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痛みを消すための努力 [医学]

P156
 痛みをいかにして鎮(しず)めるかという努力は、人類の歴史とともに絶えることなく現在もつづけられている。
 人類の知恵によって、口から口へ、手から手へと、数々の鎮静法は伝承されてきた。
 人類の有史以来脈々と受けつがれてきたこれらの鎮痛法には、それなりの確固とした科学的根拠が存在するはずである。
 古代から伝承されている鎮痛法の数々は、現代の医学という概念で置き換えると、心理学的鎮痛法と刺激鎮痛法に大別することができる。
 古代に行なわれた心理学的鎮痛法の代表的なものは呪文と、泣く儀式である。

P165
フィンネソンの文章からもわかるように痛みに関する偽薬効果の存在は、痛みというというものは、いかに心理的要因が大きく関与しているかという事実を如実に物語っている。
 呪文には、この偽薬効果が見事に実践されている。
 このようにして、古代における「呪文」や「泣く」という鎮静法は、決してスマートな方法とはいい難いが、現代でいう患者と医師の絶対なる信頼関係を基盤にして、音楽療法偽薬効果、そして、ゲート・コントロール説の実践を完璧に行なっていたのである。まさに、見事という他はなく、痛みの治療の基本が、すべてこの呪文に集約されている事実に、改めて深い感動を抱かずにはいられない。
 このような心理学的鎮痛法は、オペラント条件づけ、バイオフィードバック法、催眠法、弛緩鎮痛法、認知的克服法などへと発展し現在に受け継がれている。

痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)

痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る (ブルーバックス 748)

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  • 作者: 柳田 尚
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1988/09/01
  • メディア: 新書

 

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