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いてまえに落とし穴が潜んでいる [ものの見方、考え方]

―冷たい雨に打たれながら前進している。風も強く、体が冷えてきて寒い。フリースを1枚着込み大河たいが、あと30分も辛抱したら避難小屋に着きそうだ。立ち止まってザックを下すか、それとも歩き続けるか―
 もしかしたら、歯を食いしばって前進し、一刻も早く避難小屋へ到着したほうが結果としてよかったという場合があるかもしれません。でも、私なら30分後の避難小屋よりも今の寒さをなんとかするために、ザックを下してフリースを着ます。
体が発しているシグナルを大切にして、寒いと感じたら着る、暑ければ脱ぐ、そうシンプルに行動する方が好結果を生むと経験的に知っているからです。その30分の間に低体温症で行動不能にならないとも限りませんね。
 実をいうと、立ち止まる、ザックを下す、フリースを取り出す、着るという一連の動作は、とても面倒なんものなのです。
好天時ならなんともないのに、雨や雪や強風など状況が厳しくなればなるほど一つ一つの動作が億劫になるんですね。そこに落とし穴が潜んでいるような気がします。小さな穴ですが、ときには生死を左右するかもしれないと認識すべきです。
~中略~
 ゴー、ステイ、バックという三つの選択肢があるとき、どれが正解かは一概には言えません。天候、ルートの難易度、装備、そのパーティなりう個人なりの力量といった要素が複雑に絡んでくるからです。しかし、一つ言っておきたいのは、ステイやバックを選ぶには決断と勇気がいるということ。そのため、厳しいと分かっていながらも、ひたすらゴーとなってしまう。
そうした遭難事例が多いように思えてなりません。
 山登りにおいてゴー(前進)は、ある意味前提ですからね。ゴーを選択したというのは、決断を先送りしたのと同義とも言えるわけですよ。たとえていえば、車にタイヤチェーンを装着するケースとよく似ています。

登山力アップの強化書
徳永 哲哉 (著)
西日本新聞社 (2017/6/19)
P079

登山力アップの強化書 (のぼろBOOKS)

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  • 作者: 哲哉, 徳永
  • 出版社/メーカー: 西日本新聞社
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DSC_4800 (Small).JPG英彦山

P081
 で、ここからは二つの教訓を導き出すことができます。
 一つは、小さなことでも面倒臭がらずこまめにやることの大切さです。
行動食を食べる、水分を補給する、ウエアで温度調節をする、地図とコンパスで現在地を確かめるなど山登りで重要なことすべてに当てはまります。
 もう一つは、山登りに限ったことではありませんが、決断しないで先送りにするのは、よりよい結果をもたらさないといことです。ソロであれパーティであれ、山登りでは決断しなければならない局面が大なり小なり幾度か訪れます。換言すれば、分岐点があるあとうこと。
 私たちプロガイドは、状況が芳しくないときほどこの分岐点を必ず意識します。稜線に出る前に風が強くなったら引き返そうとか、鞍部までは行ってみるけど、状況が悪化していたらステイしようとか、いくつかのポイントを頭に入れ、次善の策を練って行動するわけです。

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