SSブログ

解雇規制と生産性 [経営]

 雇用不安が高まると失業による所得リスクを小さくするための政策が重要になる。最も典型的な失業リスクにそなえるための公的政策は失業保険制度である。完全な失業保険があれば、人々は失業しても消費水準を下げなくてすむ。
 失業保険制度の最大の問題は、仕事をするのが嫌で働きたくない人が、失業したと偽って失業保険をもらったり、まじめに職探しをしないことだ。
このようなふまじめな失業保険受給者を排除するために、失業給付の水準を低くしたり、失業給付期間を短くしたりすることが多くの国で行われている。
 そのような場合、人々を失業による所得ショックから政府が守っていくためには、政府は人々の失業リスクそのものを引き下げる政策をとらざるを得ない。
一つの方法は、解雇規制を厳しくすることである。そうすれば、既に雇用されている人々の所得低下リスクは小さくなる。
一方で、仕事を探している人の就職率が低下するので、失業期間は長期化する。それでも、現在雇用されている人のほうが、仕事を探している人より多いので、国全体としては失業リスクが低下し、人々の所得低下リスクも低下する。
雇用調整が難しくなることによって、生産性が低下するというコストがかかるが、人々の雇用の安定が得られるのである。

競争と公平感―市場経済の本当のメリット
大竹 文雄 (著)
中央公論新社 (2010/3/1)
P122


タグ:大竹 文雄
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント