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イスラーム法 [国際社会]

P177
 イスラームというと、よく「眼には眼を、歯には歯を」の宗教だから野蛮だと言われますが、完全に意味を取り違えています。殺人事件というのは、イスラーム的には刑事事件ではなく、民事の事件なのです。日本や欧米では、刑事事件では、当事者(被害者や遺族)が報復することは許されません。すべて司法の場で裁判を通じて裁かなければならないことになっています。  しかし、イスラーム的にはこれはおかしなこととなります。なにゆえ、国家権力が、個人対個人の争いとその結果としての傷害や殺人に口を挟めるのか?という疑問のほうを重視するからです。
~中略~
 その法律は、国家がつくったものであり、言い換えれば人間がつくったものです。人間がつくった法律ですから「人の法」です。そのため、国家が殺人の裁きと刑罰を代行して行っていることになります。
 一方、イスラームはこれを認めません。イスラームというのは、ムハンマドを通じて神(アッラー)が下したのですから、さまざまな規範は「神の法」なのです。先ほど書いたように、殺人というのは個人対個人の事案ですから、私たちの感覚でいう「民事」なのです。
~中略~
 ただし、現実のイスラームの国では、イスラーム法で定められたとおりの刑罰を科すとは限りません。それは、世界で力をもっている西欧諸国との関係で、イスラーム世界といえども、西欧の法体系とイスラーム法とを接ぎ木している国が圧倒的に多いからです。

P194
イスラーム法では、ムスリムから租税を徴収できません。ムスリムが差し出すのは、原則的に喜捨です。もうけの一部を神に差し出すというのが喜捨ですが、これには、一定の割合で収める定めの喜捨(ザカート)に加えて、任意・随意喜捨(善行)となるサダカがあります。
一方、他の一神教徒は、ジズヤと呼ばれた人頭税を支払うことで、ムスリムとの共存を認められたことになります。 征服した地域からの税収をあてにしていたオスマン帝国は、暴力的に異教徒を滅ぼしては元も子もありませんでした。

P117
 ふだんの生活が、どんなにイスラームの規範からかけ離れていようと、彼らをムスリム以外の人間として見るのは間違いです。
イスラーム自体も、信仰に関して強制は禁物としていますから、イスラームの規範の何をどこまで守っているかを他人が評価するようなことはできません。
これは、聖典コーランに繰り返し、神の命令として「無理強いはいけない」と出てきますので、いかなるムスリムも従わなければなりません。
しかし、西欧の社会は、この点でもイスラームをひどく誤解していて、何かと押し付けがましい宗教だと信じ込んでいます。 おそらく、イスラームに規範がたくさんあるから、そう思い込んだのでしょうが、実際には信仰の強要は禁じられています。

イスラームから世界を見る
内藤 正典 (著)
筑摩書房 (2012/8/6)

イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

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  • 作者: 内藤 正典
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/08/01
  • メディア: 新書


TS3E0696 (Small).JPG呉市 下浦刈 呉市 下浦刈 三之瀬地区

橋爪 前略~
 法律をつくるのに一番抵抗があるのは、イスラムなんです。それは、イスラム法があんまり立派すぎるからです。イスラム法に抵触しそうな法律を作るには、うんと言い訳をしないといけないし、だいたい議会がある国とない国があったりする。
サウジアラビアみたいに、そもそも民主主義でもなんでもないという国があったりする。
イスラム法と、近代化に必要な議会の立法行為との関係が、整理がつかない。

ふしぎなキリスト教
橋爪 大三郎 (著), 大澤 真幸 (著)
講談社 (2011/5/18)
P336

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

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  • 作者: 橋爪 大三郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/05/18
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