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平静の心を養え [倫理]

第一は、今日の仕事を精一杯やり、明日のことを思い患うな。
第二は、力の及ぶ限り、同僚や自分のケアする患者に、黄金律を実行すること、すなわち、己の欲するところを人に施せという新約聖書の言葉の実践であり、
第三は、たとえ成功しても謙虚な気持ちを持ち、慢心することなく友達の愛情を受けることができ、悲しみの日が訪れたときには人間に相応しい勇気を持って事に当たることができるような、そういう平静の心を培うことが大切である。
(William Osler,1983.[日野原・仁木訳、1983]

医師のためのパフォーマンス学入門 ―患者の信頼を得るコミュニケーションの極意―
佐藤綾子 (著), 日経メディカル (編集)
日経BP社 (2011/12/15)
P58

医師のためのパフォーマンス学入門

医師のためのパフォーマンス学入門

  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2011/12/15
  • メディア: 単行本


DSC_0923 (Small).JPG両子寺

P3
まず第一に、内科医・外科医を問わず、医師にとって、沈着な姿勢、これに勝る資質はありえない。
~中略~
 沈着な姿勢とは、状況の如何にかかわらず冷静さと心の落ち着きを失わないことを意味する。嵐の真っただ中での平静さ、重大な危機に直面した際に下す判断の明晰さ、何事にも動じず、感情に左右されないこと、あるいは昔からよく使われる含蓄のある言い方をするならば、「粘液質(phlegm)」を持つことである。時として誤解を受けることもあるが、沈着な姿勢は世間の人々から大いに感謝されるものである。
不幸にもそのような資質を欠いた医師、すなわち優柔不断でいつもくよくよし、それを表面に出す医師、日常生ずる緊急事態に狼狽し、取り乱す医師、こういう医師はたちどころに患者の信頼を失うことであろう。
~中略~
要は、諸君の神経を完全に制御しておくことである。最悪の事態に直面しているからと言って心の動きをそのまま目に見える行動に表わしてしまう者、ごくわずかにせよ心配あるいは恐れの気持といった表情の変化を顔に出す者、そういう内科医や外科医は卵円中心の白質部分の制御ができていず、いつなんどき破局を迎えるかわからない。

P5
ところで、落ち着いて判断を下すとき、あるいは細心の注意を要する手術を行うときには、ある程度感受性の鈍いほうが都合がよいし、それは絶対に必要な資質でもある。確かに感受性の鋭さは、手の震えや心の動揺をもたらさない限り、それだけで優れた美徳であると言えよう。
だが、ごく普通の開業医生活を送っている者は、世の人のために尽くし、さほど重要とは思われないことは無視して仕事を進めてゆく。そのためには感受性の鈍いほうが資質としてはかえって望ましいと言える

P10
  たとえ行く手に悲惨さが待っていようとも、目前に破壊が差し迫っていようとも、顔に笑みを浮かべ敢然と立ち向かうほうが、身を屈(こご)めてひっそりやり過ごすよりもはるかに賢明である。多くの先人たちの例に見られるように、確実に失敗すると思われるときにも、信念や正義のためには諸君の理想を曲げずにいてほしいと思う。

P10
「あなたがたは耐え忍ぶことによって、自分の魂をかち取るであろう」と聖書には書かれている。この忍耐が、諸君に人生の試練を乗り越えさせる平静の心でないとすれば、それはいったい何なのであろうか。
諸君は水のほとりに種を蒔かねばならないが、私が諸君に望むことは、沈着さと確信、この二つの約束された祝福の穂を永遠に刈り取っていただきたいことである。

P429
 私には理想とするものが三つある。一つは、その日の仕事を精一杯やり、明日について思い煩わないことである。 この理想だけでは満足できないと今まで言われてきたが、私にはそうは思われない。この理想で十分事足りる。 臨床に進む学生が持つ理想として、これほど実行を生むものはない。
私はこの理想のお蔭でどれだけ現在の成功を摑んだことであろうか。その日の仕事に徹して、自分の能力を最大限に発揮する努力をし、明日のことは明日に任せるという能力に、私はどれだけ恩恵をこうむってきたことであろうか。
 第二の理想は、力の及ぶ限り、同僚や自分がケアする患者に、(16)黄金律(訳者注:己の欲するところを人に施せ)を実行することである。
第三の理想は、たとえ成功しても謙虚な気持ち、慢心することなく友人たちの愛情を受けることができ、悲しみの日が訪れた時には人間に相応しい勇気を持って事に当たることができるような、そういう平静の心を培うことである。

平静の心―オスラー博士講演集
ウィリアム・オスラー (著), William Osler (著), 日野原 重明 (翻訳), 仁木 久恵 (翻訳)
医学書院; 新訂増補版 (2003/9/1)

 

平静の心―オスラー博士講演集

平静の心―オスラー博士講演集

  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 単行本





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