宵越しの銭を持たない [処世]
落語「三方一両損」には<江戸っ子の生まれぞこない金をため>という川柳が出てくる。この噺、金太郎という神田白壁町の左官が、柳原(現在の秋葉原近く)で財布を拾ったところから始まる。
~中略~
一方、金太郎は大岡越前から、「なぜ吉五郎の申し出を受けないのか」と問われ、
「冗談言っちゃいけねえ」と怒り出す。「たった三両の金をネコババするようなしみったれな了見だったら、今ごろ棟梁に出世している」と言う。
「どうか出世するような災難には遭いたくねえ」と、毎日金比羅さまを拝んでいるというのである。誰もが欲しがる「金と出世」を回避するのが江戸っ子なのである。
~中略~
「金離れがよい」とは、金銭に執着しないという意味だ。金銭を稼がないという意味ではなく、金銭を大事にしないということでもなく、ありがたく思わない、という心持ちでもない。
払うべき金は決して惜しんだりせずに払う、そしていったん自分と縁がなくなったら深追いはしない、というのだ。このような考え方なら、すでに江戸時代中期の、「江戸っ子」概念の成立期に見られる。
田中 優子 (著)
江戸っ子はなぜ宵越しの銭を持たないのか? 落語でひもとくニッポンのしきたり
小学館 (2010/6/1)
P10
江戸っ子はなぜ宵越しの銭を持たないのか? 落語でひもとくニッポンのしきたり (小学館101新書)
- 作者: 田中 優子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/06/01
- メディア: 単行本
名護屋城跡3
人でなく人間でないと生きられない [処世]
お互い様なんだから [処世]
年上の医師は、その近所で始めた年下の医師をライバル視せずに、息子として受け入れるべきである。かつて開業したての若い頃、皆さんが年配の開業医にしたことが起るかもしれない。
つまり、年下の医師は皆さんの患者を多数奪うことになるかもしれないが、皆さんのほうでそれは避けられない、已むを得ない、これが世間の通例なのだと悟るならば、しかも最初に起った微妙な行き違いを好意的な態度で話し合うだけの度量を持ち合わせているならば、障害はなくなり、二度と同じような事態を迎えずにすむことであろう。反面、若い医師のほうも年配の医師の気持を十分に酌み、その判断に敬意を表し、相談に乗ってもらう態度をとるべきである。~中略~
医者の風上にも置けないという悪評を受けている医師や、悪影響を及ぼす者の見本と思われている医師も、本当は善良な人間であり、つまらない嫉妬の犠牲者であって、対立派の攻撃の的にされたにすぎないかもしれない。付き合ってみると、彼は愛妻家で子煩悩であり、さらに彼に心を寄せ尊敬する人たちがいることが判明するかもしれない。
要は心の持ち方次第であり、それが協調を図るための何よりも重要な要素である。
平静の心―オスラー博士講演集
ウィリアム・オスラー (著), William Osler (著), 日野原 重明 (翻訳), 仁木 久恵 (翻訳)
医学書院; 新訂増補版 (2003/9/1)
P413
学者馬鹿になるな [処世]
この人物は、礼儀も知らなければ、ものの言い方ひとつ知らない、いわゆる「学者馬鹿」だった。
~中略~
なぜだかわかるか。本ばかり読んでいて、人と付き合うことをしなかったからだ。
学問には詳しいが、人間についてまるで無知だからだ。
~中略~
世間知らずのふりかざす理論は、世の中は、そう型通りに進むものではないということを知っている人間を消耗させる。
~中略~
私は、それはそれで立派だと思う。ただし困るのは、実際に人間を観察したことも、付き合ったこともないので、世の中にはいろんな人間がいること、いろんな慣習、偏見、嗜好があること、そしてそれらをひっくるめたうえで、一人の人間が存在するということが、皆目わかっていないことだ。
要するに、実際の人間のことには、まるっきり無知だということだ。
父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章
フィリップ・チェスターフィールド (著), 竹内 均 (翻訳)
三笠書房 (2011/3/22)
P123
父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2011/03/22
- メディア: 文庫
琵琶湖汽船竹生島行き観光船
信用は信念から生まれる [処世]
信用は信念から生まれる。信用は暖簾や概観の設備だけで、収め得られるものではなく、確乎たる信念から生ずるものである。
「渋沢栄一訓言集」座右銘と家訓
渋澤 健 (著)
巨人・渋沢栄一の「富を築く100の教え」
講談社 (2007/4/19)
P40
十日恵比須神社 福岡市東区
天下の大勢は、必ず正に帰せん、公に帰する [処世]
従来天下の大勢は、門望と名文に帰せずして、必ず正に帰せん、私に帰せずして公に帰するや必せり、何ぞ又、毫も疑を存せんや
勝海舟 (中公新書 158 維新前夜の群像 3)
松浦 玲 (著)
中央公論新社 (1968/04)
P156
勝海舟―維新前夜の群像3 (中公新書 158 維新前夜の群像 3)
- 作者: 松浦 玲
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2020/09/16
- メディア: 新書
魅せる工夫 [処世]
事実より空気 [処世]
戦況は、わずかに薩長に優勢であった。
が、勝利とはいえない。ところがほどなく薩摩藩の騎馬伝令が御所にかけこみ、
「お味方の勝利」
ということばをわめきまわったために、御所の空気が一変した。
~中略~
「勝てば官軍」
ということばどおり、私戦が、このきわめて不確かな戦勝の報によって公戦になり、薩長は官軍になった。
翌四日の戦闘は、徳川方の優勢のうちに日没をむかえた。さらに五日早暁、薩長は、自分たちが官軍であるという証拠をみせるために錦旗を淀
川の北岸にかかげた。
「錦旗がでた」
という報は、すぐ大坂に達した。六日夜、徳川慶喜が大阪城を脱出したのは主としてこのためであった。慶喜がやぶれたのは、戦闘よりも政略であったであろう。
花神 (下巻)
司馬 遼太郎 (著)
新潮社; 改版 (1976/08)
P231
モノ言う権利 [処世]
「われわれは、迫害されたが故に人類に対して何らかの発言権があると思ってはならない」。私は絶えず同胞にこのように言う。
だがこの言葉はちょうど日本人に「唯一の 原爆被爆国なるが故に、世界に向かって何らかの発言権があると思ってはならない」というのと同じであって、中々うけ入れられず、時には強い反発をうける。
もちろん、ユダ ヤ人に対してこう言う権利があるのはユダヤ人だけであり、また同様に、日本人に対して前記の言葉を口にしうる権利があるのは日本人だけであるから、私は、その言葉は、 口にしようとは思わない。
日本人とユダヤ人
イザヤ・ベンダサン (著), Isaiah Ben-Dasan (著)
角川書店 (1971/09)
P185
愛嬌 [処世]
愛嬌というのはね、自分より強いものを倒す
軟らかい武器だよ。
[夏目漱石] 英文学者・小説家 | 1867-1916,/P>
愛されたいなら、愛し、愛らしくあれ。
[ベンジャミン・フランクリン] 米国の政治家 | 1706-1790
最も良い説得方法の一つは、
相手に気に入られることである。
[カリエール] フランスの外交官 | 1645-1717
人生はワンチャンス! ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法
水野敬也
(著), 長沼直樹 (著)
文響社 (2012/12/11)
53
人生はワンチャンス!- 「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法 人生は~シリーズ
- 出版社/メーカー: ミズノオフィス
- 発売日: 2013/07/05
- メディア: Kindle版
思い通りに動くのは自分だけ [処世]
私たちは環境に自らを合わせなければならない。
他人様が自分の思い通りに動くなどと期待してはならない。
デール・カーネギー 著
田中 孝顕 訳
こうすれば必ず人は動く
騎虎書房
P280
堪忍すれば今日も極楽 [処世]
スルー力 [処世]
イライラしないために必要な「スルー力」とは、次のようなものです。
「相手のことを理解はするけど、同意はしない」
これは、少なくとも相手が怒っている理由は理解をするが、自分はそうは思わない、自分と考え方が違うのだな、と自然に考えられることです。
イラッとしない思考術
安藤 俊介 (著)
ベストセラーズ (2014/11/26)
P209
イラっとしたら [処世]
郷に入っては郷に従え [処世]
礼儀作法は、理性や分別では説明できないもの、偶然でき上がったものであることは否めない。けれど、それがそこに厳然とある以上、それに従うべきだろう。
王や皇帝に対する礼儀のことだけを言っているのではない。
あらゆる階級の中に、慣習のようなものがあるだろう。それには従ったほうがいい。
父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章
フィリップ・チェスターフィールド (著), 竹内 均 (翻訳)
三笠書房 (2011/3/22)
P104
父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2011/03/22
- メディア: 文庫
商人の道 [処世]
その場合の”富の主人(あるじ)”は誰かというと、世の中の人々である。買う側と売る側という立場の違いはあっても、、主人も商人自分も互いの心に違いはないのだから、一銭を惜しむ自分が気持ちから推し量って、売り物の商品は大切に考え、決して粗末に扱わずに売り渡すことだ。そうすれば、買った人も、最初のうちは金が惜しいと思うようなことがあっても、商品のよさが次第にわかってくると、金を惜しむ気持ちはいつの間にかなくなるはず。
~中略~
いわずもがなのことであるが、商人は、国の法をよく守り、わが身をよく慎まなければならない。商人といえども、人としての道を知らずに金儲けをし、しかも不義の金を儲けるようなことがあっては、やがては子孫が絶える結果を招きかねない。心底から子々孫々を愛する気持ちがあるなら、まず人としての正しい道を学んで家業が栄えるようにするべきであろう。
石田梅岩『都鄙問答』 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ14)
石田梅岩 (著), 城島明彦 (翻訳)
致知出版社 (2016/9/29)
P63
「寿福増長」を達成する条件は「衆人愛敬」 [処世]
P199
あまり及ばぬ風体のみなれば、また諸人の褒美欠けたり。
このために、能に初心を忘れずして、時に応じ、所によりて、おろかなる眼にもげにもと思うやうに能をせん事、これ寿福なり。
よくよくこの風俗の極めを見るに、貴所・山寺・田舎・遠国、諸社の祭礼に至るまで、おしなべてそしりを得ざらんを、寿福達人の為手とは申すべきをや。
されば、いかなる上手なりとも、衆人愛敬欠けたる所あらむをば、寿福増長の為手とは申しがたし。
あまりに高踏的な芸風ばかりであっては、やはりすべての人の賞賛を獲得できない。
このために、これまで演じてきた演目を忘れずにいて、時と場所に応じて、鑑識眼の低い観客でもすばらしいと思うように能を演じることこそが、福徳なのである。
よくよく役者の芸力と人気との究極的なあり方を考えるに、貴人の御前や山寺、田舎遠国、諸国の神社の祭礼にいたるまで、あらゆる場所での演能で、つねに悪評を蒙らない者を、福徳のある達人の役者というべきではなかろうか。
したがって、どんなに上手であっても、多くの人に愛され親しまれるという点で欠けたところのあるような役者を、福徳を招く達人とはいいがたいのである。
世阿弥 (著), 竹本 幹夫 (翻訳)
風姿花伝・三道 現代語訳付き
角川学芸出版 (2009/9/25)
正論には旬がある [処世]
高杉の問いに答え、松陰はさらにつづけてこういっている。
「藩の役人になって、もし藩公のおそば近くに仕えるようにでもなれば、よく精励してその御心を得よ。御信頼を得てから、正義正論を主張せよ」
このことは松陰一代で骨身に徹して知っている。
「御心を得て正義正論を主張してもなおかつ、禍敗がやってくる。きっとしりぞけられる。
しりぞけられれば淡々として隠退せよ。そして隠退中は人に感謝する心をもち、学問をおさめよ。
そのようにして十年たてば、かならず時が来る。大忠を立つべき日がくる。
もし不幸にしてそういう時期が到来しなくても老兄は歴史上の不朽の人になりうる。
くれぐれも私をまねて、軽怱(かるはずみ)をするな」
世に棲む日日〈2〉
司馬 遼太郎 (著)
文藝春秋; 新装版 (2003/03)
P161
経験から学べ [処世]
過去の経験を重ね合わせ、組み合わせれば、
どんな問題に直面しようと解答は得られる。
経験から学んだことをおろそかにしてはならない。
橋本 保雄 (著)
感動を与えるサービスの神髄―ホテルオークラを築いた人間(おとこ)の経営学
大和出版 (1999/09)
P61
感動を与えるサービスの神髄―ホテルオークラを築いた人間(おとこ)の経営学
- 作者: 橋本 保雄
- 出版社/メーカー: 大和出版
- 発売日: 2020/02/06
- メディア: 単行本
弱者の武器は「知恵」である [処世]
ビジネスの世界は、ゼロからスタートした弱者が、条件に恵まれた強者を倒してきた歴史だといえる。
弱者の武器は、必ず「知恵」である。
若松 義人 (著)
貧乏トヨタの改善実行術 カネがないなら知恵を出せ
大和書房 (2007/03)
P23
貧乏トヨタの改善実行術 カネがないなら知恵を出せ (だいわ文庫)
- 作者: 若松 義人
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2007/03
- メディア: 文庫
刺激に反応してしまう [処世]
実は、私たちの日常は「心の反応」で作られているといっても、過言ではないのです。
たとえば、朝の通勤ラッシュで「今日も混んでいるな」とゲンナリする。これは、心を憂鬱にさせる反応です。心ない相手の態度にイラッとする。これは、怒りを生む反応です。
大事な場面で「失敗するかもしれない」と、マイナスの想像をしてしまう。これは、不安や緊張を生みだす反応です。人と会うときも、仕事をしているときも、外を歩いているときも―心は、いつも反応しています。
その結果として、日ごろのイライラや、落ち込みや、先ゆきへの不安やプレッシャー、「失敗してしまった」という苦い後悔などの”悩み”が生まれます。
というのは、悩みの始まりには、きまって”心の反応” があるのです。
心がつい動いてしまうこと―それが悩みを作り出している”たった一つのこと”なのです。
だとすれば、すべての悩みを根本的に解決できる方法があります。それは―”ムダな反応をしない”ことです。
反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
草薙龍瞬 (著)
KADOKAWA/中経出版 (2015/7/31)
P2
人事を尽くして天命を待つ [処世]
天の機関は測られず。抑えて伸べ、伸べて抑う。
皆これ英雄を播弄( はろう )し、豪傑を顛倒する処なり。
君子は只だこれ逆に来たれば順に受け、安きに居りて危うきを思う。
天もまたその伎倆( ぎりょう )を用うる所なし。
洪自誠
守屋 洋 (著), 守屋淳 (著)
菜根譚の名言 ベスト100
PHP研究所 (2007/7/14)
P197
天の意思は、予測することができない。試練を与えるかと思えば栄達を保証し、
栄達を保証するかと思えば、今度はまた試練をくだす。
これにはさすがの英雄豪傑たちも振り回されたり、つまづいたりしてきた。
しかし、君子は逆境に突き落とされても甘んじでしたがい、平穏無事なときにも有事のさいの備えを忘れない。
だから、さすがの天も腕の振るいようがないのである。
自由と我儘との界 [処世]
学問をするには分限を知ること肝要なり。
人の天然生まれ附きは、繋がれず縛られず、一人前の男は男、一人前の女は女にて、自由自在なる者なれども、
ただ自由自在とのみ唱えて分限を知らざれば我儘放蕩に陥ること多し。
即ちその分限とは、天の道理に基づき人の情に従い、他人の妨げをなさずして我一身の自由を達することなり。
自由と我儘との界は、他人の妨げをなすとなさざるとの間にあり。
福沢 諭吉 (著)
学問のすすめ
岩波書店; 改版版 (1978/01)
P14 学問のすゝめ 初編
喜んで支払えば、お金は入ってくる [処世]
クヨクヨ、グズグズ、イヤイヤ支払う。
出し惜しみして、渋面つくって支払われたら、
相手も買われた品物も面白くない。
ケチな人間には、ケチなようにしか周りは動いてくれない。
丸山 敏秋 (著), 倫理研究所
幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝
近代出版社 (2001/11)
P24
文部科学省生涯学習政策局認可の社会教育団体で、全国に五十万人を超える会員をもつ団体、社団法人倫理研究所。その創始者である丸山敏雄が唱えた、生活の法則と幸せの法則、彼の人と生涯、思考・美学・感性などをまとめる。