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腸内フローラ [雑学]

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 腸の中には、なんと、500種類程度、100兆個以上の細菌が棲んでいると考えられています。
我々の体を作っている細胞の種類が200、総数がおよそ37兆個といわれていますから、腸内細菌の多さがわかるでしょう。
ヒトの細胞にくらべて細菌はずいぶんと小さいので、コンパクトにおさまってくれているとはいえ、すごい数です。大便というのは食べ物を消化した残りかすと思われているかもしれませんが、ちがいます。およそ半分くらいは腸内細菌の死骸なのであります。
 腸内に存在する細菌は、全部ひっくるめて、腸内細菌叢、あるいは腸内フローラ、と呼ばれます。フローラというのは、もともとは「植物相」という意味の生体学用語です。

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ビタミンKというのをご存じでしょうか。たとえば、ちょっとしたケガをしても、すぐに血が止まります。それには、血液凝固因子という何種類ものタンパク質が機能します。ビタミンKは血液凝固因子を作る時に必要なビタミンです。
 このビタミンKは腸に棲みついている細菌で産生され、我々はそれを吸収しています。いわば、細菌は、腸の中でウンコまみれになりながら、有用な物質を作ってくれているのです。
一方で、細菌はおならのような好ましくないものを作ってしまいますけど、それくらいはまけといらんとあかんでしょう。

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 おなかの中の赤ちゃんは無菌です。なので、腸内フローラは生まれてからできはじめます。赤ちゃんの腸に最初にはいっていく細菌は、産道に存在する細菌です。帝王切開で生まれた赤ちゃんは、産道を通らないので、当然、腸内フローラの成立は通常の出産の場合とはちがっています。  その後はミルクや食べ物など、環境からはいりこんだ細菌が腸に棲みついてフローラが形成されていきます。
ミルクしか飲まない段階の乳児と離乳後では腸内フローラが大きく変化する、親子や夫婦でも必ずしも腸内フローラは似ていない、といったことがわかっています。
また、それぞれの人の腸内フローラにはけっこうな違いがありますが、個人の腸内フローラは比較的安定しています。
 ビタミンKのことを少し書きましたが、赤ちゃんは腸内フローラが未発達なので、十分なビタミンKが作られません。また、母乳にもあまり含まれていません。なので、新生児にはビタミンKの投与が必要なのです。
~中略~ 海に生息する細菌には海藻壁を消化する酵素を持っているものがあります。また、われわれ日本人はノリや昆布などの海藻類をよく食べます。腸内フローラのメタゲノム解析で、海藻壁を消化する酵素をもつ細菌が日本人の腸に存在することがわかったのです。
しかし、海藻類をあまり食べない欧米人の腸には見つかりませんでした。食文化が、特殊な機能を持った腸内細菌との共生に影響を与えるって、なんかすごいことやと思われませんか。

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 クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患と呼ばれる疾患は、我が国では比較的少なかったのですが、近年、急速に増加してきています。そういえば、安倍晋三首相も潰瘍性大腸炎でしたね。これらの炎症性腸疾患の発症には腸内細菌が関与していて、腸内フローラを改善することにより、ある程度の治療が可能ではないかと考えられています。~中略~
 生活習慣病と腸内フローラについてもおもしろいはなしがあります。
まず、肥満の人は正常体重の人と腸内フローラの組成が違います。それだけではなく、肥満の人に一年間低カロリーダイエットをしてもらって体重が減ると、腸内フローラも正常体重の人に近づいていくことがわかりました。
腸内フローラが肥満の原因なのか、それとも単なる結果なのかまではわかりませんが、なんらかの相関関係があること間違いなさそうです。

(あまり)病気をしない暮らし
仲野徹 (著)
晶文社 (2018/12/6)

DSC_6197 (Small).JPG金峯山寺


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