大野寺磨崖仏弥勒菩薩立像 [見仏]
弥勒仏が彫られた承元元年といえば、東大寺大仏殿の再興なって五年目であり、その前年には俊乗坊重源は没しており、東大寺再興工事が一段落を告げたうえ、大なる理解者が死んでしまったので、重源が宋から招聘した宋人石工などは、途方に暮れていたことであろう。
弥勒石仏のような大工事には当然それらの宋人石工の技術が動員されたと思われる。その大味な螺髪やしなやかにしてねばっこい線刻などには何か異国的なものが感じられる。
大野寺磨崖仏は、いわば七百五十年以上前の日中文化交流の一大記念物でもあるわけである。
土門拳 古寺を訪ねて―奈良西ノ京から室生へ
土門 拳
小学館 (2001/09)
P125
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