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夏安居(げあんご) [言葉]

 一山の中には、今でいう年間のスケジュールがあった。その骨格をなしているものに夏安居がある。四月の一五日から、七月の一五日までである。
これを一夏九旬、あるいはよく資料に夏中とか、夏籠などの語句が出るが、これが夏安居を指し、述べているものである。
 この間は、法華経の転読とか、仁王妙典なども読誦されている。
 では、その夏安居とはどういうものなのか、一応みてみよう。
 インド、ビルマなどの地域は、一年間が雨期と乾期に大きく分かれる。インド、ビルマの僧たちは、雨期は一定の場所に籠り静かに読経をする。このことを夏安居という。
この夏安居が山岳修験寺院の中に大きく位置づけられていて、求菩提山の場合は別当北中坊が大般若経の転読を行っている。乾期には、南方の僧たちは一斉に外に出て乞食行を行う。
 ところが修験の山をみると、求菩提も英彦山も同じように、夏安居が終わると同時に山伏たちは行動を起こしている。この行動とは、秋峰のことである。春峰は、夏安居に入る前に入峰している。
南方の僧たちの行動と、全く共通したものをもち、山の行法はこのように大きく二つに大別できる。
したがって、夏安居を夏籠りといい、夏中に一百座の読経の座がもたれていた。
夏籠りを静的なものとみるならば、山伏たちの春峰、秋峰はこれこそ南方の乞食行と同じような動的な行とみてよいものである。
~中略~
 国宝に指定されている求菩提山銅版法華経から、重要文化財指定の長安寺銅版法華経、更に重文指定の求菩提山の経筒等の写経は、一夏九旬といわれた夏安居中に行われたものである。
夏安居と写経のかかわり合いは大きいものがある。

山伏まんだら―求菩提山(くぼてさん)修験遺跡にみる
重松 敏美(著)
日本放送出版協会; 〔カラー版〕版 (1986/11)
P53P

山伏まんだら―求菩提山(くぼてさん)修験遺跡にみる (NHKブックス)

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DSC_4555 (Small).JPG求菩提山


タグ:重松 敏美
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