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抗うつ薬の鎮痛作用 [医学]

 痛みに悩み苦しみぬいている人たちの多くは抑うつ状態であることは確かである。痛みによって誘発されるこの抑うつ状態は、きわめて自然であるから、この抑うつ状態を改善させるために抗うつ薬を投与することも、また、きわめて自然の理にかなった鎮痛法である。このことにより、抑うつ状態は改善される。
 ところが、抗うつ薬は、うつ状態の改善作用とは別に、抗うつ薬自体の独立した鎮痛作用も同時に有することが最近判明してきた。
脳脊髄液中に存在するセロトニンという物質は、痛みの抑制機構、とくに下行性抑制性制御機構を賦活させる役割を果たしていることが最近明らかになった。
抗うつ薬はセロトニンの濃度を高めることが明らかにされているので、このことが鎮痛効果をもたらすものと考えられている。
 したがって、抗うつ薬には、①うつ状態の改善、②痛みの抑制機構の賦活という、いってみれば、痛みに対する理想的な薬ということができる。この意味でも、抗うつ薬は痛みの治療薬として、もっと広く用いられてよい薬である。
 抗うつ薬に、このよな鎮痛効果のあることが明らかにされる以前には、抗うつ薬投与によって改善される痛みは、すべてうつ状態に起因している痛みである、と解釈されていたが、それは明らかな誤りであったのである。

痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)
P197

DSC_5024 (Small).JPG平尾台


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