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飢餓感を埋めようとする病状 [社会]

 近頃、こんな人がいるね。ボクも見かけたけど、喫茶店で向い合って、お互いに携帯を持って、話をすると周りにうるさいからだろうかな、ときどき顔を見ながらメールで会話しているの。情報はだんだん情緒的な要素を排除して、言葉が伝える意味だけをやり取りするようになっていく。
 そうすると、生体は五万年前と大して変わらん心身を持って生きているわけで、そんなに進化してませんから、かならず飢餓感が生じてくる。言葉の表面上の意味から取り残された部分が、飢餓感を抱く。そしてその飢餓感を埋めようとする症状が今、精神科に非常に増えています。
 多くの嗜癖がそうで、食べ吐き、それからリストカット、そういう言葉にならない生体の欲求、飢餓感を埋めようとする病状は今後どんどん出てきますよ。
さっき鹿児島からのバスの中でニュースを見ていたら、公安二課の捜査官の人が八〇〇円の品物を万引きして逮捕されていました。八〇〇円の物なんか盗まんでもいいでしょう。だけどネットで物を買うのに比べたら、パッと盗る万引きには狩猟の楽しみがあります。釣り堀と、海で魚を釣るのとの差です。
~中略~
 コンピュータを使って、電子カルテでやるような医療がなされますと、きっと皆さんの中で欲求不満が起きるだろうと思うんだな。医療を志したときの、ある心意気があるでしょ。機械の世界じゃなくて、人間と接する世界に向かう初志のニーズが必ず飢餓を起こします。
 もちろん治療に来ている患者さんのなかにも自動販売機で薬を買うようなつもりで来ている部分もあるけれど、そうではなくて、困ったことを誰かに聞いてもらったり、あるいは優しくしてもらったりしたいニーズがある。その二つともが欲求不満になります。

神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)
P156

黄檗山万福寺 (25).JPG黄檗山万福寺

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 みなさんのなかのほとんどの人が、精神療法やカウンセリングとか、受けに行ってないんだよね。そういうところに行った経験のない人は、じゃあ精神的にきわめて安定した状態で、安らかで生き生きとした充実した日々を送っているかと言うと、そんなことは全然ない。みんな若いうちは悩みがあったり、それで飯が食えなかったり、イライラしてやけ酒を飲んだり、何やかんや逸脱行為をしたりしているはずだ。
 そしてそれは複雑系の揺らぎの一環なの。
 だけど、「ミラーマン」とか言われているらしいけど、駅の階段なんかで手鏡を出して、女性のスカートの中を覗いて捕まる人がいますね。その人にとってはすごくいい治療法だろうけれど、法に引っかかることだから捕まってしまう。「もう何度もやっている」って報道されたりしてるでしょ。あれは止められないと思うんだ。どんな気がするのか、ボクはしたことがないから分からんけど、そういう気持ちが、きっとその人にとっては、心の中の何か虚しいとか、生きている意味がないとかいうようなことを癒しているんだろうと思います。
 だから法に引っかかって、逮捕されて気の毒なことだけれども、しかしおそらく法で許可されていれば、治療効果がないかもしれないのね。


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