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シリアのアサド政権 [国際社会]

  シリアの場合ですが、「社会主義」「アラブ」を名乗るバース党が、どうして今まで続いてきたかというと、結局のところ、社会主義でもアラブ民族主義でもなく、単にアサド家とその取り巻きによる独裁恐怖政治で乗り切ってきたからです。
 ただし、アサド政権は、前にも書いたように大変賢明ですから、根っからの商売人であるシリアの人たちの経済活動だけは邪魔しませんでした。いくらでも好きなように商売させて、上りの一部を上納金として政府が巻き上げればよかったのです。ですから、アルメニア人であろうと、キリスト教徒のアラブ人だろうと、クルド人だろうと、そして多数を占めるスンナ派のムスリムだろうと、商売の自由だけはかなり保障されていました。

イスラームから世界を見る
内藤 正典 (著)
筑摩書房 (2012/8/6)
P111

イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 内藤 正典
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/08/06
  • メディア: 新書

 

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呉市 下浦刈

松濤園(しょうとうえん)

http://www.kurenavi.jp/html/m000110.html

P119
 佐藤 シリア問題もこの(住人注;イスラム教の)宗派対立が根底にありますが、今回のキーワードは、「アラウィ派」です。今のシリアのバッッシャール・アル=アサド政権は、アラウィ派によって成り立っている。~中略~
アラウィ派がシーア派だとされはじめたのは、一九七四年くらいのことにすぎず、イスラム教の長い歴史のなかでは、つい最近のことです。それもアラウィ派がレバノンのシーア派に認証を強いた結果です。
 そもそもアラウィ派は、輪廻転生説が中心です。シリア北西部に神殿があり、そこにキリスト教崇拝も加わっていますが、何よりも特徴的なのは、基本的に同族結婚であること、あの地域の被差別民だということです。
 シリアは、第一次大戦が終わった一九一八年、それまでの植民地支配から国際連盟のもとでフランスが委任統治をすることになりました。
するとフランスは、現地の行政、警察、そして秘密警察までを、アラウィ派に担わせたのです。すなわち、政治をすべて被差別民に任せたということです。多数派に統治させると独立運動など起しかねない、少数派ならば、フランスへの依存から逃れられないだろう、という計算があったことは疑う余地もないでしょう。
 池上 シリア問題の初手でアラウィ派に注目するとは、佐藤さんらしい切り口ですね。
 補足すれば、アラウィ派というのは、「アリー」、つまり第四代カリフだったアリーに従う者、という意味です。いうなれば、「自分たちアラウィー派はアリーに従う者なのだから、シーア派として認めてほしい」という理屈が立つのです。
 しかし、イスラム本来の教義においては、人が死んだらこの世の終わりが来るまで地下で眠って待つ。そして終末のときに、死んだ人は、みな土の中から蘇り、神の前で最後の審判を受けて天国へ行くものと地獄へ行くものとに分けられます。
 ところが、アラウィ派は輪廻転生を認めていて、現世で悪いことをすると犬畜生に生まれ変わることもあるという、ヒンズー、仏教的な、いかにもアジア的な要素が入っている。
 だからスンニ派からしてみれば、イスラム教として認めがたい。

P122
 佐藤 ~前略
 そもそも現大統領のバッシャール・アル=アサドは、本来は、イギリスに留学経験もある眼医者で、インテリです。ところが兄バーセルが一九九四年に事故死したため、無理やり父親の後継大統領にされた。宗教対立をのりこえて、国民和解の必要があると、夫人をスンニ派からもらいました。スンニ派の金持ちたちを味方につけ、軍の要職にも少しスンニ派を入れました。
ですが、こうした努力もむなしく、やはりうまくいかなかった。

P123
 池上 シリアでは少数派であるアラウィ派のアサド政権が、多数派のスンニ派住民を抑圧してきましたから、スンニ派住民が自由を求めて決起した形です。アサド政権がこれを弾圧すると、政府軍の幹部の中にも、自国民を殺すのは嫌だ、という人たちが出て離反し、「自由シリア軍」をつくって内戦状態になりました。
 そこにスンニ派国家のサウジアラビアやカタールが大きく支援を入れて、反政府勢力が豊富な資金と軍事物資を持つようになった。
その自由シリア軍と政府軍がぶつかり合っているところに、レバノンからシーア派の過激組織ヒズボラ(神の党)がアサド政権の支援に入って、一気に政府側が盛り返すのです。

P124
 池上 そこに付け込んだのが、「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」、今の「イスラム国(IS)]です。

新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方
池上 彰(著), 佐藤 優(著)
文藝春秋 (2014/11/20)


 

新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)

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  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/11/20
  • メディア: 単行本

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