SSブログ

断定口調に気をつけろ [社会]

 私は深夜のテレビショッピングをよく見る。あの巧みなPRは癖になる。
 たとえば」腹に巻くだけでいつの間にか腹筋が鍛えられるとういう健康器具。メタボに悩むサラリーマンや「もうすぐ結婚式なのにウェディングドレスがきつくて」という女性が出てきて装着し、何キロやせた、ウェストが何センチ減ったと喜んで見せたりする。
 画面隅に「これは個人の感想です。効果には個人差があります」と小さく表示されるが、「効果がなかった」という人が登場したためしがない。
~中略~
信じるも信じないもあなた、もはや会場は集団催眠状態。この予定調和的な心地よさが、テレビの前の私にとっても癖になるのだろう。
 しかし時々「医学博士」とか「××大学名誉教授」が白衣姿で登場し、効果を裏づけるようなコメントをすることがあって、これはいただけない。
 私に言わせれば、きちんとした科学者だったらあんな手放しで商品をほめることはない。
「人によってそれほど効果がないかもしれません」とクギを刺すか、髪をもしゃもしゃしながら「あくまでも仮説ですが」と前置きする。
もっとも売る方にしてみれば、そんなふうに歯切れが悪くては商品が売れない。断言してももらわないと困るのだろう。  私はこういうところに登場する白衣の人々を「なんちゃって科学者」と呼んでいる。
「がんが消えた!」「××が万病に効く!」たぐいの宣伝本に「監修 医学博士・誰野誰兵衛」といった形で登場することも多い。
耳目を集める科学的成果ほど、未解明な部分が多く含まれている。だから断言しづらい。
にもかかわらず断定口調でものを言う科学者がいたら、その主張は眉に唾をつけて聞くぐらいがちょうどいい。

気になる科学 (調べて、悩んで、考える)
元村有希子 (著)
毎日新聞社 (2012/12/21)
P29

DSC_0982 (Small).JPG川中不動と天念寺

P298
 医学でも最近は「コレステロールはすこし高いほうが長生きする」とか言われて、今までせっせせっせとコレステロールを下げていたのは何だったのかと、潜在的殺人じゃないか、というような話になったりして、また論争が起こってくる。
それはもういろんなデータが出てきて進歩するから仕方ないのね。
 それは今後もずっと繰り返されるんだけれども、大事なのは何か。この「理論」という依拠された一つの知的集合体には、それの沿わないものを排除する傾向がある。ということです。
理論に合わないものは認めたくないし、「みんなこれに従え」というような暴君的な性質を帯びてくるので、そこでこの理論をよくよく勉強して、詳しくなっている秀才はしばしば医療の中で妥協しない、寛容の精神がない、異なった意見を入れない、そういう医療をするようになるです。

P299
 みなさんは今、エビデンスとか、診断の手続きとか、そういうものを勉強しますが、それが「理論」のように取り扱われると、必ず何パーセントかの誤診が生じます。

神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント