SSブログ

拙速と入念精美 [ものの見方、考え方]

  裁縫は二た通りにする。不断着は拙速で事足り、いいものは入念に時間をかける。
不断着は清潔第一とするからしばしば交替せねばならぬ、しばしば着かえるには手入れは敏速にせねばならぬ、敏速の実を挙げるためには拙はまた已むを得ない、一寸三針五分一針結構という。

  その代わり、いいもの、男物はそうは行かない。男はよそで衣服を脱ぐ場合もままある、脱いだ衣服の始末は必ず他家の子女の手にかかる。
また特にいい着物を着て出る場合は、同座する者もまたきっと綺羅を張っている、すなわち品評会である。ものがよければよいだけに、粗相粗雑な針目は目に立って屈辱この上ないのだから、入念精美を要する。たっぷりと時間をかけるべきだ、と。

幸田 文 (著), 青木 玉 (編集)
幸田文しつけ帖
平凡社 (2009/2/5)
P19

幸田文しつけ帖

幸田文しつけ帖

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/02/05
  • メディア: 単行本

 

-3d2a8.jpg大山寺山門
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント