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世界に冠絶する美の国になったか [日本(人)]

敗戦の悲傷は、厳然と残った(住人注;戦火を免れた大和の古寺の)伽藍(がらん)に却(かえ)って痛ましいものを感じるのではなかろうか。祖宗の霊は安らかに眠ることはできない。
国民の道義はすたれ、信仰の日は去ろうとしている。神々の黄昏(たそがれ)が来て、ただ無信仰の眼に好奇的にさらされるであろう悄然(しょうぜん)たる古寺の姿を僕は想像するのである。
 戦争は終わった。斑鳩の地をはじめ大和一帯は、やがて観光地として世界の客人を招くであろう。観光地としての再生―僕らはかかる再生を喜んでいいのか、悲しむべきであるか。
~中略~
また異邦人の客人に劣らず札びらを切って豪遊するのも無風流なことだ。観光地としてではなく、聖地としての再生―これこそ僕らの念願ではなかったろうか。観光地として繁栄する平和の日などは軽蔑(けいべつ)しよう。
日本を世界に冠絶する美の国、信仰の国たらしめたい。そのためにはどんな峻厳(しゅんげん)な精神の訓練にも堪えねばならぬと僕は思っている。一切を失った今、これだけが僕らの希望であり、生きる道となった。そういう厳しい心と、それに伴う生々した表情を古都にみなぎらすことが大事だ。
かかる再生が日本人に可能かどうか、大なる希望と深い危惧(きぐ)の念をもって僕はいまの祖国を眺める。

大和古寺風物誌
亀井 勝一郎 (著)
新潮社; 改版 (1953/4/7)
P41

DSC_4490 (Small).JPG宇佐神宮


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