毒味 [雑学]
かつて大奥にいた者数十人から往時のさまを聞き取った「定本 江戸城大奥」とおいう本がある。これに毒見の様子がでてくる。将軍夫人の食事は「御広敷番頭及び中年寄の御毒味」をへて提供されていたとあり、江戸城では毒殺を避けるため将軍婦人用の御膳は一〇人前も調理させていたという。
一〇人前御膳を用意すれば、毒殺者は一〇人前全部に毒を盛らなければならず、毒殺が難しくなる。そんな工夫をしていた。
一〇人前のうち二膳が毒味に回され、残った八膳のうち三つだけが将軍夫人の前に出され。将軍夫人はその三つのうち二つの御膳にランダムに箸(はし)をつけていた。
残りはお付の登板の者が食べていたというから、この方式のおかげでお付きの者も、美味しい者にありついていらわけである。
~中略~
細川家の毒味役は毒味をさせる係であって毒味をする係ではなかった。毒味をするのは調理した者と御膳を運ぶ者であったのだ。
日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2017/10/18)
P128
日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)
- 作者: 磯田 道史
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/10/18
- メディア: 新書
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