政治的な自然保護 [社会]
「自然保護」というのは人類の歴史の中でそんなに古い概念ではない。というのは人類の歴史の中で、その99パーセント以上は狩猟生活をしていて、人類も自然の一部であったからだ。
積極的に「自然保護」を唱え始めたのは、二〇世紀の後半になってからだ。今では正義の御旗になっている
~中略~
一九七〇年にWWFの勧告により、国立公園に指定されたペルーのマヌー国立公園の中には、先住民が住んでいた。ここの先住民は長年森を壊すことなく、森と調和して生きてきた人々だ。
常識的には、彼らこそが優先的に自然保護の恩恵にあずかるべきだ。
ところがペルー政府は「先住民は国立公園外に出て行ってもらう」ことによってアマゾンの中でも特に多様で豊かな自然を守ることにした。
~中略~
WWFやペルー政府は「ここに一つ、人類の貴重な遺産が確保された」と言って手放しで喜んでいる。ユネスコの世界遺産にも登録された。
しかし、その裏では先住民たちの苦悩が続いている。
関野 吉晴 (著)
グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇
筑摩書房 (2003/03)
P96
グレートジャーニー ――地球を這う〈1〉南米アラスカ篇 (ちくま新書)
- 作者: 関野吉晴
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/10/31
- メディア: Kindle版
グレートジャーニー ――地球を這う〈1〉南米アラスカ篇 (ちくま新書)
- 作者: 関野吉晴
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/10/31
- メディア: Kindle版
「エコ」じゃなく「エシカル」かどうか [社会]
地デジのせいで、列島の何台のテレビが捨てられただろうか。
政府は「地球温暖化防止」という旗を振りつつ、こんな地球に優しくない愚策も同時に進めている。首をかしげる。
自動車業界も、「エコ替え」などと言って、買い替えブームを演出しようと懸命である。
しかし、ハイブリッド車を「これで二酸化炭素削減!」と宣伝するのはやりすぎだ。
~中略~
これからは「エコ」じゃなく「エシカル(論理的)」かどうかで企業を選ぶことをお勧めする。
かわいこちゃんが出てきていいことばかり言うコマーシャルだけ見てても、それはわからない。企業のウェブサイトや商品サイトを、目を皿のようにしてチェックして、都合の悪い情報も公開しているか見るべきだ。
気になる科学 (調べて、悩んで、考える)
元村有希子 (著)
毎日新聞社 (2012/12/21)
P82
選挙と世代間の利害対立 [社会]
投票率と年齢構成から、投票者の年齢階級別の構成比を計算してみると興味深いことがわかる(図Ⅱ‐7)。投票者の年齢構成の変化は、日本で政治的に力をもった年齢集団の変化を表している。
~中略~
つまり、常に団塊の世代が、政治の動向を決めてきたと言える。人口規模の大きな団塊世代は、自らの政治的な力の大きさをよく知っていたからこそ、高い投票率を維持してたのだろう。
競争と公平感―市場経済の本当のメリット
大竹 文雄 (著)
中央公論新社 (2010/3/1)
P153
芳一堂赤間神宮
貧困スパイラル [社会]
低賃金→購買力衰退→低価格品に依存→安い開発輸入品が国内市場を席巻→賃金下落の加速→生活者はいつもいつも「もっと安いもの」を求めて奔走せざるをえなくなる→さらなる貧窮化へ。
この循環を「貧困スパイラル」と筆者は読んできた。
内橋 克人 (著)
共生経済が始まる 世界恐慌を生き抜く道
朝日新聞出版 (2009/3/19)
P242
西大寺本堂2
資源ナショナリズム [社会]
自然資源も、水も、農林水産業も、医療も、教育も、全部市場に委ねる。そうすれば間違いなく超少子化・高齢化社会でも経済成長は可能です。森林や水源が私有地になり、TPPで自営農が壊滅して、アメリカ型の大規模モノカルチャーになり、医療も教育も全部が商品化して値札がつき、自治体もアメリカのサンデイ・スプリングス市のように富裕層向けに再編されるようになれば、日本だってぐいぐい経済成長します。
日本は成熟社会・定常社会に向けて自然過程を歩んでいます。
これを無理強いして経済成長させようとすることは、われわれが公共的に所有し、次世代に無傷で伝えなければならない国民資源に手を付けることなしには果たせません。未来の日本国民たちが、僕たちが今無償で享受しているものをお金を出して買わなければならない状態にすることでしか成長できません。
~中略~
今の日本の指導層はもう国益のためには働いていません。未来の日本人のことなんかもちろん考えていない。考えていたら、原発の再稼働なんて思いつくはずがない。国益よりも自分たちの個人的な利益や個人的な欲望充足を優先している人たちが国の方針決定している。
最終講義 生き延びるための七講
内田 樹 (著)
文藝春秋 (2015/6/10)br />P378
国に寄りかかるな [社会]
この国に生きていて、一番の権威は国家の言質(げんち)ですが、それを鵜呑みにしてはいないか。
じつは、このことに対して、私は中学一年(十三歳)の朝鮮半島からの引き上げ体験から学んだことがあります。国の言うことに従って生きていたら、大変なことになる。つまり国に寄りかかっていたら、生き延びられないということでした。
当時、父が現地の師範学校に奉職していたため、私は昭和二十年の夏を平壌(ピョンヤン)で迎えました。八月十五日、天皇の玉音放送がある前から、現地の日本人社会の上層部の家族たちは、インサイダーのニュースとして、ポツダム宣言の受諾をしっていたのでしょう。平壌駅は荷物を山積みして南下する家族でごったがえしていたといいます。
敗戦直後、現地の日本人の一般市民には、ラジオ放送でくり返し、お上(かみ)からの声が流されました。
「治安は維持される。一般人は軽挙妄動(けいきょもうどう)することなく現地に留まるように」
情報をもっている政府要人の家族や、利口なグループは、ここにいては危ないといち早く察知して、さっさと列車に乗って、ソウルの方に南下していきました。あとに取り残されたのは、政府の言うことに従っていれば間違いないと、愚直に信じたふつうの日本人だけです。
国家にひたすら寄りかかっていた私たちは、やがて進行してきた。ソ連軍にすべてを奪われて、難民となり、地獄の日々を体験したのです。私が、そのお体験からつくづく思うことは、国という権威は、何でもできるということです。
人の命を、紙切れ一枚で戦地に引っ張り出すこともできるし、植民地に残された国民が、悲惨な状況に陥(おちい)ることが当然わかっていても、大丈夫だと言って放置する。
百歳人生を生きるヒント
五木 寛之 (著)
日本経済新聞出版社 (2017/12/21)
P82
流行というもの [社会]
人々がご丁寧にも追いかけている流行は、ぜいたく者や浪費壁のある連中が仕掛けたものだ。―「森の生活」
ソロー語録
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(著), 岩政 伸治 (翻訳)
文遊社 (2009/10)
P87
関係性の回復 [社会]
「関係性」という言葉で私が言いたいのは、人間と人間の間に生じる相互的な心の交流なのである。
親子関係、師弟関係、夫婦関係など、そこに一応の「関係」はあるとしても、私の言っているような深い「関係性」は失われていることが多く、そのために多くの問題が生じていると思われる
。
インターネット書き込みには、「関係性」の喪失の上に立ってなされるので問題が多い。
~中略~
そこで大切なことは、片方で文明のもたらすいろいろな便利さを享受しつつ、それだけに頼ることによって生じる「関係性の喪失」をいかにして防ぐかということであろう。
そのためには、あらゆる人間関係における「関係性の回復」を心がけることが必要である。
そのような関係性によって保証されている限り、インターネットなどを使っていても、すぐに「切れる」ということは生じないであろう。
文明の進歩をほんとうに享受しようとするためには、相当な努力が必要なのである。
(二〇〇四年六月 東京新聞)河合 隼雄
心理療法個人授業
河合 隼雄 (著), 南 伸坊 (著)
新潮社 (2004/08)
P223
科学ジャーナリズムにできること [社会]
科学ジャーナリズムが、本来の役割を自覚し発揮し始めるのは七〇年代以降だと私は考えている。
日本では、大阪万博(七〇年)を境に、科学技術への不信が芽生え始めた。公害など科学物質による健康被害や環境破壊、薬害、地球温暖化、脳死や生命倫理の問題。
科学技術の成果より「負」の側面に、国民の目が集まるようになった。
原子力で言えば、七九年の米スリーマイル島原発事故と八六年のチェルノブイリ原発事故。九五年には日本でも高速増殖炉「もんじゅ」の火災で情報隠しが発覚した。九九年には核燃料製造会社「JCO」で臨界事故が起き、二人の死者を出した。
原子力は危ない、取り扱いを電力会社と当局だけに任せておいてはいけない、という懐疑的な見方を科学ジャーナリズムは報じたし、社会にも伝わったと思う。事実、この事故をきっかけに、原子力安全・保安院が発足したのだ。
しかし福島第一原発の事故は起きた。放射能はもれ続け、水や土や、その産物である農作物を汚染した。コメや牛肉へも拡大が心配されている。放射能を避けて家を追われた人たちが、いつ戻れるかめどが立たない。
こんな中、科学ジャーナリズムにできることは何だろう。事故を防げなかったことへの後悔はむろん、原子炉の把握状況と、すぐに不具合を起こす頼りないシステムのお守りに追われる日々の中で、悩みは深まる一方なのだ。
気になる科学 (調べて、悩んで、考える)
元村有希子 (著)
毎日新聞社 (2012/12/21)
P216
悲しいけど人間はごまかす [社会]
不正が社会的感染をとおして人から人へと伝わるという考えは、不正を減らすにはいまとは違う手法が必要だということを示唆している。
わたしたちはささいな違反行為を、文字どおりささいで無害なものと考えがちだ。しかし、微罪は、それ自体とるに足りなくても、一人の個人や大勢の人、また集団のなかに積み重なるうちに、もっと大きな不正をしても大丈夫だというシグナルを発するようになる。この観点から言うと、個々の逸脱行為がおよぼす影響が、一つの不正行為という枠を超え得ることを認識する必要がある。
不正は人を介して伝わるため、ゆっくりと気づかれずに社会を浸食していく。「ウィルス」が人から人へと変異しながら感染するうちに、倫理性の低い新たな行動規範が生まれる。このプロセスは目立たず緩慢だが、最終的に破滅的な結果を招くことがある。
これが、どんなにささいなものであれ、ごまかしがもたらす真のコストなのだ。だからこそ、ほんの小さなものも含め、あらゆる違反行為を減らすとりくみを、ますます気を引き締めて行わなくてはならない。
ずる―嘘とごまかしの行動経済学
ダン アリエリー (著), Dan Ariely (著), 櫻井 祐子 (翻訳)
早川書房 (2012/12/7)
P240
美を維持するにはお金がかかる [社会]
明治六年の暑い時期、東京の情勢が征韓論のために沸騰しはじめたころのことである。
反征韓論の立場にある大久保利通は東京の過熱した空気から脱すべく近畿地方の遊覧の旅に出かけた。
その京都滞在中、土地のものが陳情に来て、
「ご一新になってから京都の名称は荒れはてております。嵐山などはひどいもので」
と言い、なんとか金を出してもらいたい旨を懇願した。陳情者たちは旧幕時代にはこういうことはございませんでした、というのである。
大久保はこのころ欧州から帰ったばかりで、文明の政策をおこなうべく意気ごんでいた。
かれはおもに法制面から欧州諸国を見学し、法制をまねれば日本もいつかは欧州なみの文明に対することができるとおもっていたのだが、しかし、欧州諸国からその都市美や自然美の保存のためにいかに金をかけているかということまでは見て来なかった。この陳情を聞き、
(江戸幕府というのはそういう面にまで金をかけていたのか)
と内心よほど衝撃をうけ、政治とか文明とかいうものが決して単純なものではなさそうだということに気がついた。
街道をゆく (3)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1978/11)
P161
一乗寺
自覚的消費者 [社会]
生産者が生活費さえ賄うことができないような、また貧困に苦しむ第三世界から不当な安値で買い入れ、いわば略奪資源によって作られたものであれば、それがいかに破格の安値であろうと「わたしはかいません」と、そう意思表示のできる消費者のことです。
内橋 克人 (著)
共生経済が始まる 世界恐慌を生き抜く道
朝日新聞出版 (2009/3/19)
P61
政治の大本 [社会]
九 忠孝仁愛教化の道は政事の大本にして、万世に亘り宇宙に弥(わた)り易(か)ふ可からざるの要道也。
道は天地自然の物なれば、西洋と雖も決して別無し。
西郷隆盛「南洲翁遺訓」―ビキナーズ日本の思想
西郷 隆盛 (著), 猪飼 隆明 (翻訳)
角川学芸出版 (2007/04)
P37
西郷隆盛「南洲翁遺訓」―ビキナーズ日本の思想 (角川ソフィア文庫)
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 文庫
農具としてのハチ [社会]
工業化された近代農業のもとで、ハチたちの品種改良(住人注;スイカやメロン、イチゴなどの果実あるいは野菜を効率よく実らせるための授粉用ミツバチ)が急速に進められた。
効率よく授粉作業をこなすハチの品種が、一種の農具として極端なまでに均一化された。生物学的にみると非常に危険な状況である。
均一な系は、ちょっとした病気や変化によってたちまち破錠をきたす。
>>>コロニー崩壊症候群(CCD)
福岡 伸一 (著)
ルリボシカミキリの青
文藝春秋 (2010/4/23)
P224
出生率の減少 [社会]
おそらく問題は、政府が考えているように身体的・時間的・金銭的な負担なるのではないと私は思う。
むしろ、心理的な要因が、子を持つことを控えさせているのではないだろうか。
乱暴な表現だが、若いカップルにとってそれは「誰かについて全面的に責任を引き受けることへの恐怖」とでも表現できるのかもしれない。あるいは、「自分たちが依存される対象となることへの嫌悪」と言いかえても差支えないだろう。
自分たちは実に長期間にわたり、親のスネをかじってきた。単に経済面ではなく、心理面でも親子のきずなを頼りに生きてきた。
そういう者たちにとって、自分たちが誰かに関する責任を全面的に引き受けると言うのは、とてつもない心の重荷となる。その重荷が、子を産むことをためらわせる最大の原因なのだと推測される。
ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊
正高 信男 (著)
中央公論新社 (2003/09)
P173
金剛輪寺 黒門
マツ林は凶器になる [社会]
「この通り、マツ林があったところは住宅が破壊されています。マツがなかったところのほうがかえって住宅が残っている。
マツ林はかえって危険。巨大津波ではマツは根こそぎ抜けて流され、人や住宅に襲いかかるのだという。現場を踏むと、それまでの固定観念がガラガラと崩れることがある。まさに目からウロコだった。
陸前高田の「奇跡の一本松」をテレビでみた時、海岸のマツたちが身を挺して町を守ってくれたとの印象をもったが、ものはもっと深く考えたほうがいいらしい。
陸前高田の高田松原は、江戸前期の一六六七(寛文七)年に地元の豪農菅野杢之助らが植林をはじめたものだ。たしかに明治・昭和の三陸津波、チリ地震津波の被害を防いだが、「マツが津波から町を守る」というのはわずか一〇〇年の時間で見た歴史の知恵にすぎない。
「奇跡の一本松」はマツが防潮の役割を果たせなかったことの象徴でもある。
津波が一〇メートルを超える巨大津波になるとマツ林は凶器になる。
天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2014/11/21)
P187
税抜き価格VS税込み総額 [社会]
ハーバード大学のチェティ教授らは、価格表示の方法が売り上げに与える影響を調べるために興味深い実験を行った2。
アメリカのスーパーマーケットでは、価格は「税抜き価格」だけが表示されていて、会計の際に、売上税が上乗せされた金額が表示されて、支払うことになる。
彼らは、北部カリフォルニアのあるスーパーで、一部の商品について「税抜き価格」だけの値札に「税抜き価格+売上税=税込み総額」という値札を付け加えた。
この結果、この値札をつけた商品は、八パーセントも売り上げが低下したという。この地域の売上税の税率は七・三五七パーセントだったので、消費者は単なる税額の表示方法の変更を価格上昇と感じて、税額分だけ商品購入を減らしてしまったのである。
この結果は、消費者が売り上げ税率を知らないからもたらされたのではない。彼らの調査によれば、ほとんどの消費者は売上税の税率を知っていたという。
競争と公平感―市場経済の本当のメリット
大竹 文雄 (著)
中央公論新社 (2010/3/1)
P210
弱い結びつきの強さ [社会]
さて、これまでお話してきたコールマン(住人注;ジェームズ・コールマン)流のソーシャル・キャピタル論は、人と人の深い関係者がメリットをもたらす、という主張でした。
しかし、人と人のつながりというのはつねに深くあるべきなのでしょうか。たとえば「親友」と「ただの知り合い」を比べたら、つねに前者のほうがみなさんにメリットをもたらしてくれるのでしょうか。
実は、そうとも限らない、人と人の関係はそんなに単純ではないということを提唱し、実証してきたのが「関係性のソーシャル・ネットワーク」とでも呼ぶべき分野の研究者たちなのです。
この分野の礎となった研究者は、スタンフォード大学のマーク・グラノベッターです。~中略~ グラノベッターの論文タイトルは「Strength of Weak Ties(弱い結びつきの強さ)」といいます。
世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア
入山 章栄 (著)
英治出版 (2012/11/13)
P158
世界の経営学者はいま何を考えているのか ― 知られざるビジネスの知のフロンティア
- 作者: 入山章栄
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2014/09/01
- メディア: Kindle版
原発問題は解決していない [社会]
P20
早野 いまの時点(住人注;2014年8月)で明らかなのは、さまざまな調査や測定の結果、起きてしまった事故の規模にたいして、実際に人々がこうむった被ばく量はとても低かった、ということです。
とくに、内部被ばく(おもに食べ物や水によって、体内に放射線源を取り込んでしまったことによって起こる被ばく)に関しては、実際に測ってみたら当初想定したよりも、かなり軽いことがわかった。「もう、食べ物については心配しなくていいよ」と言えるレベルです。
糸井 福島県産の野菜や米なんかは、他の産地のものと比べても、全然大丈夫ってことですよね。
~中略~
糸井 あえて訊きますけど、例外があるとすれば?
早野 避難区域内の裏山に生えている野生のキノコや山菜を大量に食べたり、野生のイノシシを捕って丸ごと食べたりしなければ大丈夫・・・・あ、でもそれは流通してませんから、例外にさえなりませんね。
P21
早野 ただ、ここできちんと言っておきたいのは、「内部被ばくが軽かったということ」は、ぼくも心からよかったた思っているけれど、「もともと起こってしまった事故」は全然OKじゃない、ということ。こんなことは、想定外の規模であろうが未曾有の災害であろうが、そもそも絶対に起こしてはいけない。
防ぐチャンスはいろいろあったにもかかわらず、それを無視してきて、こんなことになってしまった。
~中略~
事故の後、さまざまな数値を測ってみたら、内部被ばくはそれほどひどくなかった。とくに避難区域外にいる人たちにとっては、まったく問題ないと言える状況になった。けれども、だからといって、そのもともとの事故からすべてがOK になったわけでは決してない、ということは明言しておきたい。大本の問題を含めて、まったく解決しているわけではない。
知ろうとすること。
早野 龍五 (著), 糸井 重里 (著)
新潮社 (2014/9/27)
村の鍛冶屋 [社会]
電気の地産地消 [社会]
飯田
秋田県民四〇万世帯は一世帯当たり二五万円、計一〇〇〇億円の光熱費を払っているのですが、そのお金はほぼすべて県外へ出ている。
さらにはそれはほとんど日本国外に出ていて、日本は年に二三兆円も海外に支払っている。
一方、秋田県の代表的な農産物である「あきたこまち」の売り上げも二〇一〇年は一〇〇〇億円です。
つまり、秋田県の人が普段なにげなく使う電気や暖房などで、あきたこまちの売り上げ全顎が県外に流出している。
しかし、いま秋田県に風力発電機を一〇〇〇基作る計画があって、その売電だけで約一〇〇〇億円の売り上げになる見込みです。
~中略~
鎌仲 原発に何千億円も融資している三菱や三井住友のような大銀行に貯金していると、それが結局は自分たちの首を絞める方向に投資されてゆく。
そういうお金の流れに気づいて、地域の小さな自然エネルギーをつくるベンチャー事業に投資する。お金が地域でいきていく。
飯田 地域はエネルギーを自給した上で、さらに余った電気を売ればいいのです。
対談 自然エネルギーの社会へ再起しよう
飯田哲也 (環境エネルギー政策研究所所長)
鎌仲ひとみ (映画監督)
世界 2011年 05月号
岩波書店; 月刊版 (2011/4/8)
P124
平尾台 千仏鍾乳洞5
医療費削減のもたらすもの [社会]
全国で一律に看護師の賃金が決められていると、大都市では他の代替的な仕事の賃金が高くなり、優秀な看護師を集めることが難しくなる。そこで、高賃金地域の病院は、賃金規制の対象外である派遣看護師をより多く雇うことになる。
派遣看護師は、常用看護師よりも当該病院内のことに詳しくない上、経験も少ないことが多い。このため、病院のパフォーマンスを引き下げる。
彼ら(住人注;ブリストル大学のホールとプロッパー、そしてロンドン大学のヴァン・リーネンの三氏)の研究によれば、地域で民間企業の女性の賃金と看護師の賃金の間の格差が一〇パーセント拡大すると、心臓発作による死亡率が五パーセント上昇するという。 この衝撃的な研究結果は、私たちにとって他人事(ひとごと)ではない。
日本の医療制度も診療報酬点数制度という規制体系のもとで運営されている。小児科医や産婦人科医が不足して大きな問題になっている。いわば、医師の報酬が規制されているために、医師の診療科目によって需給ギャップが発生しているのだ。
賃金規制をすることで、私たちはサービスの質の低下に直面している。実は、この問題は看護師や医師に限ったことではない。~中略~
警察官や教師の賃金が相対的に低くなると、代替的な仕事が多くある都市部では、警察官や教師の質が低下してくる。その結果、治安の悪化や教育の質の低下に直面するのは私たちだ。
競争と公平感―市場経済の本当のメリット
大竹 文雄 (著)
中央公論新社 (2010/3/1)
P190
情報社会 [社会]
マイナスイオンは疑似科学 [社会]
ゲルマニウムは、「マイナスイオン」を発生すると謳っているものが多かった、「マイナスイオン」という新しい言葉に、多くの人がひきつけられたのである。
少し前、「マイナスイオン」は大ブームになった。
「マイナスイオン」は、科学的用語に聞こえるが、実はそうではない。科学でいう陰イオンと同じような印象を与えるが、実は何の関係もないのだ。
マイナスイオンは健康にいいと宣伝され、それを発生するという掃除機や冷蔵庫の家電製品など、さまざまな商品が登場した。~中略~
しかし、マイナスイオンに科学的根拠はなく、いわゆる疑似科学であり、霊感商法と変わるところはない。今では、家電メーカー自身もそれを認めている。
高血圧はほっとくのが一番
松本 光正 (著)
講談社 (2014/4/22)
P119
序列 [社会]
コロンビアの森の中でお会いしたサル学者の伊沢紘生さんは「野生のサルのあいだではボスは存在しない。
豊富なエサを前にして、おれは偉いんだ、とうそぶいている時間があったらエサを食べていたほうがいい。
飼われたり、限られたエサをめぐって競争しなければならなかったりする時に初めて、序列が生まれる」と断言していた。
アマゾンの先住民でも二、三家族住んでいる時は序列は生まれない。
しかし、ヤノマミのように100人前後の単位で共同生活をするようになると序列ができる。
関野 吉晴 (著)
グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇
筑摩書房 (2003/03)
P117
グレートジャーニー ――地球を這う〈1〉南米アラスカ篇 (ちくま新書)
- 作者: 関野吉晴
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/10/31
- メディア: Kindle版
市民の義務 [社会]
P94
銘々自分の戸の前を掃け、
そうすれば、町のどの苦も清潔だ。
銘々自分の課題を果たせ、
そうすれば、市会は無事だ。
(「温順なクセーニエン」第九集から)
(一八三二年三月六日という日付によって、ゲーテの死の直前のことばであることがわかる。)
ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)
製薬会社は慈善組織でない [社会]
米国精神医学会企業献金委員会のステファン・ゴールドフィンガー委員長はこう述べている。
「製薬会社にモラルを求めても無駄ですよ。慈善組織じゃないんですから。医師に繰り糸も付けずに大金を貢ぐなんてあるはずないじゃありませんか。~略」(マーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ 製薬会社の真実」、邦訳・篠原出版新社)
イギリス・カーディフ大学のデヴィット・ヒーリー教授(精神医学)は日本での講演で、あるエピソードを紹介した。
ある製薬会社のシンポジュームに出席しようとしたら、その会社から手紙が届いた。手紙には「先生の負担を軽くするため、わが社のゴーストライターに原稿を書かせました」とあり、「ヒーリー論文の草稿」が添えられていた。教授の文章の癖まで盛り込んだ「力作」だった。
ヒーリー教授が、草稿でなく自分で論文を書いたら、製薬会社は別の「筆者」を見つけ、医学雑誌に掲載された。
製薬会社は新薬を生産するだけでなく、その新薬を称賛する「学術論文」まで生産するようだ。
ヒーリー教授は、こうした「論文」代筆のほか巧みなCMにも触れ、ビッグ・ファーマはもはや医薬品会社というよりマーケティング会社では、と指摘している(2006年に開かれた薬害エイズ裁判若い10周年の講演)。
別冊宝島2000号「がん治療」のウソ
別冊宝島編集部 (編集)
宝島社 (2013/4/22)
P90
別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2013/04/22
- メディア: 大型本
租税を薄くして民を裕にする [社会]
一三 租税を薄くして民を裕にするは、即ち国力を養成する也。
故に国家多端にして財用の足らざるを苦しむとも、租税の定制を確守し、上を損じて下を虐(しい)たげぬもの也。能く古今の事跡を見よ。
道の明かならざる世にして、財用の不足を苦しむ時は、必ず曲知小慧(きょくちしょうけい)の俗吏を用ゐ巧みに聚斂(しゅうれん)して一時の欠乏に給するを、理財に長ぜる良臣となし、
手段を以て苛酷に民に虐たげるゆゑ、人民は苦悩に堪へ兼ね、聚斂を逃んと、自然譎詐(きっさ)狡猾に趣き、上下互に歎き、官民敵讐と成り、終に分崩離折に至るにあらざるや。
西郷隆盛「南洲翁遺訓」―ビキナーズ日本の思想
西郷 隆盛 (著), 猪飼 隆明 (翻訳)
角川学芸出版 (2007/04)
P49
西郷隆盛「南洲翁遺訓」―ビキナーズ日本の思想 (角川ソフィア文庫)
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 文庫
政府の役割 [社会]
P67
無政府主義の理想とする社会では、権力の組織がないのだから、つまり、君主もなければ、大統領もなく、議会もなければ、裁判所もないということになる。
もしも、クロポトキンなどの説くように、それで世の中の平和が完全に保たれ、人々の自発的な協力と援助とによって、社会の福祉がおのずから増進してゆくものであるならば、政府などというものは不用となるであろう。政府がなければ、権力をもって人民を圧迫する危険も起らないにきまっている。
しかし、政府がなくてすむのは、理想の社会である。現実の社会では、人々の間に意見の対立が生じ、利害の衝突が起る。その場合、すべての人々の言い分を通すわけにはいかない以上、その多数が支持する考えを実行することと定め、それに反対の、もしくはそれとは違う意見を持つ他の人々も、その考えに従うべきものとし、あくまでも反対する人びとに対しては、その決定を強制してゆかなければならない。
このように社会的な強制力を持った組織が、政府である。だから、社会的な強制力の必要がないほどまで人間の世の中が完全になるまでは、政府の必要はなくならない。
P90
法律を作るのは、国会のいちばんだいじな仕事であるが、いくらよい法律を作っても、その運用のしかたが悪ければ、政治の効果は決してあがらない。
ところで、法律を運用するには、一方に裁判所があるが、実際の政治の方面で法律の執行をつかさどるのは政府である。
したがって、政治が円滑に行われるためには、国会と政府との間の呼吸がうまく合ってゆくことが必要である。そこで、多くの民主国家では、国会と調子のあった政府を作ることができるようなしくみになっている。
日本の新憲法で、「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する」ことになっているのも、そのためである。
だから、国民が国会議員を選挙するのは、ただの国会議員を選んでいるだけではなくて、それと同時に、直接に政治をつかさどる政府の首脳者を選ぶことになるのである。
民主主義
文部省 (著)
KADOKAWA (2018/10/24)
キシリトールとむし歯予防 [社会]
キシリトールガム含有ガム製品についてはEFSAの評価は「100パーセントキシリトールのガムを食後少なくとも3回噛む」ことによる「虫歯リスク低下」という効果を認めていますが、
特定保健用食品の表示は「このガムは、虫歯の原因にならない甘味料(キシリトール及びマルチトール)を使用しています。また、歯の再石灰化を増強するキシリトール、フクロノリ抽出物(フノラン)、燐酸一水素カルシウムを配合しているので、歯を丈夫で健康に保ちます」と、
使用目安は「一回に二粒を五分噛み、一日七回を目安にお召し上がりください」となっており、
成分と使用方法と結果の関係が明確ではありません。
畝山 智香子 (著)
ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想
化学同人 (2009/11/30)
P170
ほんとうの「食の安全」を考える: ゼロリスクという幻想 DOJIN選書
- 作者: 畝山智香子
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2018/09/24
- メディア: Kindle版