快感と幸福は別 [ものの見方、考え方]
伸坊
快感のあるときっていうのは、脳内で物質がでるんでしたよね、ドーパミンだかβエンドルフィンだか、そういう。ぼくはこれを「快感汁」と呼んでるんですよ。
~中略~
澤口
ヒトはドーパミン系の快感汁とは別に、そういうジワジワと幸せを感じるような脳の仕組みを、もともともっているんです。
そのときに出るのは、維持汁というか、ジワジワ汁といいますか・・・・。とにかくドーパミン系とは違うシルなんです。
~中略~
伸坊 快感と幸福感、なるほどなァ、これもおもしろいですね。幸福感はセロトニン、快感はドーパミンって、汁が違う(笑う)。
快感汁ドーパミンや幸福汁セロトニンは、脳内の伝達物質の一種です。
伝達物質とは神経回路の情報伝達に係わる化学物質を指し、ニューロンとニューロンをつなぐシナプスの部分で分泌され、特定の受容体に受け取られることで、神経ネットワークに情報を伝えたり、情報伝達の仕方を調節したりする役割をはたしています。
脳内の伝達物質には、アミノ酸類、アミン類、ペプタイド類、アセチルコリンなどがあります。ドーパミンとセロトニンは、このうちアミン類
P122
ドーパミンは、言語的知性や数学理論的知性などの思考を調節する役割を果たしています。また、身体運動的知性とも関係が深く、スポーツに重要な物質でもあります。
~中略~
澤口 遊んでいるときも出ますよ。
遊びは好奇心と結び付いてますから、ドーパミンと関係が深いんです。
ドーパミンは子どもの時期のほうがたくさん出ます。子どものときのほうが、遊んでて楽しかったという気がしますよね。?それはドーパミンの量が多かったからです。
ドーパミンの年齢変化についてはサルのデータしかないのですが、サルの場合2~3歳が分泌のピークで、その後はぐっと落ちる。サルの2~3歳ははヒトでいえば、7~8歳で、前頭連合野の感受性期にぴったり一致します。
ドーパミン以外の脳内物質も、この時期にたくさん出てます。なぜかといえば、それが前頭連合野を発達させることにつながるからです。
P123
澤口 逆に、ドーパミンの分泌量が減ったり、分泌されたドーパミンを受け取る受容体の数がすくないと、集中力が欠けてきます。
最近問題になっている子どもの学級崩壊は、まさにこれです。
澤口 俊之 (著), 南 伸坊 (著)
扶桑社 (2000/09)
P183
女性の場合、ストレスが溜まると、それが食べる方向に向かうことが、よくあります。
甘いものが無性に欲しくなったり、また、「ヤケ食い」という言葉も、男性にはあまり聞かれないようなイメージがあります。
実は、これは、女性の脳が男性に比べるとセロトニンの分泌量が少ないから、というのがひとつの原因です。
セロトニンが十分分泌されていると、ストレスをやる気に変えていくことが容易になります。ですが、不足していると、がっくりと心が折れてしまうのです。
甘いものや、肉などを食べると、気分が少し和らぐ効果があるのは、おれらの食べ物がセロトニンの分泌量を多くするからと考えられています。食べること以外にも、ゆっくりお風呂につかったり、温泉などに行くのも同様にセロトニンの分泌量を増やすとされています。
また、普段からできることとしては、よく運動する(~中略~)、昼間に外に出て太陽の光を浴びる、あまり夜更かしぜずよく眠る、とおいうのも、ストレス耐性を高めていく上で、意外な効果があるものです。
P188
男性と女性で、脳が生理学的に異なっているもう一つの例として、「ドーパミンの放出量の違い」があげられます。ドーパミンの量の違いによって何が違ってくるかというと、中毒に陥る可能性、つまりハマりやすさが違ってくるのです。
ドーパミンは、俗に「快楽の分子」と呼ばれ、チョコレートを食べることからセックスに至るまで、さまざまな行為によって分泌され、人間に快楽をもたらします。
~中略~
ドーパミン神経は脳の広範な領域に投射して、運動学習から情動の制御まで、非常に多岐にわたる人間の行動を快楽という報酬によってコントロールします。
つまり、ドーパミンは、生体にとって利益となる行動をプラス評価して、脳に記憶、学習させるという機能を担った物質なのです。
脳内のドーパミンの量が多くなると、人が何かに夢中になるのを助長します。
恋愛の始まる頃のドキドキ感とか、仕事で大成功を収めたときの高揚感だとか、そんな状態をドーパミンがもたらすので、ドーパミンが出ている限りは、興奮した状態がずっと続くのです。
さて、人間の脳にとって、ドーパミンは基本的に「報酬」として働きますが、一方で、望ましくない作用も持っています。ドーパミンは、薬物依存症やアルコール依存症における病態中心となっています。
~中略~
米国ジョーンズ・ホプキンズ大学の神経内分泌学者、ゲーリー・ワンドが行った実験では、男性は女性よりも、同じ快楽物質に対するドーパミンの放出量が多いために、様々な刺激や快楽に対して、中毒を起こしやすい、ということが明らかになりました。
~中略~
では、ドーパミンの放出量が多いとどうなってしまうのでしょうか。
一度の刺激で放出される量が多いということは、それだけ快感が強いということになります。すると、再び快楽の刺激を受けたくて、中毒になってしまうリスクが上がるということに・・・・
~中略~
また、アルコール依存などに比べるとずっと良い例ですが、「オタク」と呼ばれる人には男性が多いでしょう。これは、男性の脳がひとつのことにハマリ、夢中になりやすいために、簡単にはほかの追随を許さないほど、趣味を究めることができるのだということも言えます。
脳はどこまでコントロールできるか?
中野 信子 (著)
ベストセラーズ (2014/8/19)
セロトニンとは、「幸せホルモン」とも言われますが、これが不足するとうつ病や不眠症、不安神経症などの心の病を引き起こす要因となります。
セロトニンは、感情の波をコントロールし、メンタルタフネスを維持するため、すなわち集中力を高めたりストレス軽減に必要な物質と言えます。
この脳内のセロトニンを増やすには、朝日を浴びる、運動する、人と触れ合うといったことが有効ですが、特に「リズムを意識した運動」が比較的短時間でセロトニンを分泌させるそうです。
つまり、一定のリズムでの咀嚼を必要とする「ガム」がストレス軽減に速効性のある食べ物と言えるのではないでしょうか。
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坂上 隆之 (著)
日刊工業新聞社 (2015/2/25)
P71
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