お仏壇 [宗教]
お背戸でもいだ橙(だいだい)も、
町のみやげの花菓子も、
仏さまのをあげなけりゃ、
わたしたちにはとれないの。
だけど、やさしい仏さま、
じきにみんなにくださるの。
だからわたしはていねいに、
両手をかさねていただくの。
うちにゃお庭はないけれど、
お仏壇にはいつだって、
きれいな花がさいてるの。
それでうち中あかるいの。
そしてやさしい仏さま、
それもわたしにくださるの。
だけど、こぼれた花びらを、
踏んだりしてはいけないの。
朝と晩とにおばあさま、
いつもお燈明あげるのよ。
まかはすっかり黄金(きん)だから、
御殿のように、かがやくの。
朝と晩とにわすれずに、
わたしもお礼をあげるのよ。
そしてそのとき思うのよ、
いちんち忘れていたことを。
忘れていても、仏さま、
いつもみていてくださるの。
だから、わたしはそういうの、
「ありがと、ありがと、仏さま。」
黄金の御殿のようだけど、
これは、小さな御門なの。
いつもわたしがいい子なら、
いつか通ってゆけるのよ。
(「お仏壇」「金子 みすゞ全集」<JULA出版局より>)
見真
龍谷総合学園 (著)
本願寺出版社; 第三刷版 (2003/03)
P108
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タグ:金子 みすゞ
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