解熱剤で熱を下げると、治りは遅れる [医学]
鍼に関する誤解 [医学]
P182
東洋医学による和痛効果は、世界中の西洋医学から熱いまなざしで注目され、特に、鍼の和痛機序について研究がすすめられ、その大部分が解明されている。 しかし、その実態は、政治的あるいはマスコミ的手段によって紹介されていることが多いため、神秘的なもの、信じられない驚きとしてはなばなしく、時にはセンセーショナルに報道されつづけてきた。
~中略~
鍼に関する重要な誤解についていくつか述べてみよう。
第一に、鍼麻酔の効果が確実に存在することはすでに「針効果」(一七一ページ)の理論によって裏づけられている。しかし、その効果はきわめて弱いか、不確実であることが多く、普通の手術際の麻酔には使用できない。
~中略~
第二に、鍼(はり)・灸(きゅう)のツボは大きく分けて二種類あるといわれている。いわゆる経絡(けいらく)に沿ったのが経穴(けいけつ)であり、それ以外のツボが奇穴(きけつ)である。全部で五八八のツボがあるといわれ、鍼の名人によるこのツボは針が吸い込まれるように入ってゆく神秘的な部位であるともいわれている。
しかし、経穴や奇穴というのは、そのほとんどは西洋医学でいう神経分布に一致した部位である。
つまり、西洋医学でいう発痛点であり、そのなかでも、運動神経細胞の軸索(じくさく)といわれるものの分布が密な部位である。~中略~
第三に、経穴図によればこの経穴に鍼をしなければ効果がないとしている特殊な点は、そのほとんどは不必要であることも明らかにされている。例えば、歯痛に対しては第一指(拇指)と第二指(人差し指)の間にある合谷という点を刺激しなければならないことになっているが、第四指(薬指)と第五指(小指)の間でも、さらに手掌のどんな部位を刺激しても、同じ程度の鎮痛効果の得られることが確認されている。
すなわち、経穴でいう「点」という部位が重要なのではなく、刺激の強さが重要なのである。~中略~
第四に、西洋医学の解剖学で明らかにされている「関連痛」の存在を、不思議なもの、神秘的なもの、さらに信じられない効果として、マスコミなどによって報道されていることである。
関連痛というのは、皮膚を針で突くと、突かれた部位と痛む部位は一致するが、内臓痛(痛みの原因が内蔵にある場合)では、障害のある内蔵の位置と関係のないところに痛みを感ずることがあり、このような痛みを関連痛と呼んでいる。 ~中略~
このような関連痛は、すべて発生学的な神経支配に忠実であるというだけのことである。
P188
第五に、鍼に関する誤解のひとつに、有名なスポーツ選手と鍼にまつわる話題がマスコミを通して流されていることにあると思われる。
世界的に有名なマラソン選手の全然走れない状態が、鍼治療によって走れるようになった話は、報道により鍼の偉大な効果として、一般の人たちは信じ切っている。
「全然走れない状態」の原因が、筋肉・神経・骨などの運動器官に存在する器質的な疾患、例えば骨折、アキレス腱の断裂なおであるならば、鍼治療によって「走れる」状態になることは、あり得ない。
全然走れない状態にではなく、鍼治療を行う前から、一般の人たちとは比較にならないほどの、ものすごいスピードで走れてはいたのである。この 人のレベルからすれば、今ひとつ調子に乗り切れない状態、すなわちスランプの状態を、鍼治療、すなわち刺激鎮痛法を行うことにより、ゲート・コントロール説の認識制御機構、下行性抑制性制御機構の強化によって調子を取りもどした、ということである。
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る (ブルーバックス)
- 作者: 柳田 尚
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2022/06/28
- メディア: 新書
高血圧の治療には根拠がない [医学]
今や「高血圧症」は国民病といわれ、患者数は約5500万人もいるとされる(2011年国民健康・栄養調査より)。5500万人というのは、とてつもない数である。日本人の成人の半分以上が、「高血圧症」という病気なのだ。
普通に考えれば、こんなことがあるはずはない。
~中略~
血圧は気にしないほうがいい。むしろ、気にしてはいけない。血圧を気にすることは、それ自体ストレスであり、そのマイナス思考が、かえってさまざまな病気を招くのだ。ガンも脳卒中も心臓病も、最大の原因がストレスなのは、いうまでもない。
高血圧はほっとくのが一番
松本 光正 (著)
講談社 (2014/4/22)
P4
虚血再潅流障害 [医学]
脳や心臓の動脈がつまっても、即座に梗塞になってしまうわけではありません。ですから、早いタイミングで血流を再開させてやると、梗塞を防ぐことができます。そのために、血栓の酵素で溶かしてやる(血栓溶解療法)、あるいは、カテーテルで血管を拡げてやる、という治療法がおこなわれます。血流を再開させることができたらめでたしめでたし、と思われるかもしれません。が、そうは問屋が卸しません。
再開通することによって、さらに細胞に障害が生じることがあるのです。それが、虚血再潅流障害です。
どうしてそのようなことが生じるのでしょう?再開通させると、それが目的なのですから当然なのですが、酸素が供給されるようになります。酸素が供給されると活性酸素の産生も増えて、その活性酸素が細胞障害をひきおこしてしまいます。
さらに悪いことに、低酸素によって痛んだミトコンドリアでは、活性酸素ができやすくなっています。
もう1つ、血流に乗って、白血球のような炎症細胞がやってきます。先に書いたように、炎症反応は、壊死の細胞を消化したり貪食したりするのに必要な反応なのですが、まちがえて正常な細胞にも障害をあたえてしまうこともあるのです。
昔は、血管を再開通させるような治療法はありませんでしたが、あたらしい治療法が開発されて、あらたな病態が生じたという例です。よかれと思ってしたことでも、予想外の副作用が生じてしまうことって、医学だけでなく、日常生活でもけっこうありがちなことかもしれません。
こわいもの知らずの病理学講義
仲野徹 (著)
晶文社 (2017/9/19)
P069
メンテナンスフリーのインプラントは無い [医学]
インプラント治療では、インプラント体を埋入して、骨と結合された後に上部構造を装着するわけですが、上部構造周囲に天然歯と同じようにプラーク(歯垢)が付くと、最近によってインプラント周囲炎を発症します。インプラント周囲炎とは、天然歯で言えば歯周病と同じと考えてよいものです。
~中略~
インプラント体が非自己であることがばれてしまう、つまりインプラント治療が失敗する原因は「炎症」か「過重負担」のどちらかです。~中略~
従って、インプラント治療を行なったら、一生これが非自己であると認識されないために、炎症や過重負担が生じないよう、細心の注意を払ってメンテナンスを行なうことが大切となるのです。
歯科大教授が明かす 本当に聞きたい! インプラントの話 角川SSC新書
矢島 安朝 (著)
角川マガジンズ(角川グループパブリッシング) (2013/3/9)
P40
歯科大教授が明かす 本当に聞きたい!インプラントの話 (角川SSC新書)
- 作者: 矢島 安朝
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2013/05/09
- メディア: Kindle版
脳卒中 [医学]
P113
脳卒中はわたしたちの社会で、最も人を無力にする病です。そして右脳より左脳のほうで、四倍以上の確率で脳卒中が起きており、言語障害の原因になっています。
P176
「脳卒中の後、六ヶ月以内にもとに戻らなかったら、永遠に回復しないでしょう!」 耳にたこができるほど、お医者さんがこう口にするのを聞いてきました。でも、どうかわたしを信じてください、これは本当じゃありません。
P314
脳卒中という言葉は、酸素を脳細胞に運んでいる血管に問題があることを指しており、基本的に二つのタイプがあります。
虚血性(きょけつせい)(住人注:脳梗塞)と出血性です。
全米脳卒中協会によれば、虚血性脳卒中は全体の脳卒中のほぼ八三パーセントを占めています。~中略~
出血性脳卒中は、血液が動脈から漏れて脳に流れ込むときに起こります。脳卒中全体の一七パーセントが出血性です。
ニューロンにとって、血液との直接的な接触は有害ですから、どんな血液の漏れ、あるいは動脈瘤(りゅう)の破裂も、脳に破壊的な影響を与えてしまいます。
奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき
ジル・ボルト テイラー (著), Jill Bolte Taylor (原著), 竹内 薫 (翻訳)
新潮社 (2012/3/28)
早期発見・早期治療すれば治るわけではない [医学]
近藤8住人注;近藤誠) ~前略 そしていまに至るまで、「胃切除をした方が生存期間が長くなる」という実証は出ていないんです。
~中略~
近藤 がんの9割は「末期発見・治療断念」「放置」が最も望ましいと思います。
固形がんの治療はあくまで、痛みが出てきたらそれを抑えたり、呼吸が苦しくなったら気道を広げる、などQOL(生活の質)を維持するためだけにやればいいと思いますよ。
別冊宝島2000号「がん治療」のウソ
別冊宝島編集部 (編集)
宝島社 (2013/4/22)
P115
別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2013/04/22
- メディア: 大型本
神が治し、医者が包帯を巻く [医学]
フランスの有名な外科医A・パレー(注1)は「神が治し、医者が包帯を巻く」といっています。
まさしく、そのとおりなんです。すなわち神とは、患者さんご自身の、内なる力なのです。われわれ医療人は、包帯を巻く、絆創膏をはってさしあげる、この仕事を間違いなくやるのが、務めなのです。
患者本位の病院改革
新村 明(著),藤田 真一(著)
朝日新聞社 (1990/06)
P25
医者が競うのは手術の速さじゃない [医学]
「医者が競うのは手術の速さじゃない。大事なのは、患者が回復するまでの速さだ」
「NO」から始めない生き方~先端医療で働く外科医の発想
加藤 友朗 (著)
ホーム社 (2013/1/25)
P141
「NO」から始めない生き方 先端医療で働く外科医の発想 (集英社文庫)
- 作者: 加藤 友朗
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2022/01/20
- メディア: 文庫
心因性疼痛 [医学]
私たちのからだに、何か異常な状態が発生したり、あるいは発生する可能性が生じた場合、その状態は、すべて痛みを訴える原因となり得る。
この異常な状態というのは、からだの中の、いかなる組織や器官に発生しようとも、痛みとして発現する可能性がある。このような痛みは、身体に異常が発生したための痛みという意味で「身体性疼痛」ともいわれている。 具体的には、外傷、炎症、血流障害、退行変性、腫瘍、代謝障害、などさまざまな原因によって痛みの発言することは、よく知られている。
したがって、このような状況下では、なんらかの痛みを訴えることは多い。しかし、このような異常状態がからだの中に発生したからといって、必ずしもすべての人が痛みを訴えるとは限らない。
訴える痛みの原因が、その人のからだの異常としては存在しなくとも、痛みは訴えられる。例えば、「体育の時間になると、足が痛くなる」など、体育に対する恐怖感、劣等感などが痛みの原因となっているものである。
この場合、足が痛いからといって足の治療をしたり、鎮痛薬を与えることは全く意味がないことであり、体育とのかかわり方にメスを入れない限り、すなわち、痛みの心因を除去しない限り痛みは治癒しない。このような痛みを「心因性疼痛」とよんでいる。
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)
P38
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る (ブルーバックス)
- 作者: 柳田 尚
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2022/05/10
- メディア: 新書
痛みの意味 [医学]
痛みの原因がからだに存在しないにもかかわらず痛みを訴える、心因性疼痛、精神疾患性疼痛(一三六ページ)、さらに、からだの異常が治癒した後にも痛みが持続する慢性痛(一〇五ページ)などには、まさに、警報信号としての意味は全く認められない。
種々さまざまな痛みのなかで、私たちにとって、警報信号とは考え難い痛みの方が、警報信号としての痛みよりは圧倒的に多い。
つまり、痛みというものは、そのほとんどは、私たちを苦しめ、悩ましつづけるだけの意味しか有していないのである。
しかも、いかなる場合でも気づかれないままに進行する心臓病にみられるような、痛みを伴わない重篤な疾患は、くらでも存在することを考え合わせると、「痛みは生体の警報信号である」という、一見、説得力のあるこの意味づけだけで、痛みというものを単純に割り切ってしまうことは、いかに空虚なものであるか、数々の臨床的事実によって、痛いほど重いしらされるのである。
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)
P59
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る (ブルーバックス)
- 作者: 柳田 尚
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2022/05/06
- メディア: 新書
掌蹠膿疱症 [医学]
掌蹠膿疱症は、いまだはっきりした原因がわかっていない病気である。手のひらと足の裏に、膿の水ぶくれが多発する。ビオチンン(ビタミンH)が効くという説もあるが、実際の有効率はそれほど高くない。
金属アレルギーの手足の症状と一見似ているところがあり、一方、掌蹠膿疱症の悪化因子の一つに金属アレルギーがあることも知られている。
~中略~
ただしはっきりいえることは、口の中の「衛生状態」がとても大きな影響をおよぼしているということである。
口腔内の衛生状態は全身性の疾患も引き起こす、いろいろな病気の母地だということを理解してほしい。
なぜ皮膚はかゆくなるのか
菊池 新(著)
PHP研究所 (2014/10/16)
P186
医師の良心 [医学]
医者は、慈愛の心をもって仕事をしなければいけない。名誉や利益を求めてはいけない。
重病で薬の効果がないとわかっていても、気休めかも知れないが薬を多く与えて安心させるべきである。病人を失望させたり、落胆させてはいけない。
養生訓 現代文
貝原 益軒 (著) , 森下 雅之 (翻訳)
原書房 (2002/05)
P175
心房細動リスク年齢 [医学]
2018年の人口統計では、60歳以上の国民の34.5%です。これは、4千万人強に相当します。
心房細動のすべて ――脳梗塞、認知症、心不全を招かないための12章
古川 哲史 (著)
新潮社 (2018/12/14)
P201
心房細動のすべて ――脳梗塞、認知症、心不全を招かないための12章 (新潮新書)
- 作者: 古川 哲史
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/12/14
- メディア: 新書
医師の志 [医学]
医者になる人は、まず志をたてる。ひろく人を救済するには、どのような人に対してでも誠心誠意とりかからないといけない。
医学を学び医術に精通すれば、無理にへつらったり、世間に求めなくても、人望は自然に得られる。そうすれば、かぎりなく幸せであろう。
自分の利益を求めるのを目的としたら、人を救う気持ちもなく信用もなくすであろう。
養生訓 現代文
貝原 益軒 (著) , 森下 雅之 (翻訳)
原書房 (2002/05)
P173
痛いかどうかは本人次第 [医学]
日常の診療の中で、注射のときに次のようなことによく遭遇する。非常に多くの患者に、一人の同じ医師が同じ方法で患者の同じ部位に、同じ注射器と針を使用し、薬の内容も量も全く同じものを注射した場合、患者が注射されたために感ずる痛みの反応は、その日によって多少の違いはあるかもしれないが、大体同じである。すなわち、平気で注射を受けている。
しかし、非常に多くの患者の中で一人だけ注射をするたびに「痛ーい!!」と大声をあげるようであれば、この人は普通の人よりも「知覚閾値」や「最小許容閾値」は低いと考えてもよさそうである。
そのことから、この人の訴える本来の痛みなるものは、大多数の人では、それほど気にならない痛み、あるいは、容易に耐えられる痛みであっても、この人にとっては非常にはげしい痛みとして認識している、と推察される。
感覚閾値も許容閾値も、暗示によって変化することが多い、例えば、「少しでも痛いと感じたらすぐに教えてください」と言えば、感覚閾値は低くなるし、「本当に痛いと感じたらその時になって教えてください」と言えば、感覚閾値は高くなる。「この痛みに耐えたらオリンピック選手になれる」などと、前もって情報を与えると、最大許容閾値は高くなる。
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)
P32
金属アレルギー [医学]
さて、金属アレルギーというと、ピアスなどで皮膚と金属が直接触れている部分がかぶれて炎症を起こす症状を思い浮かべる人が多いと思うが、これは「局所性金属アレルギー」のことである。
実は金属アレルギーにはもう一種類、「全身性金属アレルギー」というものがある。これは、食べ物や飲み物に含まれる金属、さらには歯科治療で埋め込まれた金歯や銀歯などや、骨折などの外科治療で埋め込まれたボルトの金属が溶け出して、体内を駆け巡って起こる症状である。
手のひらや足の裏に小さな水泡ができたり、痒疹と呼ばれる虫刺されのようなたくさんの皮膚のしこりやじんましん様の紅斑などができたりして、アトピーなどと誤診されることも多い疾患である。
もしあなたが慢性的な手足の湿疹や痒疹、じんましんなどで悩まされているならば、一度疑ってみたほうがいいかもしれない。かなり高い確率で金属アレルギーを起していると考えられるからだ。
なぜ皮膚はかゆくなるのか
菊池 新(著)
PHP研究所 (2014/10/16)
P129
平均値と正常値 [医学]
確かに平均値を取れば、だいたいこの辺が正常という値がありますけれど、それぞれの個体にとっての正常値は、必ずしも平均的正常値と一致するとは限らない。
臨床家というものは、その個体にとってどこが正常値なんだろうかという思考を、いつもどこかに持っていてほしい。
そうでないと、検査成績を治療していることになる。
今の医学はそうなっていますから、「果たしてこの検査成績が正常になってくることが、この人にとっていいのかな?」と考える習慣を持ってください。
~中略~
その藤島先生(住人注;元九州大学医学部内科学教授)に「血圧はどのくらいが、いちばんいいんですか?」って聞いたの。年を取ったら、だんだん血圧が上がってくるでしょ。
そしたら、「朝、目が覚めて、頭の気分がいいときの血圧を測ってください。それが、その人のいちばんいい血圧です」って。
やっぱり優れた臨床家が最終的に到達する結論はそういうことなんです。
神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治
(著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)
P063
ガンは老化現象 [医学]
私は、おおむねガンは老化現象だと考えている。健康な人でも、体内では毎日3000~4000個ほどのガンの芽が生まれている。ガン細胞は、免疫が正常に働いていればすぐに摘み取られ、大きくはならない。
しかし、免疫細胞の働きは、加齢によって衰える。年齢とともにガンになる人が増えるのは、当たり前なのだ。
~中略~
ある意味、元気で長生きだから、ガンになるともいえる。
私は、ガン告知も高血圧と同様、年齢という視点がすっぽり抜け落ちていると思う。
40代、50代なら働き盛りで、社会的責任も大きい。仕事や残される家族のことなど、死を自覚して初めて考えることも多いだろう。
しかし、80を過ぎて、告知の精神的ストレスと、手術や坑ガン剤などの辛い治療に耐える意味は、果たしてあるのだろうか?
高血圧はほっとくのが一番
松本 光正 (著)
講談社 (2014/4/22)
P129
誤嚥性肺炎 [医学]
人間が口から入れたものは、食道を通って胃に行きます。空気の場合だけ、気管を通って肺に流れるようになっています。これは自動的に判別しています。
しかし、判別が年齢によりうまくいかなくなってきます。1)すると本来は空気が通るべき道である気管に、食べ物や飲み物やつばが流れ、肺に向かってしまうのです(P190の図5)。そのままだと肺炎になってしまうため、むせて吐き出しそうとします。
筋力がしっかりある若い頃は、むせるほどではなく、咳を1,2回すれば食べ物などが排出されて正しいほうに流れていきます。けれども年を重ねると、押し出す力も弱くなるのです。2)
痰が多くなるのも、むせることと関係しています。 ~中略~
痰は汚いし吐かないほうがいいと思うかもしれませんが、痰を出すというのは大切なことなのです。高齢者が痰をうまく出せずに肺に入りっぱなしだと、肺炎を起こしてしまいます。
痰や食べ物が肺に入ってしまって肺炎になることを誤嚥性肺炎といいます。
誤嚥性肺炎では、昨日まで元気だった人が突然肺炎になって生死の境をさまよってしまうこともあるのですが、こうなると本人も家族もびっくりします。
老人の取扱説明書
平松 類 (著)
SBクリエイティブ (2017/9/6)
P189
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 864 円
痛みに人間性が出る [医学]
痛みを訴えてはいるが、食欲は旺盛であるというのであれば、食事中は、あまり痛みを意識していないか、あるいは、食欲を阻害しない程度の痛みであると推測してもよさそうである。
痛みのために、一睡もできないというのであれば、激しい痛みであると推測される。しかし、普段から、よく眠れない人であるならば、眠れないことが、この人の痛みに関与している可能性もある。
痛くて眠れないのか、眠れなくて痛いのかを明確に区別することもきわめて重要である。痛みを訴える側の人は、例外なく「痛くて眠れない」といういい方をするが、実情と違うことが多い。
足が痛いと訴えながらも、トイレには軽々と走っていくようであれば、その時点での訴えている足の痛みは、トイレに対する要求度よりも、小さいと推測できそうである。
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)
P20
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る (ブルーバックス)
- 作者: 柳田 尚
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2020/09/05
- メディア: 新書
慢性疼痛 [医学]
急性期の場合は、はげしく痛むときには種々さまざまな不安を伴う。「この痛みのために会社を休まなければならない」「そのために昇任が遅れるかもしれない」「娘の結婚式に出席できないのではないか」「もしかしたら死んでしまうのではないか」などと、その不安の内容は、その人の性格・体験・知識・おいたちなど、種々の因子によって異なり、現在から未来にかけての不安である。そして、現在の不安と未来への不安は、その内容が表裏一体であることが多い。
しかし、原因疾患の治癒にともない痛みも軽減してくると、今までの不安は一挙に解消し、あの激痛期に抱いた絶望感は、将来に対する希望と期待感に変わってゆく。
一方、慢性痛なるものは、常に一定した痛みだけをたんたんとして訴える。
~中略~
急性痛の場合、痛みの原因疾患が完治するまでのつなぎとして、いわゆる鎮痛薬がきわめて有効であるが、慢性痛には、いわゆる鎮痛薬の効果は全く無効である。
このように、慢性痛というのは、痛みだけが唯一無二の症状であるため、最近では「痛み症候群」という、一つの独立した疾患として扱われるようになった。
慢性痛は、私たちのからだを正常に維持するための警報信号としての意味は全くなく、ただただ、人間を苦しめるだけの痛みである。
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)
P110
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る (ブルーバックス)
- 作者: 柳田 尚
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2020/09/05
- メディア: 新書
第三の痛み [医学]
第一の痛みは、最初に感ずる瞬間的な「ショック」「驚き」であり、すぐそれに引きつづいて感ずる第二の痛みが、いわゆる「痛み」であると述べた。この第二の痛みは、机にぶつけたための膝の傷が、治療により、あるいは自然に治癒することにより、痛みもそれに伴って消失するものである。
しかしながら、傷が完全に治癒した後にも、痛みだけが長期にわたって存在することがある。
このような痛みを、筆者は「第三の痛み」とよんでいる。そして、この第三の痛みは「慢性痛」という痛みである。
第三の痛みは非常に厄介な痛みで、周囲の人にはわかりにくい痛みである。そして、このような長期におよぶ痛みであればあるほど、痛みの表現は、より複雑になり、抽象的な表現になりやすい。
例えば、「からだ全体がすっきりしないような痛み」「からだがもやもやしてくると痛む」「痛いというのではないが、なんだかわからないような痛み」などと、「痛い」という表現を使って、自分の悩みや苦しみを同時に訴えることが多い。そして、自分の訴える痛みが相手によく理解されないために、ますます複雑で、その時その時の訴える内容が矛盾するような表現となる傾向が認められる。
「痛い」という表現には、痛み以外の感覚を例にとるならば、二度と口にしたくない味覚、聞きたくない聴覚、決して見たくない視覚などのように、現状に対する否定と、現状から脱却したいという逃避の願望がこめられており、その手段として、「痛い」という表現を使うことが多い。
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)
P28
自然治癒力 [医学]
痛みとは [医学]
鐘楼の鐘は、下からロープを引くとなる。弱く引くと小さな鐘の音が、強く引くと大きな鐘の音がなる。ロープを切ると、そのロープを引いても鐘はならない。
痛みは、この鐘楼の鐘の音のように考えられ、そして痛みに対するこのような考え方が根強く定着してから久しい。すなわち、ロープを引くことが痛み刺激、ロープが神経、鐘が痛みの中枢、鐘の音色が痛みの性質、鐘の音の大きさが痛みの強さである。
しかしながら、痛みの現実は、ロープに手をふれなくとも大きな鐘の音がなりひびいたり、ロープをそっと引いても大きな鐘の音となったり、ロープを切っても鐘だけがなりつづけることも、決してまれなことではない。
むしろ、このような痛みに、多くの人たちは悩み苦しんでいる。その意味で、3百年以上の間、痛みのすべてを鐘楼の鐘として定着させてきたこの考え方は誤りといえる。
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)
まえがき
認知症のきっかけ [医学]
先生は、お年よりは大きな痛みとか精神的なショックをきっかけに認知症になることがある、と言うのね。
いまふり返ると、たしかにその通りでした。この日の骨折と手術をけっかけに母の認知症が始まって、本当の意味での介護が始まったんです。
綾戸知恵
40歳の教科書NEXT──自分の人生を見つめなおす ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編
モーニング編集部 (編集), 朝日新聞社 (編集)
講談社 (2011/4/22)
P159
40歳の教科書NEXT──自分の人生を見つめなおす ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編
- 作者:
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/04/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
胃ろうの医学的根拠 [医学]
国内で胃ろうを作った人の予後の追跡調査はほとんどなく、生存率やQOL(生活の質)を改善するという医学的根拠はない。
欧米では、回復するまでのつなぎとして評価する声がある一方、必ずしも期待した効果が得られるとは限らないとする調査結果も多い。
米国のメディケア(高齢者対象公的医療保険)を受給する胃ろう患者8万人余を対象にした調査では、術後30日の死亡率が約24%、1年が63%と高く、早期死亡が多いことが判明、「高度認知障害の人に胃ろうをつくっても生存率やQOLは改善しない」
「嚥下障害の人を胃ろうにしても誤えんを防げない」との報告もある。国内と欧米ではケアのあり方が異なるため、国内の実態調査を求める声は根強い。
大切な人をどう看取るのか――終末期医療とグリーフケア
信濃毎日新聞社文化部 (著)
岩波書店 (2010/3/31)
P52
こころの病 [医学]
うつと向き合う [医学]
P70
「うつとは”人が疲労しきった状態”のことである」
近年増加しているうつについて、私の答えはこのひと言に尽きます。
性格の問題ではありませんし、ましてや気合や根性の問題でもありません。ただひたすら疲労している。
下園壮太
P72
これは私の長い経験から断言できることですが、うつになりやすいのは「心の弱い人」ではありません。
むしろ「心の強い人」こそ、うつになってしまうのです。
心の強い人は、少しくらい苦しいことがあっても休もうとしません。自分お強さを信じて、気合や根性で乗り越えようとします。
~中略~
また、心が強い人は他者に助けを求めるのが苦手です。
~中略~
ところが、そうやって自分で自分を追い込み、蓄積疲労が限界に達すると、緊張の糸がプツッっときれるようにして、うつ状態になってしまいます。
P85
うつは(住人注;「心の風邪」でなく)「心の骨折」であり、再び全力でプレーできるようになるには1シーズン単位でのリハビリが必要になります。骨がくっつかないままグラウンドに出ても、また周囲に迷惑をかけるだけですからね。
下園壮太
40歳の教科書NEXT──自分の人生を見つめなおす ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編
モーニング編集部 (編集), 朝日新聞社 (編集)
講談社 (2011/4/22)
40歳の教科書NEXT──自分の人生を見つめなおす ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編
- 作者:
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/04/22
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