軽々しく心の傷に立ち入るな [ものの見方、考え方]
心理学者の河合隼雄さんは、「相談を聞くといっても、話をきくだけですよ」と言います。
河合さんはあくまでも相手が自分で発見する手伝いをするだけだというのです。
そういう手伝いは河合さんのような相当なキャリアの持ち主だからできるわけで、なかなか他人の心の傷のケアなんて簡単にできません。下手に立ち入りすぎると逆効果になるのが落ちです。
~中略~
結局心の傷というものは自分で治すのが一番なのです。
それを最近は何か他人が癒せるかのように思ってしまいがちです。
だから心理療法士やカウンセラーになりたがる若い人が多いのでしょう。
養老 孟司 (著)
超バカの壁
新潮社 (2006/1/14)
P 126
「ぼくらの仕事にアンチョコがないんです。だから、本も書きにくいんですね。考えたら、生きた人間が生きた人間を相手にしていて、わかってたまるかというのがぼくの考えです。わかるはずがない。」
河合 隼雄
心理療法個人授業
河合 隼雄 (著), 南 伸坊 (著)
新潮社 (2002/08)
P174
今、老いも若きも、病気は医者に治してもらおう、苦悩は誰かに解決してもらおうという、この手のひ弱な人間が日本中に溢れています。
当然、死に際の場面でも、”心のケア”は強調されています。しかし、それは本人からの求めがあった場合に限られるのではないでしょうか。頼まれもしないのに押しかけるのは、余計なお節介のような気がします。
心理学を勉強したか、カウンセリングの技法を身につけたかは知りませんが、それらは所詮、”畳の上の水練”にしかすぎません。呼んだ覚えもないのに、傾聴と称してやってきて、したり顔でうなずいたり、「お気持ちわかります」などと、おぬかしになろうものなら、「死んだこともないくせに、死んでいく俺の気持ちがわかってたまるか」と、私なら怒鳴りつけることでしょう。
大往生したけりゃ医療とかかわるな
中村 仁一 (著)
幻冬舎 (2012/1/28)
P129
相手の話をよく聞こう、理解しようとする人は、正しいことにのみ目を向けるのではなく、人の弱い部分、影の部分も認められるということなのです。人の深い部分に触れることになるのですから。
影の部分のような深い領域まで入って話を聞くことになると、評論家的な態度ではすまなくなります。聞くほうも自分をかけて聞かなければならない場面に何度か直面します。
プロカウンセラーの聞く技術
東山 紘久 (著)
創元社 (2000/09)
P139
カウンセラーは、クライエントが最初に来たときに、この人は自分が会うのがよいのか、まず精神科のお医者さんに診てもらったほうがよいのかを判断がつかないとだめなのです。
~中略~
抑うつ症の人が来られたら、「とにかくお医者さんに行ってください。お医者さんの薬をちゃんと飲んでください」と言ってあげる必要があります。
~中略~
そのときに「あなたは変だから精神科行きです」という言い方をしないようにということです。
「精神科へ行って薬を飲んだほうがうまくいきますよ」とか「あなたの場合は精神科へ行ったほうがはるかに楽になりますよ」というふうに、言い方に配慮してください。
河合隼雄のカウンセリング講座
河合 隼雄 (著)
創元社 (2000/06)
P123
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