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墨子 [哲学]

P80
 墨子は、社会が人の繁栄を実現できていないという孔子学派の考えを共有していた。倫理的によりよい人間になるよう人々に働きかけるべきだと墨子も考えていた。しかし孔子学派と違い、墨子と門人たち(墨家)は儀礼がよい人間になるのに役立つ手段だとは考えなかった。
それどころか、儀礼は型にはまった無意味なもので、本当に重要なことに関心を向けるのを防げる時間の無駄でしかないとして退けた。そして、本当に重要なのは、この場合、〈天〉、すなわち、世界を創造したと信じられていた神性を真摯に信仰することだと考えた。
 墨子と門人たちにとって、天は上帝であり、善悪の明確な道徳基準を定める存在だった。人間は善良な生活を送るためにその基準に従わなければならない。基準に従えば報われるし、従わなければ罰(ばち)があたる。~中略~ 
墨家は、ある種の公正な道徳律が宇宙を下から支えていると信じるように教え込めば、人々を倫理的にふるまわせることができ、その結果よりよい社会になると考えた。真摯な信仰の重視といい、儀礼への不信といい、善なる神性が創造した条理ある予測可能な世界への信念といい、僕家は多くの点で初期プロテスタントとかなり似ている。

P82
もちろん墨子は、人が生まれつき倫理的にふるまうことはなく、感情や私欲が妨げになることを理解していた。社会は人々の正しいおこないをあと押しするよう組織すべきだと考えた。社会は人々の正しいおこないをあと押しするよう組織すべきだと考えた。あと押しする仕組みには、なすべきことをしたときの賞(成功、金銭、名声)と、しなかったときの罰(失敗、降格、罰金)があった。善悪の判断がはっきりつく世界―勤勉が報われ、悪行が罰せられる世界―に生きていると信じられれば、人々はさもしい感情に従うのを思いとどまり、よい人間になろうと努力するはずだ。
墨子は、正しい制度が整いさえすれば、その結果、だれもが恩恵を受ける社会になると確信していた。墨子が「兼愛」と呼んだ世界だ。

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