や出資金で130億円を集める計画だった。 資金調達を率先したのは九州電力で、40億円に寄付も約束した。
~中略~
 ちなみに、粒子線治療施設の誘致に敗れた唐津市には、早稲田の中高一貫校が設置された。10年4月に開校されたが、九電はこの学校法人にも20億円を寄付している。原発立地県でなければ、常識的には考えられない”手厚さ”である。他の原発立地県の事情も、推して知るべしだろう。
 サガハイマットは見込み通りに寄付は集まらず、県は、国から交付された地域医療再生基金を取り崩して8億3000万円を追加補助する。
隣県の福岡県にも援助を乞い、5億9000万円の補助を受けている。九電の松尾新吾会長(現・相談役)は、福岡県の小川洋知事の後援会長を務める。
「資金繰りに困窮した古川知事が、九電の松尾さんに泣きついて橋渡ししてもらったのです。県境を越えた補助金など異例というほかはありません。~略」(宮崎泰茂県議)

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ
別冊宝島編集部 (編集)
宝島社 (2013/4/22)
P97

P1000095 (Small).JPG

P99
 鳥栖市内でレストランを経営する男性は、こう語った。
「がん患者のためと言ったって、300万円もする治療を受けられる人は限られると思います。いま鳥栖市には市民病院もなければ、公的なリハビリ施設もない。税金はもっと市民に身近な医療機関に使われるべきです」
~中略~
サガハイマットは、すでに30億円近くを金融機関から借りており、さらに追加借り入れを検討しているともいう。頼りだった九電の寄付も、業績悪化を理由にストップっしている始末だからだ。今後、年間25億円前後の運営費ものしかかってくる。患者がそのツケを支払わされることがないよう願うばかりである。
取材・文 亀井洋志(ジャーナリスト)

本邦でも、あちこちに、「癌治療の目玉として」粒子線治療の設備はできるようである。まことわが同胞は箱モノが好きなのだなあと痛感する。基本的な感覚は整備新幹線と変わりがない。 そんなことをする暇と金があったら、絶対的に不足している放射線治療医や医学物理士を育成するべきであるが、そういう地道なことには予算がつきにくいのであろう。新聞記事にもならないしね。  粒子線治療などは莫大な設備投資がかかる。一旦できてしまったものは、壊すに壊せない。その費用を回収するために、必要のない患者さんにまで、高い金をとって粒子線治療を行うことが近い将来起こるであろう。 すでに米国からは、従来陽子線治療の非常によい適応とされていた前立腺癌治療においても「通常の」放射線治療の治療計画の改善によって、陽子線はコストパフォーマンスが悪すぎるという論文が出されている。  本来設備は、これこれで必要だからこのくらい作る、というものであって、まずは「最新鋭の」ものを作ってから使い道を考える、のではないはずである。しかしわが国は、戦艦大和以来、後者のやり方が主流のように思えるのは私だけだろうか。

偽善の医療
里見 清一 (著)
新潮社 (2009/03)
P184


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント