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へそくり [雑学]

この地方では家の財産は家の人たちの生命をまもり、生活をたてるためにつかわれるが、自分自身でしたいことをするためにはそれぞれヘソクリをつくる。主人からもらうこともあるがたいていは自分でかせぐのである。
しかし戸主や主婦は家の仕事におわれてなかなかそれができない。すると主婦の場合ならば、その実母からヘソクリをもらうことが多い。
実母は親もとで大てい隠居している。隠居が自分でもうけた金は自分のものになる。それはどんなにつかってもいい。そういう金はたいてい嫁にいっている娘に与えるのである。
~中略~
私の場合は母を通じて母方の祖母から恩恵を受けることが多かった。母系的な名残りが私の子供のころまでは家の中の秩序に見られたのである。
しかし、死にあたってはいく分かの金をのこしておくのがこのあたりでのしきたりである。シボジの金とか、死に金とかいっている。葬式をする費用は自分がもつのである。その金すら祖母はもっていなかった。まずしさがそうさせたのではない。後のものがキチンと葬式をさしてくれることがわかっていたからである。

忘れられた日本人
宮本常一 (著)
岩波書店 (1984/5/16)
P210

DSC_4621 (Small).JPG求菩提山


タグ:宮本 常一
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