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「真実を伝える医療」か「ウソも方便」か [医療]

 医療が高度になるにつれ、心の問題を軽んじる傾向は、どんどん強くなっている。
 血圧にも、まさにこのことは当てはまる。数値という非人間性の極みから、人間性を取り戻すことが必要だ。
 例えば、患者の血圧が高くても(極端に高い時は別だが)、私はさばを読んで少々低めに言ったり、黙っていたりする。そのまま言えば、心配してもっと高くなるのは、目に見えているからだ。そして「今日は暑いから、家でゆっくりしてくださいね」と言うなどして、できるだけ患者に安心してもらえるよう心がける。
 医者はまず患者と顔を合わせ、コミュニケーションを取ることが大切だ。そして「ウソも方便」である。
「真実を伝える医療」が、かえって人間性を踏みにじることも少なくないのだ。


高血圧はほっとくのが一番
松本 光正 (著)
講談社 (2014/4/22)
P133


興福寺 (2).JPG興福寺

高血圧はほっとくのが一番 (講談社+α新書)

高血圧はほっとくのが一番 (講談社+α新書)

  • 作者: 松本 光正
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/04/22
  • メディア: 新書



 一口に「がんの告知」といっても病名や病状、治療法など告知の内容にはいろいろあります。末期がんや進行がんでは、予後(余命)のことも告知に含まれます。予後の告知をすべきか否かについては、医師の間でも意見が分かれるところです。とくに高齢の患者さんについては予後の告知はしないと考える医師も少なからずいます。
 しかし、私(中川)は高齢の患者さんであっても、予後の告知はありえると考えています。
なぜなら、患者さんの命はほかならぬ患者さん自身のものだからです。限られた時間を、どのように過ごすかを考えることは非常に大切なことでしょう。~中略~
 そうやって心の準備をして迎える死と、なんの準備もないまま迎える死との間には大きな差があると思えるのです。
(住人注;中川恵一)

自分を生ききる -日本のがん治療と死生観
中川恵一 (著), 養老孟司 (著)
小学館 (2005/8/10)
P131





自分を生ききる―日本のがん医療と死生観

自分を生ききる―日本のがん医療と死生観

  • 作者: 中川 恵一
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/07/01
  • メディア: 単行本




 常に正しい医師など存在しない。どんな医師も時には間違いを犯す。完璧、ということはありえないのだ。
患者はそうした現実にどう向き合っているのだろう?医師である私たちが過去に誤りを犯したとき、私たちのもとを去った患者もいた。もはや私たちの判断を信じられなくなった、ということだ。
疑念の気持ちは交わされる全ての会話に影を落とした。間違いが起こった後どんなアドバイスをしても、そこには半信半疑な気持ちがつきまとっていた。
医師への信頼は病気の山谷を乗り切るための支えとなる。医師への信頼があれば、恐れは減り、非力感は和らぐ。その患者が安心して関われるような別の医師を探そうと去っていったのも無理はない。

P120
医師も過ちを犯す、という事実を抽象論で理解するのはたやすい。しかし、自分の医師の慰めの言葉が実は誤りであったとわかったとき、自分が当事者として医師も間違うという事実を易々と受け入れられるかというと話は別である。
そのとき、医師への信頼の土台は地震のように揺らぐ。

決められない患者たち
Jerome Groopman MD (著), Pamela Hartzband MD (著), 堀内 志奈 (翻訳)
医学書院 (2013/4/5)
P119





決められない患者たち

決められない患者たち

  • 作者: Jerome Groopman MD
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2013/04/05
  • メディア: 単行本





「残念ですが、もうこれ以上、治療の余地はありません」。
久坂部羊著「悪医」の冒頭の文章である。あなたががん患者だったとして、医者からこのように言われたら、大きなショックを受けるだろう。当然、治療の可能性について、何度も問いただすに違いない。
 「悪医」の主人公の一人で、外科医の森川良生は、「もうつらい治療を受けなくてもいいということです。残念ですが、余命はおそらく三ケ月くらいでしょう。あとは好きなことをして、時間を有意義に使ってください」と説明する。副作用で命を縮めるより、残された時間を悔いのないように使ったほうがいいから、患者のためを思って告げるのだという。
 確かに、がんという病気と治療法を熟知し、何度も同じような患者を診てきた医者からみれば当然の判断かもしれない。しかし、そういうことを言われるのは、一人一人の患者にとっては、生涯で初めてのことである。
森川医師から治療法がないと言われた、もう一人の主人公であるがん患者の小仲辰郎は、「治療法がないというのは、私にすれば、死ねと言われたも同然なんですよ!」「もう先生には診てもらいません!」と絶望して診察室を飛び出す。
医者にとっては合理的で当然の判断でも、患者にはそうではなく「悪医」と受けとられることがある。両者の間には、医療行為の受け止め方に深い溝があるのだ。
 医者である森川は、末期がんの患者が、長生きを望みながら、副作用が強く、命を縮める医療を選択するという心理がわからない。この心理は、行動経済学では損失回避として知られている。
人は損失を確定することを嫌うあまり、少しでも損失がない可能性を含んだ選択肢を選んでしまう。冷静に考えれば、損失を確定したほうが望ましいが、そうはできない。一生に一度しか直面しない問題ならなおさらである。
 医者からすれば、どうして患者は、合理的な選択をしてくれないのか理解できない。一方、患者からすれば、どうして医者は統計的な数字をあげるばかりで、意思決定を迫ってくるのか理解できない。

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者
大竹 文雄 (著), 平井 啓 (著)
東洋経済新報社 (2018/7/27)
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