プライバシーは死んだ [社会]
サン・マイクロシステムズの共同創業者であるスコット・マクニーリはかって
「プライバシーは死んだ。そこをは乗り越えろ(Privacy is dead.Get over it)」と言った。
圧倒的な質と量のソーシャルグラフを誇るフェイスブックだが、そのデータ管理をめぐるプライバシーの問題は、今後さらに議論されることになるだろう。
また、私たちも自ら公開している個人情報が、思わぬ使われ方をされないという保証はどこにもないということを肝に銘じておくべきだろう。
山脇 伸介 (著)
Facebook 世界を征するソーシャルプラットフォーム
ソフトバンククリエイティブ (2011/1/19)
P137
Facebook 世界を征するソーシャルプラットフォーム (SB新書)
- 作者: 山脇 伸介
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2012/06/11
- メディア: Kindle版
フクシマに学べ [社会]
雨降れば 雨に放射能 雪積めば 雪にもありと いふ世をいかに
湯川秀樹はこの歌を、米国の水爆実験(一九五四年三月一日)の後に読んだ。ノーベル賞受賞後は核兵器廃絶運動に取り組み、激しさを増す核開発競争を批判した。
太平洋上での実験は予想以上の破壊力を示し、操業中の「第五福竜丸」の乗組員二十三人は「死の灰」を浴びた。日本は広島、長崎に続いて三たび核兵器の脅威を経験している。
気になる科学 (調べて、悩んで、考える)
元村有希子 (著)
毎日新聞社 (2012/12/21)
P162
ブームになってから投資すると、死ぬ [社会]
「ブームになってから投資すると、死ぬ」というのが投資の鉄則だ。誰も投資など考えられない、焼け野原のようになっているときに投資して、誰よりも早く実った果実を回収し、「まだまだ儲かる」と普通の人が思い始めるタイミングでさっと身を引く。
これが、成功する投資家に共通する思考法だ。
僕は君たちに武器を配りたい
瀧本 哲史 (著)
講談社 (2011/9/22)
P86
多すぎる選択肢への対応 [社会]
過度に成熟したカテゴリーから生まれる多すぎる選択肢に人々がどのように対応するか
①知識豊富な”カテゴリー通”
②目ざとい”買い手上手”
③関心の薄い”現実主義者”
④いやいや関わる”不本位な人々”
⑤理屈抜きの”熱心な愛好家”
ヤンミ・ムン (著), 北川 知子 (翻訳)
ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業
ダイヤモンド社 (2010/8/27)
P70
三徳山三仏寺2
生き方を変える [社会]
P194
しかし、(住人注;都知事選挙の)候補者それぞれの主張を聞いて愕然とした。
ほとんどの候補者が「災害に強い町を作る」と力強く語っていたからだ。
災害に強い町とは、現行の仕組みの上に成り立つ町のことだ。彼らはまだ、湯水のように資源を使い、エネルギーを消費する社会を基盤として政治をしようとしている。そうじゃないだろう。
なぜ、「いま、この事態を機に、私たちの生き方を変える。そのために立候補した」と言えないのだ。
これでは原発の風下の悲しみはいつまでたっても終わらない。
風下の悲しみ、再び──プリピャチと南相馬
高橋卓志 (神宮寺住職)
P248
根本から考えてみようじゃないか―二〇世紀は原子力(核分裂エネルギー)の世紀だった。
核分裂を破壊的な戦争力に使ったのが<原子爆弾>、産業力に平和利用したのが<原子力発電所>だ。コインの裏表、もともとは同じ原子の火である。
それなのにわれら日本人は大東亜戦争でそのアメリカ<原爆>に敗れ、いままたこの大震災でアメリカ・モデルの<原発>事故に敗れつつある。
一度でもうコリゴリなのに二度も原子の火を浴びた。
わたしはこれほどお目出度い愚かしい国民・民族性は世界にないんじゃないかと思う。
だって八月一五日に、わたしたちは原爆慰霊碑に「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」と血涙の誓いをして戦後平和民主主義へと出発したのではなかったか。
ノー・モア・ヒバクシャ(被爆者)!とも叫んだ。
だがいまこの福島原発事故から発生しつつある放射能「ヒバクシャ」(被爆者)の出現に、ヒロシマの死者の霊は一斉に眠りからさめ、慟哭し怒り騒ぐだろう。死者に顔向けできない。わたしらは過ちを繰り返したのだ。
だとしたら、これは単に福島原発「廃炉」、放射能浄化運動の復興物語だけで終わらせるわけにはゆかない。
戦後日本の「平和のかたち」=経済大国化の物語を再点検せねばならないだろう、なぜなら、日本経済繁栄の最大のインフラは日米安保軍事同盟の<核の傘の下>の平和産業ビジネスでありサラリーマン企業戦士であり、原子力発電による電力供給(総電力の三割)であったからだ。
戦後平和ニッポンの裏側はまるっきり”核漬け”だったのだ。
しかも、「福島第一原子力発電所にずらり並んだ原子炉でできた電気はみな、東京に送られています」(朝日新聞 三月二六日、前岩手県知事・増田實也)。
だからもし東日本の復興がそうした大東京中心主義=「核との共存」社会の復旧にすぎないのであれば、わたしたちはこの二一世紀の世の中に極めて古臭い二〇世紀的な国民国家を復活させることになる。時代錯誤という他はない。
西へ、南へ!──そして新しい反核平和の声を
吉田 司 (ノンフィクション作家)
世界 2011年 05月号
岩波書店; 月刊版 (2011/4/8)
経済の本質は攻撃である [社会]
今も昔も、経済の本質は攻撃である。
経済する人は他者より少しでも多く富を得たい衝動に駆られてゆく。その衝動に駆られて、農耕する人々はさらなる耕作地の拡大を図っていった。
狩猟する人々の土地へ進出し、彼らを排除し、自分たちの人口を増やし、その土地を耕す。それは限度を知らない膨張であり侵略であった。
狩猟する人々は弓矢が得意で、山河を駆け巡り、戦いに優れていた。中国で狩猟する日本列島の人々が「東夷」と呼ばれたように、日本で「蝦夷」と呼ばれた人々は狩猟する人々であった。
その狩猟する人々の戦闘力に対抗するため、農耕する人々は蓄積した富で専門の武装集団を雇った。
武士の誕生であった。
その武士の最高指揮官として794年、初代の征夷大将軍・大伴弟麻呂が朝廷によって任命された。その征夷大将軍の官職名を有名にしたのが第2代目の坂上田村麻呂であった。
日本史の謎は「地形」で解ける
竹村 公太郎 (著)
PHP研究所 (2013/10/3)
P249
フェアな社会 [社会]
ザッカー(住人注;リン・ザッカー)の研究によれば、信頼社会の典型と思われがちなアメリカも、当初は安心社会としてスタートしていたといいます。
考えてみれば、それは当たり前のことで、そもそもアメリカはヨーロッパ各地からの移民によって作られた、いわば寄り合い所帯の国です。社会そのものが伝統が浅いわけですから、当初はイタリア移民ならイタリア移民、ユダヤ人ならユダヤ人といった具合に、同じ出身地、同じ宗教を持った人たちが助け合うことからアメリカ社会が始まったというのは、当然の成り行きと言えるでしょう。
つまり、初期のアメリカは人種のモザイクならぬ、安心社会のモザイクによって出来ていた国家だったというわけなのでしょう。
ところが、こうした「安心の保証」のメカニズムも、移民の大量移入、さらには急速な工業化などの社会変動によって、一九世紀後半あたりから失われていきます。
つかり、今の日本と似たような状況が起きていたというわけなのですが、ちょうどこの時期にアメリカでは公平で効率的な社会制度の整備が急速に進んだのが、アメリカにとって幸いしたとザッカーは指摘しています。
細かな話はここでは省略しますが、アメリカ人が誇りにする「フェアな社会」の基本は実はこの時期に作られたものであって、そしてこのときに作られた諸制度こそが、のちのアメリカの繁栄をもたらすものだったのだとザッカーは言います。
日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点
山岸 俊男 (著)
集英社インターナショナル (2008/2/26)
P222
日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点 (集英社インターナショナル)
- 作者: 山岸俊男
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2019/05/31
- メディア: Kindle版
犬飼石仏
メディカルツーリズム [社会]
世界の患者は国境を超え始めている。そして、欧米はおろかアジアの新興国でさえ、医療による外貨獲得に乗り出している。
北原 茂実 (著)
「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる!
講談社 (2011/1/21)
P151
「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる! (講談社プラスアルファ新書)
- 作者: 北原 茂実
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/01/21
- メディア: 新書
薬師寺鎮守 休ヶ岡八幡宮
職場崩壊 [社会]
ヨーロッパの人たちは、日本が「黒部の太陽」に「これぞ男!これぞ働く人間!」と感涙にむせんでいるときも、「会社より家族、自分」と気づき始めていたのだろう。
そしてようやくいま、その考えがじわじわと日本にも広まりつつある。
ただ、それはまだ、「全員の常識」とはなっておらず、「終電で帰る派」と「とにかく家族や自分派」とが二極化しつつあるようだ。
そしてその二極化が、職場にちょっとした問題を引き起こしている。
それは、「会社よりプライベート派」が増えつつあり、会社としても「自分や家族を大切に」という方針を進めようとしてはいるのだが、仕事の態勢がまだそうなっていない、ということだ。
「プライベート優先派」は家族や友人にとっては心強い存在だが、「あ、オレ来週から育休だから」「あー、午後から大雨か。じゃ、午後半休取って帰るか」という人がどんどん増えても、仕事がその分、減るわけではない。
それどころかこの時代、不況に伴い仕事の現場はますます厳しくなりつつある。顧客からの注文には、「ムリしてでも何とかやり遂げます!」とふたつ返事でオーケーしなければならない。
そこで、二一世紀になってもまだ「黒部の太陽」を引きずっている上の世代や若者でも奇跡的に昔の会社観、仕事観を持っている人たちに、仕事の負担が集中しがちなのである。
そうなると当然のことながら、その人たちは働きすぎでいつもストレスを抱え、からだの不調を抱えたり、燃え尽き症候群、うつ病などの心の病に倒れたりする結果となる。
では、その人たちを見て「プライベート派」は「よし、あの人たちばかりまかせないで、オレももう少し仕事をがんばろう」と思うかというと、それは逆だ。
「そうか、やっぱり仕事で無理しすぎるとああなっちゃうんだな。恐ろしい、オレはああならないようにもっと休みを多く取ろう」とますます自分や家族を大切にするようになる。
若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか
香山リカ (著)
朝日新聞出版 (2012/12/13)
P173
評判と信頼 [社会]
ネット取引をする場合に、評価システムを利用する目的が、当初は「危ない人」を見つけるためだったのが、「付き合っても大丈夫そうな人」を見つけるために変わったというわけなのです。
この結果から分かったのは、評判には「追い出し」作用と「呼び込み」作用の二つがあるということです。
~中略~
すなわち、悪い評判を流すことで相手を追い払うのではなく、いい評判を積み重ねていくことで自分のところに人が集まってくるようになるということです。
老舗が人々の信頼を集めるのは、長年にわたり正直な取引を続け、客の期待を裏切らなかったからこそその店は「老舗」になれたのだろうとみんなが考えるからです。それが「ブランドの信用」というわけですが、ネット社会ではそうしたブランド化が企業のみならず、個人のレベルでも起きているということが言えるのではないでしょうか。
~中略~
しかし、このオークション実験が示唆しているのは、見知らぬ他人が「泥棒」ではないかと過度に警戒してビクビク生きていくよりも、他人のいい評判に目を向け、そうして評判を確立した人たちと積極的に手を結んでいくほうが、信頼社会を構築するうえで重要なのではないかということです。
日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点
山岸 俊男 (著)
集英社インターナショナル (2008/2/26)
P223
日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点
- 作者: 山岸 俊男
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2008/02/26
- メディア: 単行本
犬飼石仏
共助 [社会]
日本の高齢者福祉は、以下の三点セットで成り立っていることを前章で論じました。年金、医療、介護です、それに居住が加わって4点セットになります。それぞれに年金保険、健康保険、介護保険という制度が対応しています。いずれも保険という共済制度です。
これがほんらいの意味の「共助」です。お互いに自分のフトコロからおカネを出し合って、困ったときに困ったひとに配分するという社会連帯の原理です。
病気知らずのひとは健康保険を払いつづけていても一生使わないこともあるでしょうし、介護保険も保険料が年金から天引きされているのに、ぽっくり逝ったらお世話にならずにすむでしょう。その反対に病気がちで払った以上の医療費の給付を受けているひともいるでしょうし、介護保険をめいっぱい使っているひともいるでしょう。トラブルのないひとにとっては、共済制度というものは不公平なものです。ですが、困ったときの助け合い、これが「共助」の原理です。
アメリカはそうではありません。アメリカは主として「自助」に期待する社会です。だからオバマ大統領が登場するまで、国民健康保険というものが存在しませんでした。
おひとりさまの最期
上野千鶴子 (著)
朝日新聞出版 (2015/11/6)
P63
仲間と一体であるという安心感 [社会]
ニホンザルは、仲間が自分から空間的に離れた時に、むしろ声を出し合うことがわかる。そうすることで姿は認めなくても、相手が自分の周辺にいることを確認しているのだろう。
彼らが生活する森のなかは視界がよくない、へたをすると仲間からはぐれてしまう危険が存在する。それを防ぐためにおしゃべりが役に立っている。
自分が声を出して応答があることで彼らは仲間と一体であるという安心感を得ているらしい。
ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊
正高 信男 (著)
中央公論新社 (2003/09)
P66
金剛輪寺 明寿院
安心社会は正直者を育てない [社会]
結局、都会の生活に適応していこうとすれば、まず自分の頭で、相手が信頼に足りる相手なのかどうなのかを考える習慣を作らなければいけないというわけなのです。
~中略~
農村のような集団主義社会とは本質的に「信頼」を必要としない社会であり、逆に都会のような、いわば個人主義的な社会とは本質的に「信頼」を必要とする社会である―一見、パラドックスのように見えますが、このことが分かれば「和の民族」であるはずの日本人が容易に他者を信じない、その理由が分かってくるというものでしょう。
さらに言えば、他人との共同作業において、日本人が他者を信頼できずに一匹狼の道を選ぶというのも納得できるはずです。
日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点
山岸 俊男 (著)
集英社インターナショナル (2008/2/26)
P110
日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点
- 作者: 山岸 俊男
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2008/02/26
- メディア: 単行本
犬飼石仏
自由貿易と保護主義はどちらも同じ [社会]
P38
マッキンダー(住人注;H・J・マッキンダー)は、ここで英国の伝統的な自由貿易論にたいしても鋭い攻撃を加えている。
英国流政治経済学もドイツの国民経済学も、帰するところ同じアダム・スミスである。
どちらも、たまたま一九世紀の主潮であるダーウィンの適者生存説に合致したために、流行したに過ぎない。
自由貿易も行きつくところは、結局他者の犠牲による独占体制の維持に落ち着かざるを得ないので、その点徹底した保護主義の理論となんら選ぶところがない
。
地政学入門―外交戦略の政治学
曽村 保信 (著)
中央公論社 (1984/01)
P38
ブランド [社会]
ブランド研究の世界的権威、アメリカの経営学ディビッド・A・アーカーは「ブランドとは、歯止めのない価格競争に陥らないための唯一の選択肢である」と述べています。
「ブランド」とは、市場が急速に成熟化する現代の工業製品市場において、信頼感によって差別化と非価格競争が可能となったマーケティング活動の到達点なのです。
日本人が知らない漁業の大問題
佐野 雅昭 (著)
新潮社 (2015/3/14)
P124
ホスタイル・ブランド [社会]
「ホスタイル・ブランド」は、消費者に媚びず、その気がないふりをする。歓迎のじゅうたんを敷き詰める代わりに、挑戦状を叩きつける。まるでマーケティングの教科書を片っ端から否定しているかのようだ。
ホスタイル・ブランドは古典的な意味でのマーケティングを実行することなく、「アンチ・マーケット」の姿勢を貫いている。
たとえば、製品の欠点を率直に語る。製品が容易に顧客の手に入らないようにする、顧客を魅了するのと同じくらい嫌悪感をも抱かせるようなメッセージを提供し、心地良いプロモーションを拒否する。
どの手法を採るにせよ、消費に対する障壁を築き、そのブランドにかかわる意志の強さを試す。消費そのものが私たちの忠誠心を露骨に表し、壁を超えられない他の消費者との間に大きなへだたりを生じさせる。
~中略~
マーケターは自社製品について口当たりのいいことを言うように訓練されている。
市場調査で消費者が製品の欠点に不安を感じているのが明らかになれば、それを確実に払拭するか、他の長所に目を向けさせようとする。
その意味では、ミニクーパーのキャンペーンは慣例を無視していた。
~中略~
これがホスタイル・ブランドの手法だ。説得という伝統的な手法を使わず、他のブランドが言いそうにもないことや、顧客を追い払いかねないことを言う。
これは裏をかくアプローチとも異なる。
~中略~
自社製品の長所も短所もさらけ出し、もし私たちが気に入らなければそれまでだと言ってのける。
しかも、颯爽と。
ヤンミ・ムン (著), 北川 知子 (翻訳)
ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業
ダイヤモンド社 (2010/8/27)
P120
三徳山三仏寺不動堂
規制強化は問題を解決しない [社会]
そもそも非正規の雇い止めが発生してから「非正規切りはけしからん」と企業を責め立てても、責められる企業も困ったはずだ。非正規社員を雇用の調整弁とすることを社会から認めれれている以上、この行動は企業にとって完全に合理的であるからだ。
同じく、非正規切りについて特段の対策を求めず、春闘で賃上げを求める組合の行動も、正社員の意見を代表する立場としては正当化されてしかるべきである。
非正規社員を増やした段階で、不況になるとこうなることは予測されており、だからこそ、企業も労働組合も非正規比率を上げてきたのだ。
競争と公平感―市場経済の本当のメリット
大竹 文雄 (著)
中央公論新社 (2010/3/1)
P159
リバース・ブランド [社会]
グーグルのようなブランドを、リバース・ブランドと呼びたい。
アイデア・ブランドの中でも非常に特殊で、顧客が期待している拡張への流れを意図的に断ち切る。
他社が競争に欠かせないとみなしている便益の提供を控えようとする。リバース・ブランドは、他社がイエスと言うときにノーと言う。謝りもせず、堂々と。
この意味をすこし考えてみよう。ビジネス全般、特にマーケティングにおいては、顧客の期待に応えられない以上の罪はない。
消費者が期待している便益を与えないという決断ほど、眉をひそめさせるものはない。
つまり、ビジネスパーソンの本能に逆らうものだ。カテゴリー全体が北を目指して競争しているとき、南を目指すのは正気の沙汰ではない。
ヤンミ・ムン (著), 北川 知子 (翻訳)
ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業
ダイヤモンド社 (2010/8/27)
P88
三徳山三仏寺奥の院(投入堂)
為政者というもの [社会]
自己責任のルール [社会]
官僚が退場し、情報が公開される代わりに、個人は自分の責任において情報にアクセスし、使いこなすことが必要になる。
そのときには、「知らなかった」という言い訳は誰にも許されなくなる。自己責任のルールとは、そういいうことだろう。
「借金棒引き」の経済学 ―現代の徳政令
北村 龍行 (著)
集英社 (2000/8/17)
P224
アイデア・ブランド [社会]
資本主義の目的 [社会]
「株主などというわけの分からない人々のために働いているのではない」と考える人もいるかもしれないが、その人が働いてもらう給与や年に数回もらえるボーナスも、株主が所有する資産が形を変えたものであることを理解しておく必要がある。
その給与も銀行に預けられた時点で、銀行が自らの株主に利益をもたらすことを目的に、さまざまな企業や国債に勝手に投資されているのである。さらに言えば、年金は株式にも投資されているので、知らない間に株主にもなっていることになる。
つまり資本主義の国で生きる以上、株主(投資家)の意思のもとに生きざるを得ない、ということなのだ。
僕は君たちに武器を配りたい
瀧本 哲史 (著)
講談社 (2011/9/22)
P216
宣伝と真実を区別するには [社会]
真実を探求するのは、科学の任務である。だから、うそと誠、まちがった宣伝と真実を区別するには、科学が真理を探究するのと同じようなしかたで、新聞や雑誌やパンフレットを通じて与えられる報道を、冷静に考察しなければならない。
乱れとぶ宣伝を科学的に考察して、その中から真実を見つけ出す習慣をつけなければならない。 一、科学的考察をするにあたって、まず心がけなければならないのは、先入観念を取り除くということである。
われわれは、長い間の経験や、小さい時から教えられ、言い聞かされたことや、最初に感心して読んだ本や、その他いろいろな原因によって、ある一つの考え方に慣らされ、何事をもまずその立場から判断しようとするくせがついている。~略
二、次にたいせつなのは、情報がどういうところから出ているかを知ることである。 読んだり、聞いたりしたことを、そのまま信じこむことは、ただに愚かなことであるばかりでなく、またひじょうに危険である。
だから、いつも自分自身に次のようなことを質問してみるがよい。すなわち、だれがそれを書き、それを言ったか。それはどんな連中だろうか。かれらにはそういうことを言う資格があるのか。どこで、どうしてしの情報を得たか。
かれらは先入観念を持ってはいないか。本当に公平無私な人たちか。あるいは、まことしやかなその発表の裏に、何か利己的な動機が隠されてはいないか。こういった質問を自分自身でやってみることは、たしかに科学的考察の役に立つであろう。
三、新聞や雑誌などを読むときに、次のような点に注意する。
イ、社説を読んで、その新聞や雑誌のだいたいの傾向、たとえば、保守か、急進かをできるだけ早くつかむこと。
ロ、それがわかったならば、それとは反対の立場の刊行物も読んで、どちらの言っていることが正しいかを判断すること。
ハ、低級な記事を掲げたり、異常な興味をそそるような書き方をしたり、ことさらに人を中傷したりしているかどうかを見ること。
ニ、論説や記事の見出しと、そこに書かれている内容とを比べてみること。
記事の内容にはだいたいほんとうのことが書いてあっても、それにふさわしくない標題を大きく掲げ、読者にまるで違った印象を与えようとすることがあるから、標題を見ただけで早合点してはいけない。
ホ、新聞や雑誌の経営者がどんな人たちか、その背後にどんな後援者がいるかに注意すること。政府の権力に迎合する新聞を御用新聞というが、政府でなく、金権階級におもねるような新聞も、御用新聞であるにことに変わりはない。
四、毎日の新聞やラジオは国際問題でにぎわっている。今日では、国の内部の政治は国際問題と切り離すことにできない関係があるから、国際事情にはたえず気をつけて、その動きを正しく理解することが必要である。
戦争前の日本国民は、世界じゅうが日本のやることをどう見ているかを少しも考えずに、ひとりよがりの優越感にひたっていた。これからも、日本が国際関係の中でどういう立場におかれているかを、たえずしっかりと頭に入れて、そのうえで国内の問題を考えてゆかなければならない。
国際間の宣伝は、国内におけるよりももっと激しく、もっとじょうずに行われるから、いろいろなことを主張し、論争している国々の、本当の目的を察知するように努めなければならない。特に、言論や出版が政府の手で厳重に統制されている国に対しては、そういう注意がたいせつである。
民主主義
文部省 (著)
KADOKAWA (2018/10/24)
P143
逆輸入比率 [社会]
なぜ地方の「モノづくり」はかくも無残に追い詰められるのか。
IT不況、進む製造現場の統廃合だけが理由ではない。雇用の空洞化の真因は自ら招いた異常な「逆輸入比率」の高さになる。
逆輸入とは何か。「日本製アジア製品」と筆者の呼ぶ構造である。中国、アジアに進出した日本資本の現地法人・その売上高に占める日本への輸出の割合は24%にも達する。
現地で低コスト賃金を武器に日本に逆輸入することを主目的とした工場進出が、いかに多いかを示すものだ。欧米系現地法人ではどう比率はせいぜい2%ていどに過ぎない。
~中略~
逆輸入比率はこれからもますます拡大し、国内製造業の疲弊は加速するだろう。
この現実に「モノづくりはアジアに任せ、日本はもっと高度の最先端領域へ」など型通りの説教は無力である。
内橋 克人 (著)
共生経済が始まる 世界恐慌を生き抜く道
朝日新聞出版 (2009/3/19)
P139
西大寺東門
報道の役割 [社会]
私は新聞を経営するに当たり、近頃わが国の恥にさえなっている誹謗や人身攻撃にわたることは、一切これを避けるように心を用いた。
こうした種類のものを載せてくれと頼んでくる筆者は、たいていきまって新聞の自由を主張し、新聞は乗合馬車のようなもので、料金を払う者は誰でも乗る権利があるなどと弁じ立てるのだが、そういう時には、私はいつも次のように応えた。
「もしお望みならその文章は別に刷って上げよう。あなたはお気に召すだけ何部でも持って行ってご自分で配るがよろしい。
だが、私は人の悪口を広めるようなことは引き受けたくない。私は有益な、あるいは興味ある記事を提供すると購読者に約束しているのだから、読者に関係のない個人的な言い争いは載せることができない。
そんなことをすれば、明らかに読者の利益を害するのだから」
フランクリン (著), 松本 慎一 (翻訳), 西川 正身 (翻訳)
フランクリン自伝
岩波書店 (1957/1/7)
P181
エコロジーもエコノミーが絡む [社会]
たとえば、カリフォルニアのシエラネバダ山脈のセコイアの森では、ひとつの森で、約三年から三五年に一度の割合で山火事が発生するというデータがある。
四〇〇年生きている木ならば、少なくとも一〇回以上の山火事に耐えて生き延びてきたわけだ。ジャイアント・セコイアのように数千年の年輪を数える巨木にいたっては、数十回、百数十回という火事を乗り越えて生き残ったことになる。
一九八八年に、四ヶ月以上も燃え続けたイエローストーン国立公園の森林火災は、ぼくのなかに、まだ生々しい記憶として残っている。 ~中略~
この火災の後、アメリカに大きな論争がわき起こった。国立公園の火災は消すべきか。これが焦点だった。じつは、この火災がこれほどまで大きくなった原因には、明確な理由がある。~中略~
論争は、おもに合衆国国立公園局と合衆国森林局のあいだで激しく行われた。
森林局にとっては、樹木自体が財産である。国立公園局にとっては、長い目で見れば、エコシステムそのものが財産である。問題は、森林火災は森林局管轄の国有林と国立公園の境界線に関係なく燃え広がるということだ。
国立公園の管理プランは、当然大幅に見直された。もちろんエコロジー中心の考え方は変えていない。そして、天候や植生、地域などによって、よりきめ細やかに管理する体制が整えられた。
自然の歩き方50―ソローの森から雨の屋久島へ
加藤 則芳
(著)
平凡社 (2001/01)
P56
自然の歩き方50―ソローの森から雨の屋久島へ (平凡社新おとな文庫)
- 作者: 加藤 則芳
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2001/01/01
- メディア: 単行本
製薬会社はWHOを支配している [社会]
WHOは予算の7割を製薬会社の寄付金に依存している。事業計画の増加ともに依存度は高まる一方で、近いうち8割を超えると言われている。製薬会社から金銭面での圧力がかかたのは、想像に難くない。
~中略~
それに対して事務局長は、
「我々と民間企業の関係について、公正さが損なわれることはあってはならないが、今回のガイドラインには、多少の懸念が残っていることは否定しない」と、渋々過ちを認めている。
この眉唾物の決定が、日本にも大きな影響を与え、新たに2000万人も「高血圧症」の患者を増やしたのである。
1970年代頃までのWHOは、世界から天然痘を撲滅するなど、非常にいい機関だった。しかし近年は、製薬会社との癒着を強め、公正さを失っていると指摘される。
2009年、WHOは、新型インフルエンザの流行に対し、「すべての人類が脅威にさらされている」として、パンデミック(世界的大流行)の宣言を行ったが、実際は普通のインフルエンザと大差はなかった。この大誤報も、ワクチンを売る製薬会社との癒着が原因といわれている。
高血圧はほっとくのが一番
松本 光正 (著)
講談社 (2014/4/22)
P37
共創の場 [社会]
今の時代に必要なのは、市場を”競争の場”ととらえるだけでなく、”共創の場”ととらえる視点です。
共創の場ができると、対話を通して、それぞれが持っている優れた知が場に取り込まれ、そこで生まれた新しい知が、実践を通してまた一人ひとりの中に取り込まれて、気づきが生まれる。
これが繰り返されて、どんどん知が膨らみ、それまで不可能だったことが可能になっていくのです。
野中 郁次郎
勝見 明 (著), 鈴木 敏文, 野中 郁次郎
セブン‐イレブンの「16歳からの経営学」―鈴木敏文が教える「ほんとう」の仕事
宝島社 (2005/10)
P187
セブン‐イレブンの「16歳からの経営学」―鈴木敏文が教える「ほんとう」の仕事
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2022/01/27
- メディア: 単行本
ザ・ウィナー・テイクス・オール [社会]
市場一元支配社会のもとでの「競争」とは最終的にはザ・ウィナー・テイクス・オール(一人勝ちの勝者がすべてを奪う)をもたらすものであること。切磋琢磨なら大いに結構です。互いのなれ合いを排し、全力をあげて競い合うことで全体のレベルも上がる。
しかし、いまもてはやされる競争とは、よく語られる勝ち組・負け組の篩い分け。そして「格差拡大社会」を必然とする「剥き出しの競争主義」に社会を任せる、という流儀を指しています。
内橋 克人 (著)
共生経済が始まる 世界恐慌を生き抜く道
朝日新聞出版 (2009/3/19)
P126
政治的な自然保護 [社会]
「自然保護」というのは人類の歴史の中でそんなに古い概念ではない。というのは人類の歴史の中で、その99パーセント以上は狩猟生活をしていて、人類も自然の一部であったからだ。
積極的に「自然保護」を唱え始めたのは、二〇世紀の後半になってからだ。今では正義の御旗になっている
~中略~
一九七〇年にWWFの勧告により、国立公園に指定されたペルーのマヌー国立公園の中には、先住民が住んでいた。ここの先住民は長年森を壊すことなく、森と調和して生きてきた人々だ。
常識的には、彼らこそが優先的に自然保護の恩恵にあずかるべきだ。
ところがペルー政府は「先住民は国立公園外に出て行ってもらう」ことによってアマゾンの中でも特に多様で豊かな自然を守ることにした。
~中略~
WWFやペルー政府は「ここに一つ、人類の貴重な遺産が確保された」と言って手放しで喜んでいる。ユネスコの世界遺産にも登録された。
しかし、その裏では先住民たちの苦悩が続いている。
関野 吉晴 (著)
グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇
筑摩書房 (2003/03)
P96
グレートジャーニー ――地球を這う〈1〉南米アラスカ篇 (ちくま新書)
- 作者: 関野吉晴
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/10/31
- メディア: Kindle版
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