遺伝子 [雑学]
遺伝子は使うことで改善されるものではない。それらはただ伝えられるだけで、ごくまれな偶然のエラーを別とすれば、まったく変わらないのだ。
成功がすぐれた遺伝子をつくるのではない。すぐれた遺伝子が成功するのであって、個体が生きているあいだに何をしようと、それは遺伝子に何の影響も与えない。
すぐれた遺伝子をもって生まれてきた個体は、大人になって首尾よく祖先になる可能性がきわめて高い。
したがって、すぐれた遺伝子は劣った遺伝子よりも後代に伝えられる可能性は高くなる。各世代はフィルターであり、篩(ふるい)なのである。すぐれた遺伝子は篩の目から次の世代へと落ちてゆく。
遺伝子の川
リチャード ドーキンス (著), 垂水 雄二 (翻訳)
草思社 (2014/4/2)
P12
島根県松江市熊野大社
P34
遺伝子は純粋な情報であり、量の低下や異味の変質を招くことなく、暗号化も、再暗号化も、あるいは解読もできる情報である。純粋な情報はコピーすることができるし、デジタルな情報なので、複製の忠実度は計り知れないほどだ。
DNAの特徴は現代のエンジニアの能力にひけをとらない正確さでコピーされる。ちょうどまれに変種ができる程度のエラーをともなうだけで、世代から世代へとコピーされていく。
~中略~
増幅されたアナログ電話、何度もダビングしたテープ、ゼロックスで複写したものの複写など、アナログ信号は累積的な劣化をこうむりやすく、複製がきちんと維持できる世代数は限られている。
他方、遺伝子は一〇〇〇万世代でも自己複製が可能で、しかも劣化が全くないと言ってよい。ダーウィン主義が通用するのは、ひとえに―個別の突然変異は別で、これも自然淘汰によって排除されるかあるいは保存される―コピー処理が完璧だからである。
P46
遺伝子の視点には、何世代も流れていくDNAの川の長期的な見通ししかなくて、遺伝子はほんの一時的に特定の体に宿り、成功するか失敗するかわからない仲間の遺伝子とほんの一時的に一つの体を共有するにすぎないのである。
長期的には、その川はいくつかの理由で生存に適した遺伝子でいっぱいになる。
槍投げの能力が少し改善されるとか、毒を見分ける能力が増すなど、何でもありうる。
平均的にみて生存に適さない遺伝子―それが宿る体を乱視にする傾向があるため、その体の持ち主は槍投げがあまりうまくないとか、肉体を魅力的にしないために、それが宿る体の主は結婚できそうもないなど―は、遺伝子の川から姿を消してゆくことになるだろう。
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