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マホメット [宗教]

  四十歳までのマホメットの宗教生活は、彼独特のものというよりも、従来のアラブの土俗信仰に満足できず、キリスト教・ユダヤ教の影響を受けつつ、新しい道を模索して禁欲的・瞑想的生活を送っていたこのハニーフと呼ばれた人びとと、ほぼ同じであったと見るべきである。

 メッカは、アラブの土俗信仰のうち、最高の権威を誇っていた。町の中央にカーバと呼ばれる四角い神殿があり、黒い石と呼ばれる隕石が壁の一隅にはめこまれ、主神はアラーと呼ばれ、その下に約三百の男神と女神があり、そしてその神殿と市場を管理しているのがクライシュ族で、彼はその一員であり、今では裕福な商人としてアル・アミーン(信頼できる人)と呼ばれながら、なおかつ瞑想し模索するハーニフであった。そして、彼は、忠実な夫としても十五年を過ごして来た。

イザヤ ベンダサン (著), 山本 七平 (著)
中学生でもわかるアラブ史教科書―日本人のための中東世界入門
祥伝社 (2007/07)
P47


中学生でもわかるアラブ史教科書―日本人のための中東世界入門 (ノンセレクト)

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  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2007/07/01
  • メディア: 単行本

 

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P54
マホメットの意図が何であれ、彼が一預言者として立ったことは、クライシュ族にとっては叛乱であった。彼がハーニフ(宗教的瞑想者)として瞑想にふけることが限度なら、誰も妨害しなかった。

~中略~
 だが彼が預言者として「自分の口を通じでアラーの言葉が発せられる」といえば、それだけでこの世界では一種の独立宣言であり、一国の創設の宣言であった。メッカの”共和国”の支配階級が、これを黙認できないのは当然である。 だがそれに加えてさらに、アラーは多神の中の主神でなく、アラーのみが神で、この神の前にすべての人は平等で、富者はその財産を貧者に分かち与えねばならぬなどと言われては、カーバの中の神々は権威を失い、同時にクライシュ族はその支配権も財産権も失うであろう。これではもう革命である。
 さらに人間には最後の審判があるが、その前に死後にすぐに審きがあり、アラーを受け入れマホメットをその使徒と認めた者は、この世でも死後でも正しく報われて輝かしい生活が保障されるが、一方、従わないものは、この世での懲罰と死後の地獄の火と責苦があるなどということを人びとが信じて、彼の指示通りに動き出したら、それこそすべてが転覆するであろう。 従って、これの教えより生ずるすべての動きが今の見方では「政治的」と見えても、それは当然であった。イスラム制には政治・宗教の区別はない。


 

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大澤 前略~

ムハンマドは、イスラム教にとってはもちろん特別な人です。しかし、いくら特別でも、ムハンマドは預言者です。最も偉大な預言者ではあるけれど、預言者は預言者です。

 それに対して、キリスト教にとって、イエス・キリストは預言者ではない。イエスは、モーセとか、イザヤとか、エゼキエルのような預言者ではないのです。ちなみに、イスラム教の観点からすると、イエスは、ムハンマドより格下の、一人の預言者にすぎません。

しかし、キリスト教にとってのイエス・キリストは、ただの預言者とは質的に異なっている。


ふしぎなキリスト教
橋爪 大三郎 (著), 大澤 真幸 (著)
講談社 (2011/5/18)
P131




ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

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