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塩入 [言葉]

そこは標高一メートルに満たない土地。しかも地名は「塩入(しおいり)だ。
江戸時代、津波高波の被害を塩入とよんだ。津波被害が繰り返される場所が、塩入もしくは塩入田とよばれているのを何カ所もみた。塩入という地名のついた場所に防災庁舎を建ててはいけなかったのである。


天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2014/11/21)
P185



天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 新書



 



 


DSC_1628 (Small).JPG普明山高野寺


タグ:磯田 道史
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扉を開けおきたい衝動 [ものの見方、考え方]

 いずれの場合も、かならずしも意識しているとはかぎらないが、わたしたちはこうした選択肢を残すためにほかの何かを手放している。
たとえば、必要以上に高性能のコンピュータや、無駄な保証のついたステレオを大金をはたいて買うはめになる。
子どもの習いごとの場合、こどもにさまざまな活動を少しずつでも経験させようとするあまり、子どもと自分の時間を―そして、子どもがひとつのことにほんとうに秀でる機会を―手放している。

予想どおりに不合理[増補版]
ダン アリエリー (著), Dan Ariely (著), 熊谷 淳子 (翻訳)
早川書房; 増補版版 (2010/10/22)
P247

予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/10/22
  • メディア: ペーパーバック

 

-cccf4.jpg己高閣

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個としての存在と社会的存在 [社会]

ヨーロッパ近代において明確にそのすがたをあらわす自由で自立した個人は、その内面からすれば、「われ思う、ゆえにわれあり」というかたちで自分の思考と存在を確信する個人であり、社会にたいしては、「人は、自由かつ権利において平等ものとして出生し、かつ生存する」というかたちでおのれの人権を主張する個人である。
 こういう個人は、社会生活において、なによりもまず自分の存在や価値をつらぬこうとする。どんな関係のなかでも、自分を失わないことがなにより大切なことなのだ。そういう個人は、他人にもその存在と価値をつらぬいてほしいと願うし、自分を失わないでほしいと願う。
近代社会を個人主義の社会だというとき、いう意味は、そのようにおのれをつらぬく個人を基本的な単位とする社会だということである。
 そういう個は、容易に和やまとまりを作りだしはしない。外からくる力にたいしては、つねに警戒と抵抗のかまえをくずさず、内面の確信にもとづくのでないかぎり、これを受けいれようとはしない。歴史的に見て、神や王権の支配と対決するかたちで個の自由や自立が主張された経緯からしても、個が容易に統合へとむかわないのは当然だったのだ。

新しいヘーゲル
長谷川 宏(著)
講談社 (1997/5/20)
P24

新しいヘーゲル (講談社現代新書)

新しいヘーゲル (講談社現代新書)

  • 作者: 長谷川宏
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/05/17
  • メディア: Kindle版

 

DSC_4650 (Small).JPG求菩提山

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タグ:長谷川 宏
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叱ってやるのは親の慈悲 [教育]

 涙がたまって木目がぼやけると、きまっていわれた言葉も忘れない。
「おまえ、なんで泣くんだ。正直にいってごらん。足がしびれたか、それとも腹がたっているのか?」そして
「ものを教えてもらっている最中に、むやみと泣くものじゃない」という。なつかしい。

 あの頃もその後も、私は無限に父に叱られるうまれつきなんだ、というようにおもっていたが、なにが無限なものか。
三十年四十年はまたたく間だった、いまはもう、この机の横に呼びつけ、叱ってくれる声はない。
叱られなくなって、叱られる仕合せをおもう。
叱られない環境などちっともいいものではない、私にとっては。

叱ってやるのは親の慈悲、とは俺はいいたくないが、おまえたちを叱るのは実は骨が折れるんだ、といわれてさすがの弟も困った表情をしたのなども昨日のようである。

幸田 文 (著), 青木 玉 (編集)
幸田文しつけ帖
平凡社 (2009/2/5)
P218

幸田文しつけ帖

幸田文しつけ帖

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/02/05
  • メディア: 単行本

 

-3be9d.jpg三徳山三仏寺文殊堂1

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寡頭政治の台頭 [社会]

  米国では誰もが政治プロセスに公平に参加できるとされているが、実際には億万長者には有利でも持たざるものには不利になっている。
金持ちはロビイストを雇うことができるし、政策を彼らの有利にするようなレポートをシンクタンクに出資して書かせることもできる。
また、(コーク兄弟とウォーカー知事のように)政治家を買収することもできる。
紙の上では一人一票だが、このような現実をみると、民主主義というよりも一握りの富裕者に支配される寡頭政治が行なわれている、とクルーグマンは言う。
~中略~

民主主義の本質と言われる「人民の人民による人民のための政治」というリンカーンのことばをもじり、経済学者ジョセフ・スティグリッツはこれを「一%の一%による一%のための政治」と言う。

米国に広がる民主主義の崩壊と寡頭政治の台頭
  金克美 (ライター、翻訳家=TUP)

世界 2011年 06月号

岩波書店; 月刊版 (2011/5/7)
P28

世界 2011年 06月号 [雑誌]

世界 2011年 06月号 [雑誌]

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/05/07
  • メディア: 雑誌

 

-00338.jpg善光寺本堂
タグ:金克美
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希望を持ったまま保留 [処世]

玄侑 ユングが言っていることですごいなと思うのは、一つのことが起こりますよね。起こったことそれ自体では縁起がいいか悪いかわからない。

たとえばここにお金が落ちてたとしますよね。縁起がいいって思って拾ったら、テーブルの角に頭をぶつけて脳震盪で入院した。
やれやれ、まいったと思ったら、入院した病院の看護婦さんがきれいな人だった。それで、結婚したら、なんだかしりに敷かれちゃって、こんなはずじゃなかった、と(笑)。
二転三転するわけですよね。すると、お金が落ちてること自体が、いいことかどうかなんて、わからないわけですよ。

だから希望を持ったまま判断を保留しなさいとユングは言うわけですね。
最初に起こった出来事を保留にしないで悪い方向に考えると、それが次に起こることに影響する。
この「希望を持ったまま保留」っていうのがすばらしいと思いますね。「希望の原型」って言いますけど。

養老 孟司 (著) 玄侑 宗久 (著)
脳と魂
筑摩書房 (2007/05)
P272

 

脳と魂

脳と魂

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/02/18
  • メディア: 単行本


2181866新薬師寺2

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藩都と県名 [雑学]

 明治政府がこんにちの都道府県をつくるとき、どの土地が官軍に属し、どの土地が佐幕もしくは日和見であったかということを後世にわかるように烙印を押した。
 その藩都(県庁所在地)の名称がそのまま県名になっている県が、官軍側である。
 薩摩藩―鹿児島市が鹿児島県。
 長州藩―山口市が山口県
 土佐藩―高知市が高知県
 肥前佐賀藩―佐賀市が佐賀県。
 の四県がその代表的なものである。
 戊辰戦争の段階であわただしく官軍について大藩の所在地もこれに準じている。
 筑前福岡藩が、福岡城下の名をとって福岡県になり、芸州広島藩、備前岡山藩、越前福井藩、秋田藩の場合もおなじである。

 これに対し、加賀百万石は日和見藩だったために金沢が城下であるのに金沢県とはならず、石川という県内の小さな地名をさがし出してこれを県名とした。
~中略~
 官軍の主力はいわゆる薩長土肥だが、その肥の肥前佐賀藩などはあれほどの小地域で立派に一県なのである。
本来いまの長崎県内に入るはずだったのが、肥前出身の高官たちが、「わが藩の版図を県として残すべきだ」として佐賀藩ができた。
 権力のおかしさのひとつは、それがひどく感情的であるということである。
 ―南部藩は賊軍であった。
という好悪の感情でもって、小南部八戸の地をうむをいわせず青森県へほうりこんでしまったのである。

街道をゆく (3)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1978/11)
P90

街道をゆく〈3〉 (1973年)

街道をゆく〈3〉 (1973年)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2024/02/06
  • メディア: -

 

 DSC_0042 (Small).JPG

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自立した患者 [医療]

リサのケースでは、二番目の整形外科医は最近の医療文化の中で特に重視されている患者の自律性に影響を受け過ぎているようだ。
 リサは医師の言葉を引用して言った。「「やってもいいし、待ってもいい」と言われたんです。全然助けになりませんでした。だって「全てあなた次第ですよ」と言い続けるだけなんですから」
 ミシガン大学のカール・シュナイダーが明らかにしたように、医師がガイド役としての役を放棄して選択の重荷を全て患者の肩にのせてしまうという、自立性の原則の行き過ぎともいえるケースもみられる。
リサの得たセカンドオピニオン、「やりたいようにやりなさい」はこれにあてはまるだろう。
アリゾナ大学のコノリーは患者が決断時に自立性を発揮すればするほど、将来の後悔のリスクは高くなることに言及している。つまり、もしも結果が悪ければ、自分自身を責める羽目になるかもしれない、ということだ。
もちろん、これは微妙なバランスの問題ではある。というのは、悪い結果が起ったとき、自分が十分自立的に動かなかったからだ、と後悔する可能性もあるからだ。

決められない患者たち
Jerome Groopman MD (著), Pamela Hartzband MD (著), 堀内 志奈 (翻訳)
医学書院 (2013/4/5)
P112


決められない患者たち

決められない患者たち

  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2013/04/05
  • メディア: 単行本

 


DSC_2131 (Small).JPG美瑛

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百姓 [言葉]

 古代においては、「百姓」と書いて「おおみたから」あるいは「たみ」と訓がつけられていました。逆に言えば、その訓にあてはまる言葉として「百姓」が用いられたのです。~中略~ つまり、「官人」「郡司」は官職・位階を持っている人ですが、それと併記して官職・位階を持っていない普通の人を指す言葉として「百姓」が用いられているのです。
その他、「郡司・百姓・不善輩」という面白い用例もあります。 「不善輩」とは、殺人や強盗を行ったり、博奕・双六に興じている人たちを指す言葉ですが、官職を持たないだけでなく、そういった「遊手浮食の徒」ともいわれたような人たちとは違う、普通の人々が「百姓」だったのです。
 そもそも「百姓」の「百」には「非常に多くの」「あらゆる」という意味があります。また、「姓」は姓氏、われわれの名字とは多少違いますが、血縁集団の名前ということになります。
そして、姓には職能が結びついていることもあるのです。従って、字義通りにとらえれば「百姓」は「あらゆる姓を持つ人々」あるいは「あらゆる職業の人々」が本来の意味であり、一般の普通の人々を指す言葉なのです。そこには先ほども述べたように、「農民」の意味はまったく含まれていません。

歴史を考えるヒント
網野 善彦(著)
新潮社 (2001/01)
P68

歴史を考えるヒント (新潮文庫)

歴史を考えるヒント (新潮文庫)

  • 作者: 網野 善彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/08/27
  • メディア: 文庫

 

DSC_4566 (Small).JPG求菩提山

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タグ:網野 善彦
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医学 [学問]

 もし、人の命を救う合理的な技術だけを議論するんだったら、これは僕は学問ではないし、ましてや科学ではないと思いますね。
単に技術屋さんですよね。そういう職種を医師と呼ぶのであれば、もはや大学で育てる必要はないですね。
運転免許証の教習所と同じでいいですよね。
医学というのはそうじゃないと思うんです。

太田さん流に言うとそんなことを一生懸命議論しても答えがないじゃないかというかもしれないけれども、人にとって人の命っていうのはどういうもので、われわれがそれをどうとらえていかなければいけないかということを真剣に考えている場面が、僕は医学だと信じます。
遠藤秀紀

NHK「爆笑問題のニッポンの教養」制作班 (著), 主婦と生活社ライフ・プラス編集部 (編集)
名門大学の「教養」 東京大学・慶應義塾大学・京都大学・早稲田大学・東京藝術大学 (NHK爆問学問)
主婦と生活社 (2011/1/7)
P113

 

  -c1f70.jpg地蔵埼4
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大事を成す [人生]

大事を成すは、大義と細謀と、兼ね行はれざれば遂ぐること能(あた)はず。
(「続資治通鑑網目講説」)

山田方谷のことば―素読用
山田方谷に学ぶ会 (編集)
登龍館 (2007/07)
P39


山田方谷のことば (サムライスピリット)

山田方谷のことば (サムライスピリット)

  • 出版社/メーカー: 登龍館
  • 発売日: 2007/07/09
  • メディア: 単行本

 




興福寺 (8).JPG興福寺


タグ:山田方谷
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 [雑学]

松の翠(みどり)は大和絵や桃山の障壁画の画題だっただけでなく、「古今」「新古今」で定着した日本の名勝には、かならずといっていいほど松がある。日本三景といわれる天ノ橋立、松島、厳島も、松がなければ成立しない。
 私は戦時中、中国の東北地方にいたが、敗戦の前に朝鮮半島を南下して釜山まできたとき、いままでの大陸風の淡いみどりが、この半島の南端の海岸町で急に濃くなったことに驚いた。
気づいてみると、釜山の西郊に赤松の林があり、この色彩が、溜め息が出るほどに佳かった。
佳いというのは美的な意味でなく、理屈もなにもなしに、松でおおわれた故郷がもう一衣帯水のむこうに横たわっている、という感動だった。
室町期の倭寇どもも、東シナ海をもどってきて、はるか沖合に根拠地の松浦半島の松がほのかに見えはじめたとき、おそらくこういう感動をもったのではないか。
われわれの故郷についてのイメージの底には、かならず松が作る景色があるように思える。

街道をゆく (7)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1979/01)
P174

街道をゆく〈7〉大和・壷坂みちほか (1979年)

街道をゆく〈7〉大和・壷坂みちほか (1979年)

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: -

DSC_0103m (Small).JPG

天ノ橋立

 

 

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考古学者たちはサインを出していた [社会]


 いま思えば、考古学者たちは震災前からサインを出していた。仙台平野に沓形(くつかた)遺跡という約二〇〇〇年前の弥生時代の遺跡がある。
震災の五年前から本格的に発掘され、当時は二キロ(現在は四キロ)内陸のこの遺跡から津波の砂の層が発見されていた。砂は分厚いところで五センチを超えていた。
集落は津波で徹底的に破壊され、再び人が住みはじめたのは津波から四〇〇年後という衝撃的な事実もわかっていた。
 つまり、仙台平野は約二〇〇〇年前、約一一〇〇年前(貞観津波)、四〇〇年前(慶長三陸津波)、そして二〇一一年(東日本大震災の津波)と、はっきりしているだけで、二〇〇〇年間に四回もの大津波に襲われている。
いずれも内陸四キロ前後まで浸水。五〇〇年前後の周期性をもったきわめて反復性の高い自然現象であったことがわかる。


天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2014/11/21)
P191



天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 新書



 





DSC_1627 (Small).JPG普明山高野寺


タグ:磯田 道史
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悩みの大きさが迫力を生む [哲学]

 表現のおもしろさや迫力は、いつもそうせざるを得ない人によって創られるのであって、 さらに言うなら、そうした「悩み」のない人に迫力のある芸術は創れない。
南 伸坊

心理療法個人授業
河合 隼雄 (著), 南 伸坊 (著)
新潮社 (2004/08)
P160

心理療法個人授業(新潮文庫)

心理療法個人授業(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/08/02
  • メディア: Kindle版

 

DSC_6361 (Small).JPG大迫石仏


タグ:南 伸坊
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薬師如来の本願 [宗教]

 飛鳥(あすか)白鳳天平のわが仏教の黎明(れいめい)期には薬師信仰は極めて盛んであった。いな薬師信仰はどんな時代でも病のある限りは不滅であろう。すでに法隆寺の飛鳥の薬師如来像、また薬師寺の白鳳の薬師如来像について述べたが、上古より盛んなこの信仰の本質について考えてみたい。~中略~
 薬師とは詳しくいえば薬師瑠璃(るり)光如来と云い、東方浄瑠璃世界の教主である。このみ仏は自ら十二の大願を起こしたことが薬師如来本願経に語られてある。 ~中略~
これによって明らかなように、我々の謂(い)う病気恢復は十二願の一部にすぎず、他にも諸々の現実的救済を願としているが、畢竟(ひっきょう)本願のめざすところは、第四願(住人注;一切衆生をして大乗に安立せしむるの願。))に要約されていると云ってよかろう。
また病を必ずしも肉体的に限定せず、心の迷いや精神の病をふくめてすべてを根源から安穏ならしめんと望んでいるのである。 ~中略~
 かかる薬師信仰本来の綜合(そうごう)的面目は、法隆寺の薬師如来、薬師寺金堂の本尊、あるいは香薬師を拝して充分偲(しの)ばるるであろう。利益の一面のみを仏体にあらわに表現するのは後世の堕落ではなかろうか。これがさらに転落すれば邪教的迷信ともなろう。
推古(すいこ)天皇ならびに上宮太子、あるいは天武(てんむ)天皇、聖武天皇、光明皇后の信仰を拝しても明らかなように、決して御一身のみの利益と平安をめざされたものでなく、すべては国民の和と救いのために捧(ささ)げられたところであった。わが大乗の教(おしえ)をはじめて具現されたのは天皇にあらせあれた。天皇信仰という独自のものがわが史上には存在していたのである。
 とくに上宮太子が病者貧民の身上を思うて設けた四天王寺四個院のごとき、また光明皇后の悲田施薬院乃至(ないし)施浴の風呂の如(ごと)き、すべて薬師如来の本願を思わする非心の然らしめたところであった。かかる信仰あってはじめて無双の仏体も造顕されたことは既に述べたとおりである。
―昭和十七年冬―

大和古寺風物誌
亀井 勝一郎 (著)
新潮社; 改版 (1953/4/7)
P224

大和古寺風物誌 (新潮文庫)

大和古寺風物誌 (新潮文庫)

  • 作者: 勝一郎, 亀井
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/01/27
  • メディア: 文庫

大和古寺風物誌 (1953年) (新潮文庫〈第516〉)

大和古寺風物誌 (1953年) (新潮文庫〈第516〉)

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  • メディア: 文庫


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各人の時間 [哲学]

春日 「病んだ家族、散乱した室内」(医学書院)では、「家の中では、外とは違う特殊な時間が流れている」ということを書きました。
訪問診療っていうのは要するに、扉を開くことで、そこに外部の時間を持ち込んで、それにシンクロさせることなんだ、それが治療なんだという話を書いたんです。

内田(住人注:内田 樹)  それ、「死と身体」で僕が書いた時間の話とまったく同じ結論ですね。
ラカンが同じようなことを言っています。要するに、精神病の患者というのは時計が止まっているのであり、その時計を動かしてあげることが治療であるということを言っている。
 「死と身体」ではそこに、レヴィ=ストロース(Claude Levi=Strauss)の話を持ってきて、「時計が動くということは交換関係のなかに入っていくことだ」って書きました。
春日 どういうことですか?
内田 「交換」って、時間概念がないとできないんですよ。こちらから「あげて」、向こうから「くる」。その間にタイムラグがあってはじめて交換になる。無時間モデルでは絶対に交換はできないんです。

「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室
春日 武彦 (著)
医学書院 (2007/07))
P187

「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室

「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室

  • 作者: 春日 武彦
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2007/07/01
  • メディア: 単行本

 

DSC_3071 (Small).JPG宗像 大島


タグ:春日 武彦
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マグレ当たりにて儲けし金は、他人の金を預かつたと同じことなり [人生]

一、時間は金、忘れてはならぬ。


二、顔をよくするより金を儲けよ、金儲かり家富まば自然と顔もよくなる。


三、何処までも銭のない顔をせよ、銭のある顔をせば贅費多し、仮令( たとえ)銭なき顔をして人に笑はるゝことあるも、後日には誉められる。


四、派手にすべからず出来るだけ質素にせよ、衣服は垢の付かぬ木綿服にて充分なり。


五、身代を減らさぬ考をするには平素交際する人を選べ。


六、一銭の金も骨折って儲けよ、楽して儲けた金は落し易し。


七、無益の道具類を買ふな、買へば他人に見せたくなり、自然と自分の職業を怠り、時間を費す可し、慎まざる可からず。


八、身代を減らす者は大抵、口先はよくて尻結びの無い、先の見込の付かぬ者なり。


九、弘く人に会して多く知恵を得よ。


十、馬鹿になれば悧口、悧口になれば又た馬鹿、馬鹿になって物事を尋ね、馬鹿になって商売せよ。


十一、出来るだけ人の下風にたちで、頭を下げる者は必ず勝を占む。


十二、人と商売上の話をなすも己れの見込みとする、所謂「キゝメ」一つは決して人に洩らす可からず。


十三、二年先の見留を付くべし、マグレ当たりにて儲けし金は、他人の金を預かつたと同じことなり。


十四、商取引をなすには先方の掛引を見分けるが肝腎なり、之が出来ぬものは商売をするな。


十五、身代を大きくしたいならば、丁稚下女の為る事まで気を付けて差図せよ、小さい事に目を付けぬ者は到底大事は出来ぬ。

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前田利家 [雑学]

戦国末期、北陸路が織田勢力のものになったとき、信長は柴田勝家を北ノ庄城(福井市)に置き、北陸道の触頭(ふれがしら)とした。
 いまの武生の武生市役所のあたりにあったらしい府中の城主には前田利家が命ぜられた。命令系統としては柴田勝家の指図をうけることになる。
 柴田勝家が賤ヶ岳で秀吉と決戦したとき、利家は系列上やむなく勝家に属して出陣したが、古くからの友人である秀吉と戦う気がせず、決戦に参加せずに府中にひきあげたということになっている。
 前田利家というひとはよほど人柄のいい人物だったらしく、そういう行動をとっていながら勝家に恨まれなかった。
勝家が賤ヶ岳で敗北して北ノ庄へ退却すべく北行する途中、この府中城に立ち寄って、湯漬けを乞ういているのである。
利家はそれをこの敗将のためにふるまった。敗将はさらに塩引の鮭を所望した。
利家はそれをふるまい、二人はよほど長時間昔ばなしをした。勝家が去ったあと、ほどなく追跡中の秀吉がこの府中城に立ち寄って、やはり湯漬を利家に所望している。

街道をゆく (4)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1978/11)
P256

街道をゆく〈4〉洛北諸道ほか (1978年)

街道をゆく〈4〉洛北諸道ほか (1978年)

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平等院 (21).JPG平等院

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「他力」こそ「自力」の母である。 [宗教]

どれほど深い信仰を獲得したとしても、人間としての悩みや恐れは消えないでしょう。
むしろ大きな悲しみや、生きる痛みは、信仰に目覚めたことで、いや増すことのほうが多いと思います。
<他力>という考え方もそうです。完全に<自力>を捨てることなど、不可能です。
しかし、<他力>こそ<自力>の母であると感ずるとき、生きる不安や、悩みや、恐怖に最後のところでなんとか耐えて踏みとどまることができそうな気がするのです。

五木 寛之 (著)
他力
幻冬舎 (2005/09)
P324

他力 (幻冬舎文庫)

他力 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 五木 寛之
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2005/09/01
  • メディア: 文庫


1927302西本願寺

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泣きたい時には泣け [人生]

後悔、悲しみ、悔しさ、喜び、憤慨、さまざまなときに人は涙をながす。
感情に高まりは無理におさえない方がよい。
素直に泣けば、次のステップが開けてくる。

丸山 敏秋 (著), 倫理研究所
幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝
近代出版社 (2001/11)
P78

幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝

幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝

  • 出版社/メーカー: 近代出版社
  • 発売日: 2001/11/01
  • メディア: 単行本

 

-075bb.jpg鵜戸神宮

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自然と向き合う [社会]

 自然の恐ろしさ、そして厳しさを一番よく知っているのは自然を相手に生きてきた漁師や農家でもある。
それゆえに傷つき落ち込みもするのかもしれない。しかし同時に自然の持つ大きな可能性や魅力を知っているのも農家であり、漁師である。

漁業の再生と食の未来
  結城登美雄(民俗研究家)

世界 2011年 05月号
岩波書店; 月刊版 (2011/4/8)
P242

世界 2011年 05月号 [雑誌]

世界 2011年 05月号 [雑誌]

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 雑誌

  -28b0b.jpg平尾台1

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危険なバブルの見分け方 [ものの見方、考え方]

 では、危険なバブルなのか、それとも経済の自然な発展なのか、判断する基準はあるのだろうか。
これは非常に難しい。しいて言えば、次の3つの点に注目すべきだろう。
①経済見通しの過度な自信
②信用取引の拡大
③投資初心者の新規参入
~中略~
 自分の周りに株式投資を始めたという人が増えたら、それは十分に危険なバブルのサインと言えるだろう。


世の中の罠を見抜く数学
柳谷晃 (著) 
セブン&アイ出版 (2013/3/1)
P150


世の中の罠を見抜く数学

世の中の罠を見抜く数学

  • 作者: 柳谷晃
  • 出版社/メーカー: セブン&アイ出版
  • 発売日: 2018/10/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 







DSC_0570 (Small).JPG斑鳩寺 (兵庫県太子町)


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教育の受益者は本人ではなく、社会全体 [教育]

かの国(住人注;アメリカ)は基本的に「自助の精神」を重んじる国です。アメリカ社会における理想的な人格とは「self-made mann」です。
他人に依存せず、誰からも支援されず、独力で地位も、財産も、威信もすべて築き上げた人間を敬する伝統があるわけです。「開拓者の国」ですから。  ですから、この国では「弱者の支援」というアイディアがほんとうの意味で根づいたことはないのかも知れません。
例えば、アメリカ教育史上の大問題は、公教育の導入に多くの市民が反対したことです。

公教育の理念自体はコンドルやルソーなど、一八世紀のフランスでできたものですが、行政的に公教育が導入されたのはアメリカが最初です。
アメリカは公教育の先進国なのです。ただ、この公教育制度に対して、つまり「税金を使ってすべての子どもたちに初等中等教育を施す」という仕組みに猛然と反対した市民たちがいた。
 彼らは教育の受益者は「教育を受ける本人」であると考えた。子どもたちが学校に通い、そこでしかるべき教育を受けて、有用な知識や情報や技術を身につけて、資格や免許をとり、社会的上昇を果たすとするならば、教育の受益者は子どもたち自身だということになる。
だとすれば「受益者負担」の原則を適用して、教育経費は受益者たる子どもたち自身が、あるいはその扶養者である親が負担すべきではないのか、そこにわれわれの納めた税金を投じるのはアンフェアである、そう言って反対する人たちが出現してきた。これは反論のむずかしいロジックでした。彼らはたしかに刻苦勉励して税金が払えるような身の上になった。だから、自分の子どもたちにそれなりの教育を与えることができるようになった。
けれども、自分ほども努力していないし、才能もない貧乏人たちの子弟のためになぜ教育機会を提供しなければならないのか、その理由がわからない。彼らが教育を受けて、それなりの社会的能力を獲得すれば、自分の子どもたちとポストをめぐって競合することにもなりかねない。 なぜ、自分の懐を痛めてまで他人の子どもに自分の子どもに自分の子どもを蹴落とすチャンスを提供しなければならないのか。
教育の受益者は教育を受ける本人である。それなら、教育を受けたいものはまず働いて、金を貯めて、それを自己投資すべきである。~中略~
 それでも公教育が実現したのは、公教育論者たちが納税者たちを「短期的には損だが、長期的にはお得」という利益誘導のロジックを用いて説得したからです。~中略~ どう転んでも、こどもたちに教育を施したほうが長期的に見れば「金になる」んです。そういうふうに説得した。
 でも、僕は今でも、こういう経済合理性のロジックで公教育の導入に成功したという歴史的事実そのものがアメリカの根本にある種の「ねじれ」を呼び込んだのではないかと思います。
「学校教育」というのは、それで誰かが「金を儲ける」ことができるから有用であるというような理屈で基礎づけてはならないものだからです。
 学校教育の受益者は教育を受ける子どもたちではありません。誤解の多いことなので、繰り返し強調しますが、学校教育の受益者は本人ではなく、社会全体なのです。
われわれが学校教育を行う理由は、一言で言えば、われわれ共同体を維持するためです。集団として生き残るためです。次代の共同体を支えることのできる成熟した市民を育成するためです。自余のことは副次的なことにすぎません。

最終講義 生き延びるための七講
内田 樹 (著)
文藝春秋 (2015/6/10)
P316

最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)

最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)

  • 作者: 内田 樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/07/03
  • メディア: Kindle版

TS3E0887 (Small).JPG英彦山


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自己決定権と自己責任 [日本(人)]

養老 医者の場合は、告知した方が楽に決まってるんですよ、当然。医療訴訟が起こりにくくなるし、いわゆるインフォームドコンセントですから治療がやりやすい。
あなたはガンですからこうこうこういうことをするんですよって言えるでしょう。それ、以前はどうやっていたかっていうと、有名な話があるんです。

旦那さんがガンで、告知はしていない。それでその患者さんと奥さんを前にして、放射線科の医者が、ガンだって言えねえから、しょうがない、苦し紛れに適当な理由つけて、放射線の治療をしますとインフォームしたわけです。
そしたら、奥さんのほうが「先生、放射線治療をするってことは、主人は本当はガンじゃないですか」って。
で、患者である旦那さんのほうが、「お前、先生に向かってそんなこと言うもんじゃない」。

これが古き良き日本だったんですよ。それが通じない世界になったでしょう。通じない振りをするというか。
これ、非常に難しい問題になっていますよ。先生にお任せしますという態度には裏表ありまして、すごんでる場合も有り得るわけです。
うまくいかなかったらただじゃおかねえぞっていう。極端に言えばね。

養老 孟司 (著) 玄侑 宗久 (著)
脳と魂
筑摩書房 (2007/05)
P185

脳と魂 (ちくま文庫)

脳と魂 (ちくま文庫)

  • 作者: 養老 孟司
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/05
  • メディア: 文庫


2181865新薬師寺1

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震災と浄土教 [宗教]

宮崎 これは何の実証的な裏付けもない与太話ですが、この震災を経験して、浄土教の成立機序を理解できたような気がしました。まったく文献的根拠はありませんから、理屈の上で自分が納得できた、というだけのお話ですが・・・・。
 本来仏教は自力聖道門で、実戦的にも理論的にも完結していたと思います。善因楽果、悪因苦果、個々の行業とそれに応じて各々が受ける果報の因果律。そして、それを超越する悟りというシンプルな体系から始まり、少しずつ複雑化、緻密化していった。
 ところが因果線をいかに複数化し、それでも足らずに因果的縁起を相依相待の縁起に展開してみても、なお説明できない重大な問題が残った。
 それが大災害や戦乱、飢餓や伝染病などによる大量死です。その死者のなかには、善人もいれば、凡夫もいれば、悪人もいたに違いない。侍もおれば遊女もおったに相違ない。僧侶も貴人も百姓も役人も盗賊もいたろう。それなのに皆等しく、無差別に、文字通り「非業の死」を遂げてしまう。
この場面では仏教の伝統的な業報観は成り立ちません。

 かかる事態に対処すべく、各私の行業の如何を問わず、阿弥陀如来の本願に乗じて等しく救われるという信仰が生まれ、同時に「万人が悪人」という思想が生まれた。そうでなくては天災、戦、飢餓、疫病などによる厖大な死者を一挙に救済することができなかったからです。

林田(住人注;林田康順) そうかもしれないですね。ちょうど法然上人がメジャーデビューを果たす大原問答の前年に、鴨長明が「方丈記」の中でおおきく取り上げた元歴大地震(元歴二<一一八五>年七月九日)が起こり甚大な被害が京周辺を襲います。

宮崎 浄土信仰が生まれ、拡がり、根付いた土地や時代には、おそらく大量死を伴う惨事が相次いでいたのではないかと思います。そういう意味では、浄土教は、従来の伝統的な仏教の限界をブレーク・スルーした、と言えると思うのです。

宮崎哲弥 仏教教理問答
宮崎哲弥 (著)
サンガ (2011/12/22)
P243

宮崎哲弥 仏教教理問答

宮崎哲弥 仏教教理問答

  • 作者: 宮崎哲弥
  • 出版社/メーカー: サンガ
  • 発売日: 2011/12/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


IMG_0029 (Small).JPG大谷山荘

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震災に際し、重要な視点 [社会]

第一に、一人ひとりが能動的に考え、行動すること。未曾有の事態に、マニュアルはない。
一人ひとりが、なにが大切か、なにができるか、自らの頭で考え、行動することが大切だと思う。

第二に、日々の、日常の生活を大切にすることである。
~中略~

最後に、最も重要なのは、共感だと思う。現場から私がメールを送り続けた、経験豊かな先生からは「なにもできませんが、すこしだけでも、共感を通して重荷を背負うことができました」というメールをもらった。
そしてその気持ちは、被災者の方々にも伝わるはずだと信じている。

医療支援はどう始まったか──岩手県からの報告
  山本太郎 (長崎大学熱帯医学研究所)

世界 2011年 05月号

岩波書店; 月刊版 (2011/4/8)
P223

世界 2011年 05月号 [雑誌]

世界 2011年 05月号 [雑誌]

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 雑誌

 

-e1d20.jpg足立美術館


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豊かさ [社会]

友人たちに冗談で言ったことはある。-大震災でもあればオール電化生活は破綻する。だから半分は昔ながらの生活スタイルを維持しておいた方がいい―。

~中略~
 翌朝、水道は使い物にならなかった。車に大鍋、やかん、ポリ容器など、ありったけのものを積んで出発した。

~中略~
雑木林のふもとに一軒家が見えた。煙突から白い煙が立ちのぼっている。薪ストーブの煙だ。一軒家の前に、樹齢千年と言われれば思わず信じ込んでしまいそうな桂の巨木がそびえ立っている。
秋には燃えるような黄金色の葉群があたりを圧倒する。その根元から清水が湧き出ているのだ。
 一軒家の中川さん宅の薪小屋に積まれている薪の量は半端ではない。働き者の家だ。

戸口を開け、大声で、「神様の水をもらいにきた」と叫ぶ。すると、中川のおばさんが居間からふくよかな顔をみせた。
「 久しぶりだこと。山が揺れたから、少しは砂が混じっているかもしれねえよ」

幸ひ思ひ出立申すべし
  簾内敬司 (作家)

世界 2011年 05月号

岩波書店; 月刊版 (2011/4/8)
P232

世界 2011年 05月号 [雑誌]

世界 2011年 05月号 [雑誌]

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  • 発売日: 2011/04/08
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地震は政治も動かす [雑学]


 地震は大地だけでなく政治も動かす。教科書にはない真実を書いておく。豊臣政権の崩壊は、実は伏見地震が引き金になっている。自身のせいだけではないが、地震後のかじ取りのまずさで豊臣家は滅亡した。
 地震時、豊臣政権下の大名たちは朝鮮出兵で疲れ、困窮して、不満をつのらせていた。このままでは甥のかんぱく秀次に政治の求心力が移る。秀吉と三成はそれを警戒した。
先手を打って、秀次とその妻子側近をまるごと処刑。それで家族を殺された大名が続出。多くの大名たちが朝鮮出兵の不満とあいまって、秀吉・三成に怨みの目を向けた。
 そこへ伏見地震がきた。ところが、秀吉は地震で崩れた自分の居城=伏見城をもっと豪華に再建せよ、同時に朝鮮に再度攻め込めと命じた。
 豊臣から徳川へ心が移りはじめたきっかけは地震であった。


天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2014/11/21)
P31



天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 新書



 



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現代版流言飛語のシステム [社会]

 一九二三年九月一日、相模湾を震源とするM七・九の地震に襲われ東京は灰燼と化した。関東大震災である。
~中略~
 NHKのラジオ放送が始まったのは一九二五年であり、国民の情報源は専ら新聞であった。多少誇張した噂話が「朝鮮人と社会主義者の諜略と暴動」という流言飛語となって増幅され、被災者の恐怖心を煽り、とんでもない惨劇を生んだ。
~中略~

芥川龍之介は「中央公論」一九二三年一〇月号に「大震雑記」と題して寄稿し次のように述べた。
「僕の所見によれば、善良なる市民というものは、ボルシェヴィッキと○○○(伏字で挑戦人の意)との陰謀の存在を信ずるものである。もし万一信ぜられぬ場合は少なくとも信じているらしい顔つきを装わねばならぬものである」

彼らしい歪曲な言い回しだが、異様な時代の空気を伝えている。

 今日メディア環境は激変し、活字媒体に加え電波メディア、さらに際立った特色として一億台を超すまでに普及した携帯電話とツイッターなど、ネットワーク情報技術の進化がある。
安否確認から事態の展望まで驚くほどの情報がネットを駆け巡る。しかも国境を越えて。
これが現代版流言飛語のシステムともなる。

脳力のレッスン 109
緊急編 東日本大震災の衝撃を受け止めて──近代主義者の覚悟
  寺島実郎

世界 2011年 05月号

岩波書店; 月刊版 (2011/4/8)
P78

世界 2011年 05月号 [雑誌]

世界 2011年 05月号 [雑誌]

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 雑誌

 

  -222a9.jpg龍蔵寺12

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文明と災害 [ものの見方、考え方]

寺田寅彦は、「文明が進めば進むほど天然の猛威による災害が、その激烈の度を増す」
(「天災と国防」昭和九年一一月、「寺田寅彦全集第7巻」所収、岩波書店)
と書いている。文明の進展とともに世の中が一様化され集約化されるから、天災による一つの部分の破綻が全体に対して致命的となるということを指摘したのだ。
この七七年前の言葉が不幸にも現代日本において的中してしまった。

 この間、さらに科学・技術が発展し、高層建築、巨大ダム、高速道路、高速列車など、寺田寅彦の時代とは様変わりし、天災に対してより脆弱な社会構造としてきた。
科学・技術にによって自然が克服できると錯覚し、科学者・技術者はせっせと自然改造に勤しみ、人々もそれを歓迎して欲望を膨らませていったためだ。
同文章で、寺田が「文明が進むに従って人間は次第に自然を征服しようとする野心を生じた」と書いている通りである。
無限の繁栄が続くと誤認して。

専門家の社会的責任
  池内 了 (名古屋大学名誉教授)

世界 2011年 05月号

岩波書店; 月刊版 (2011/4/8)
P54

 

世界 2011年 05月号 [雑誌]

世界 2011年 05月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/04/08
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-4693d.jpg三徳山三仏寺

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