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六正・六邪 [処世]

魏徴の定義する「六正・六邪」(論択官第七・第十章)を参照してみよう、まず「六正」の方から進もう。
(一)きざしがまだ動かず、兆候もまた明確ではないのに、そこに明らかに存亡の危機を見て、それを未然に封じて、主人を、超然として尊栄の地位に立たせる、これができれば「聖臣」である。
(二)とらわれぬ、わだかまりなき心で、善い行いの道に精通し、主人に礼と義を勉めさせ、すぐれた計りごとを進言し、主人の美点をのばし、欠点を正しく救う、これができれば「良臣」である。
(三)朝は早く起き、夜は遅く寝て勤めに精励し、賢者の登用を進めることを怠らず、昔の立派な行いを説いて主人をはげます、これができれば「忠臣」である。
(四)事の成功・失敗を正確に予知し、早く危険を防いで救い、くいちがいを調整してその原因を除き、禍を転じて福として主人に心配させないようにする、これができれば「智臣」である。
(五)節度を守り、法を尊重し、高給は辞退し、賜物は人に譲り、生活は節倹を旨とする、これができれば「貞臣」である。
(六)国家が混乱したとき、諛(へつら)わずにあえて峻厳な主人の顔をおかし、面前でその過失を述べて諌める、これができれば「直臣」である。

 次に「六邪」をあげる。
(一)官職安住して高給をむさぼるだけで、公務に精励せずに世俗に無批判に順応し、ただただ周囲の情勢をうかがっている。これが「見臣」である。
(二)主人のいうことにはみな結構なことですといい、その行いはすべて御立派ですといい、秘かに主人の好きなことを突きとめてこれをすすめ、見るもの聞くものすべてよい気持ちにさせ、やたら迎合して主人と共にただ楽しんで後害を考えない。これが「諛(ゆ)臣」である。
(三)本心は陰険邪悪なのに外面は小心で謹厳、口が上手で一見温和、善者や賢者をねたみ嫌い、自分が推挙したい者は長所を誇張して短所を隠し、失脚させたいと思う者は短所を誇張して長所を隠し、賞罰が当たらず、命令が実行されないようにしてしまう、これが「姦(かん)臣」である。
(四)その知恵は自分の非をごまかすに十分であり、その弁舌は自分の主張を通すに十分であり、家の中では骨肉を離間させ、朝廷ではもめごとをつくり出す。これが「讒(ざん)臣」である。
(五)権勢を思うがままにし、自分に都合のよいように基準を定め、自分中心の派閥をつくって自分を富ませ、勝手に主人の命令を曲げ、それによって自分の地位や名誉を高める。これが「賊(ぞく)臣」である。
(六)佞邪をもって主人にへつらい、主人を不義に陥れ、仲間同士でぐるになって主人の目をくらまし、黒白を一緒にし、是非の区別をなくし、主人の悪を国中に広め、四方の国々まで聞こえさせる、これが「亡国の臣」である。

帝王学―「貞観政要」の読み方
山本 七平 (著)
日本経済新聞社 (2001/3/1)
P97

帝王学 「貞観政要」の読み方 (日経ビジネス人文庫)

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  • 作者: 山本 七平
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版
  • 発売日: 2001/03/01
  • メディア: 文庫


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